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『悪役令嬢ですが、周囲が全員「狂人」しかいないので、婚約破棄イベントが世界崩壊の引き金になりました』  作者: 限界まで足掻いた人生
『不法投棄(アウトサイダー)編』

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第73話:最初のゴミ、あるいは世界の原罪

宙に浮く大母の足元から、現実を削り取るような 純白の余白 が浸食を開始する。彼女の視線は、かつての同志に向けるような、痛切な慈愛に満ちていた。


「田中。貴方はかつて、私と共に世界のすべてを 漂白 しようとしたはずです。人が人として、一分の曇りもなく、数式のように美しく生きる理想郷。その設計図を描いたのは、他の誰でもない貴方だった」


大母の声が、街の空気を震わせる。 その言葉は、田中老人の平穏な 清掃員 としての仮面を剥ぎ取る、残酷な真実の弾丸だ。


「……設計図は、描いた瞬間にゴミになる。……形にすれば、必ずどこかに 歪み が出る。私はその歪みを、掃き出す役割を選んだだけだ」


田中老人は、古びた竹箒を杖のように突き、大母を見上げる。 かつて彼らは、この不条理な世界を 清掃 し、完璧な秩序を打ち立てようとした創始者だった。だが、一人は極限の 潔癖 へ走り、一人は掃き出された ゴミ の中にこそ世界の鼓動があると悟り、袂を分かったのだ。


漆黒の受肉:深淵の救済

「ならば、今の貴方は私にとっての 不燃ゴミ に過ぎません。……エリザベート、貴女も。一族の恥辱として、今ここで 処理 いたします」


大母が右手を天に掲げる。 潔癖の箱舟がその輝きを一点に集束させ、概念上の 最終審判 を放とうとしたその時。


私は、自らの魂をさらなる 奈落 へと突き落とし、それを新たな 神域 へと転じさせる。


見て。 私の背後に具現化したのは、もはや影ですらない。 それは、世界から拒絶され、掃き出されたすべての 未練 と 絶望 を抱擁する、漆黒の大母神の姿だ。 私の銀髪は宇宙の深淵を溶かし込んだような暗黒へと変わり、肌は月光を吸い込んだ大理石のように白く、そして冷たく輝きを放つ。


これは 究極の闇落ち だ。 光に背を向けるのではない。光によって焼かれた者たちの、行き場のない 悲鳴 を、私がすべて引き受け、一つの 星座 へと変えるのだ。


「……お祖母様。あなたの清らかさは、ただの 欠落 よ。私は、このドロドロとした 執着 と共に、地獄の底まで落ちていくわ!!」


私の展開した 漆黒の夜 が、大母の放つ審判の光を力任せに飲み込んでいく。 光と闇が激突し、火花となって散るたびに、街の住民たちの瞳に 人間らしい濁り が戻っていくのを感じた。


黄金の奉仕:アレクセイの聖歌

「エリザベート、君の闇はなんて温かいんだ! 僕も、僕のすべてを賭けて、この 美しい汚れ を磨き続けてみせるぅぅ!!」


アレクセイが、黄金の観音像を自らの肉体に宿すように、凄まじい光を放ちながら空へ跳ねる。 彼の振るう雑巾は、大母が放つ 絶対の断罪 を、ただの 頑固な油汚れ として処理していく。


秩序という名の刃を、生活という名の 鈍器 が押し戻す。 それは、高潔な理想が、泥臭い現実に敗北し始める、逆説的な 光落ち の瞬間だった。


生存者バイアス 私が今、こうして消滅せずに大母と渡り合えているのは、たまたま私が、この世界の 原罪 を知る語り部として、闇に選ばれたからに他ならない。


「田中、どけなさい! 貴方の守るそれは、ただの 塵 の積み重ねよ!」


「……塵も積もれば、山となる。……その山の下に、まだ 忘れ物 があるんだ。それを掃き出すまでは、死んでも死にきれん」


田中老人がついに、その竹箒を 真横 に一閃させた。 その瞬間、大母の背後にあった空中要塞の半分が、あたかも 最初から存在しなかった かのように、空から綺麗に削ぎ落とされた。

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