第36話:塵芥の晩餐会、あるいは「選別」という名の蹂躙
「一年X組」という名の変異体たちは、もはや教室という器に収まる存在ではなかった。 生徒会室で「皇帝」の三割の威圧に触れ、プライドを削られた三影たちは、その鬱屈した全能感を「学園全土」というキャンバスへ叩きつけ始めた。
それは「支配」ではない。**「清掃」**だ。
「……汚れているね。世界は、僕たちが思う以上に。……だから、まずは『面』で削り取ろうか」
**芥 蓮**が、廊下の窓から学園広場を見下ろして囁く。 彼の足元では、かつて勇者と呼ばれたヒカルたちが、X組の一般生徒によって「標本」のように壁に貼り付けられていた。三パーセントの勇者など、十パーセントを超える異常個体たちの前では、乾いた泥にも劣る。
「……賛成だ。……雑多なゴミは、一箇所に集めて燃やしてしまえばいい」
**無代 零三郎**が、虚空を掴む。 彼の権能、**廃棄の排気**が拡張され、学園の換気ダクトを通じて「十五パーセント」の毒性清掃波動が校舎中に散布された。
学園対X組:生存権の剥奪
「う、うわぁぁぁッ!? 目が……皮膚が……!」
一般生徒(一パーセント)たちが、廊下で次々と崩れ落ちる。 彼らにとって、X組が放つ清澄な空気は「致死量を超えた純酸素」に等しい。汚れを許さぬ空間そのものが、汚れを抱えた生命体を拒絶し、分解していく。
「逃げなさい! 校舎の外へ!!」
エリザベートの声が響く。彼女は六パーセントの生存本能を全開にし、アレクセイと共に防衛線を構築していた。だが、目の前に立ちふさがるのは、三影に従うことを誓った「十パーセント」の志願兵たち。
「……無駄だよ、公爵令嬢。君の『生存』というバグは、この完全な秩序には不要だ」
X組の生徒が放つ「コロコロ」の重圧が、エリザベートの領域をミリ単位で削り取っていく。 六対十。この数字の差は、絶望という言葉すら生ぬるい。
X組内部抗争:玉座を狙う共喰い
しかし、この粛清の嵐の中にあって、X組の内部もまた、一枚岩ではなかった。 三影に従う者、あるいはその座を奪わんと画策する者。 「皇帝(三十パーセント)」の存在を認識した三影たちは、自らの出力を高めるために、クラスメイトたちを「燃料」として消費し始めていた。
「……十一パーセントでは足りない。……十二パーセントでも、あの男には届かない」
芥 蓮の瞳に、黒い火が灯る。 彼は、自分に従っていたはずのクラスメイト(十パーセント)の一人の首を、無造作に掴み上げた。
「……君の『清浄』、僕の糧にしてあげるよ。……感謝して。君は僕の一部として、世界の最果てを見るんだから」
掃滅の掃除。 能力の解釈が反転し、クラスメイトの存在そのものが「吸収すべき汚れ」として芥の中へと吸い込まれていく。 十一……十二……十三パーセント。 共喰いによって上昇していく異常な数値。
終末の天秤
私は、彼らの背後でその地獄絵図を観測し続けている。 三影たちの背中に宿る数値は、今や限界を超えようとしていた。
芥 蓮……十三パーセント。 灰屋 省吾……十四パーセント。 無代 零三郎……十六パーセント。
そして、彼らが進む先。 静寂に包まれた生徒会室には、変わらず「三十パーセント」の絶対者が座している。
(……足りない。それでもまだ、皇帝の半分にも満たない)
三影たちは、学園を蹂躙することで自らの「掃除」の概念を研ぎ澄まし、互いに喰らい合うことで出力を高めている。 対する学園側は、勇者ヒカルが意識を失い、エリザベートが防戦一方という、絶体絶命の窮地。
「……狂っているわ。……掃除をするために、世界を壊すなんて」
エリザベートの絞り出すような叫び。 だが、窓際の王たちは答えない。 彼らの眼にはもはや、生存者の悲鳴も、勇者の叫びも、ただの「ノイズ」としてしか映っていないのだから。




