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『悪役令嬢ですが、周囲が全員「狂人」しかいないので、婚約破棄イベントが世界崩壊の引き金になりました』  作者: 限界まで足掻いた人生
『聖域粛清(クリンナップ)編』

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第42話:再定義される粛清、あるいは不戦の誓約

皇帝が去った後の廊下には、真空のような静寂だけが取り残されていた。


気絶した芥を担ぎ、灰屋と無代はしばらくの間、微動だにせずその場に立ち尽くしていたわ。十パーセントという、凡人には一生かかっても辿り着けない「神域」を軽々と踏み越えた彼らのプライドは、皇帝のたった三歩の足音によって粉々に粉砕された。


「……あいつとは、二度と戦わない。……絶対にだ」


無代が、絞り出すような声で呟いた。その瞳には、敗北感を超えた「畏怖」という名の絶対的な服従心が刻まれている。十六パーセントの彼ですら、皇帝の三十パーセントという深淵を前にすれば、ただの羽虫に過ぎない。


だが、彼らの瞳から「色」が消えたわけではなかった。


「……僕たちは、この学園の自浄作用として生み出された。……皇帝が『法』なら、僕たちはその法を執行する『刃』であるべきだ」


目覚めた芥 蓮が、青白い顔で、しかし狂気を孕んだ笑みを浮かべて立ち上がった。


皇帝には挑まない。それはもはや、この学園における「自然の摂理」として彼らの本能に組み込まれた。だが、その矛先は、より残酷な形で「下」へと向けられる。


全クラス滅ぼし:公明正大なる「大掃除」の布告

彼らは決断した。 自分たちがこの学園というシステムに産み落とされた唯一の理由。それは、肥大化し、汚れきった学園の「全クラス」を、一滴の不純物も残さず消去クリーニングすること。


「卑怯な真似はしない。……正々堂々と、順序立てて、全クラスを『廃棄』しよう」


芥が、生徒会館の窓から校庭を見下ろして宣言した。 それは、かつての勇者ヒカルたちが夢見たような「クラス対抗戦」などという甘いものではない。 存在意義の肯定を賭けた、圧倒的な実力者による「害虫駆除」だ。


彼らの放つオーラが、再び変質していく。


芥 蓮:十三パーセント(出力安定) 灰屋 省吾:十四パーセント(殺意の研磨) 無代 零三郎:十六パーセント(事象の廃棄)


「……まずは一年一組からだ。……掃除の基本は、端から順に、だよね」


灰屋が指を鳴らすと、校庭にいたX組の生徒たちが一斉に、幾何学的な陣形を組み始めた。 彼らはもはや隠れない。 学園の全生徒に対し、「お前たちは汚れである」と公に宣告し、正面からその存在を抹消しに向かう。


生存者の展望

私は、その光景をアレクセイと共に眺めていた。 アレクセイはと言えば、皇帝が修復した廊下のタイルの「輝き」があまりにも完璧すぎたことに感動し、「あの方のモップ捌きは、もはや銀河だ……」と涙を流しながら床を舐めるように観察している。正直、見ていられないわ。


「……笑えないわね、アレクセイ。皇帝との不戦を誓ったことで、あいつらの牙はさらに鋭くなった。……目的が『玉座』から『滅菌』に変わったのよ」


六パーセントの私では、もはや彼らの進軍を止める盾にすらなれない。 学園の全クラスが、一つ、また一つと「X組」という名の巨大なシュレッダーに放り込まれていく。


ヒカルのような三パーセントの勇者も、私のような六パーセントの生存者も。 彼らにとっては、等しく「片付けるべきゴミ」でしかない。


「さて、どうしましょうか」


私は、温くなったハーブティーを飲み干した。 皇帝は動かない。あの方は、汚れが自分の部屋にまで届かない限り、この「大掃除」を黙認するつもりだ。


学園に朝日が昇る。 それは、一年一組から順に始まる、地獄のような「クリーンアップ・デイ」の幕開けだった。

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