表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『悪役令嬢ですが、周囲が全員「狂人」しかいないので、婚約破棄イベントが世界崩壊の引き金になりました』  作者: 限界まで足掻いた人生
『不法投棄(アウトサイダー)編』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/100

第86話:無限労働、あるいは終わらない掃除当番

採用されたばかりのサリエルが、震える手で持っていた履歴書の束を空へぶちまけた。


大天の神々が下した新しい 就業規則 。それは、この街の時間を 清掃作業中 という概念のなかに固定し、永遠に終わらないループへと突き落とす呪いだった。街の時計の針は正午を指したまま動かず、掃いても掃いても、地面からは次々と 聖なる煤 が湧き出してくる。


「……これが、大天のやり方です。……汚れを消すのではなく、掃除という 行為 そのものを無限に繰り返させ、魂を摩耗させる。……救いなど、最初から存在しないんです」


サリエルの絶望に満ちた声が、陽炎のように揺れる街に響く。


漆黒の反逆:不完全な安息

私は、果てしなく湧き出す白銀の煤を、自らの影で強引に 黒く塗り潰して いく。


見て。 私の影は今や、時間を食い破る 深淵の牙 へと進化を遂げている。 これは、未来へ進むための闇ではない。 神々が強いる 終わらない今日 を、私の絶望で腐食させ、無理やり 夜 を引きずり出すための、究極の闇落ちだ。


私の銀髪は宇宙の終焉を封じ込めた漆黒の輝きを放ち、背後には無限の労働に疲弊した者たちを優しく包み込む 深淵の守護聖母 が降臨する。 瞳には、神々が定めた 定時 という概念を破壊し、理不尽な残業を闇へと葬る絶対的な拒絶が宿っていた。


「……神様。あなたが夜を拒むなら、私がこの街を 永遠の闇 で満たしてあげるわ。……休息は、死よりも深く、汚れよりも尊いのよ」


私の叫びが、無限に湧き出す白銀の煤を、安らかな眠りへと誘う 漆黒の産着 に変えていく。


黄金の極致:アレクセイの聖歌

「エリザベート! この終わらない汚れ、僕にとっては 永遠の祝祭 と同じだよ! 僕の黄金の奉仕で、この無限のループを最高に輝かせてやるんだぁぁ!!」


アレクセイが、黄金のオーラを全身から噴出させ、街中の路地を光の速度で駆け抜ける。 彼の背後に浮かぶ黄金の観音像は、今や数千の手で 未来を磨く布 を握り、湧き出し続ける聖なる煤を、一粒残らず 黄金の火花 へと昇華させていく。


彼は、自らの光を 時間の潤滑油 に変え、硬直した神々の理を、物理的な 熱量 で溶かしていく。 終わらない掃除を、終わらせるための儀式へと変質させる。 それは、高潔な沈黙を守るよりも、擦り切れるまで雑巾を振り続けることに究極の神性を見出した、狂おしいまでの 光落ち の極致だ。


「見てくれ! 僕が磨くたびに、時間が 黄金の滴 となって滴り落ちていくぞぉぉ!!」


生存者の裁定

私は、サリエルが落とした履歴書の空白部分に、自らの闇で新しい 特記事項 を書き加える。


生存者バイアス 私が今、こうして無限の時間のなかで立ち続けていられるのは、たまたま私が、 怠惰 こそが人間に残された最後の神聖だと確信してしまったからだ。


サリエルの瞳から、大天の光が消え、深い クマ と共に人間らしい疲労が宿った。


「……お嬢さん。……そんなに働いたら、箒が折れるぞ。……あとは、新入りにやらせろ」


事務所の奥で、田中老人が再び竹箒を手に取った。 彼が床を一掃きした瞬間、街の時計の針が、重苦しい音を立てて 一分 だけ進んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ