表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『悪役令嬢ですが、周囲が全員「狂人」しかいないので、婚約破棄イベントが世界崩壊の引き金になりました』  作者: 限界まで足掻いた人生
『聖域粛清(クリンナップ)編』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/100

第53話:地底の検閲、あるいは絶対服従のフィルター

地下へ続く螺旋階段は、驚くほど「無機質」に磨き上げられていた。 かつては湿気とカビに支配されていたはずの廃棄物処理場への道。しかし今、そこにあるのは、皇帝の意志を忖度した三影による、狂気じみた過剰清掃の痕跡。


「……ヒカル、足音を殺しなさい。ここから先は、彼らが『呼吸音さえも不純物』として定義している領域よ」


私は、膝をガクガクと震わせながら階段のタイルに頬を寄せ、「あの方のワックスの塗り込みが足りない……」とブツブツ呟くアレクセイを引きずりながら、闇の奥を見据えた。


十六パーセント。


階段の最下層、旧・廃棄物処理場の巨大な鉄扉の前に、その男は立っていた。 無代 零三郎むしろ・れいざぶろう。 皇帝にプライドを折られ、王であることを辞めた男。今の彼は、感情の一切を排気し、ただ皇帝の「領土」を完璧に保つための、高性能なフィルターと化している。


「……侵入者を確認。……廃棄物管理リストとの照合を開始」


無代の声には、もはや先程までの人間らしい傲慢さすら残っていない。 十六パーセントという絶望的な出力が、すべて「皇帝の命令」を遂行するための演算に回されている。


「……エリザベート。……ヒカル。……そして、機能不全のアレクセイ。……君たちは、地上の清浄を乱す『未分別のゴミ』だ」


「……無代。あなた、あの皇帝にそこまで魂を売ったの? 十六パーセントもの力がありながら、ただの門番に成り下がるなんて!」


私の叫びに、無代は薄く、キモいほどに歪な陰キャスマイルを浮かべた。 それは喜びではなく、ただの筋肉の痙攣に近い。


「……違うよ。……僕は、救われたんだ。……三十パーセントという圧倒的な『正解』の前に跪くことで、……掃除の悩みから解放された。……僕はもう、迷わない。……ただ、皇帝の視界に入らないように、……君たちを消すだけだ」


廃棄の排気エキゾースト・ゴースト完全濾過パーフェクト・ストレイナー


ドォォォォォォン!!


衝撃。 空気が吸い出されるのではない。 私たちの存在そのものが、「皇帝の世界に不要なエラー」として、十六パーセントの力で強制的に「濾過ろか」され始めた。


生存者バイアス 私は、必死に自分の存在を肯定し続ける。 私が今、こうして消えずにいられるのは、**「たまたま無代の濾過の網目が、私の執念よりもわずかに粗かったから」**という、針の穴を通すような生存の確率。


「……がはっ……腕が、……僕の腕がまた……!!」


ヒカルの「生乾きの腕」が、無代の清澄なフィルターに引っかかり、ボロボロと千切れていく。 三パーセント。どれほど執念を燃やそうとも、十六パーセントという絶対的な「虚無」の濾過の前では、私たちはただの「不純物」として分別され、廃棄される運命。


「……アレクセイ! 早くして! このままだと、私たち全員、皇帝の『ゴミ箱』に放り込まれるわよ!!」


「……ひっ、ひぃぃぃ! 掃除しなきゃ! 還元しなさい、僕の恐怖よ!!」


アレクセイが叫ぶ。 彼の「絶対還元」が、無代によって濾過された私たちの定義を、無理やり「汚れたまま」の状態に繋ぎ止める。


「……非効率だね。……何度消しても、……ゴミが再生するなんて」


無代の指先が、さらに深く、私たちを指し示す。 出力、上昇。十六.五パーセント。 一パーセントを上げるのが不可能な領域で、彼は自らの「自我」を削り、皇帝への忠誠心へと変換することで、その壁を強引に突破し始めた。


「……消えろ。……皇帝の庭を、……これ以上汚すな」


絶体絶命。 だが、その時。 廃棄物処理場の鉄扉の奥から、ガタガタと異質な音が響いた。


それは清掃の音ではない。 もっと根源的で、もっと不潔で、そして……圧倒的に「百パーセント」に近い、暴力的なまでの「片付け」の予感。


「……なんだ……この音は? ……僕の排気が、……押し戻される……?」


無代の顔に、初めての恐怖が走る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ