表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『悪役令嬢ですが、周囲が全員「狂人」しかいないので、婚約破棄イベントが世界崩壊の引き金になりました』  作者: 限界まで足掻いた人生
『聖域粛清(クリンナップ)編』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/100

第35話:皇帝の聖域、あるいは絶対的序列の証明

生徒会副会長を「真空の檻」に閉じ込め、芥 蓮たちは不敵に笑っていた。 廊下に転がる「かつての権威」をゴミのように見下ろしながら、灰屋が鼻を鳴らす。


「生徒会……この程度か。会長も、結局は肥大化した自尊心だけの雑魚だろうね」


無代もそれに同調するように、無機質な視線を生徒会室の重厚な扉へ向ける。 だが、彼らに従う「塵取り」としての役割を与えられた私は、その瞬間に背筋を凍らせた。


(……違う。……逃げろ。今すぐに)


扉の奥から漏れ出す、音もない静寂。 それは田中に限りなく近い、鋭利に洗練された**「統治」**の波動。 私の本能が、心臓を直接握りつぶされたような錯覚を送り込んでくる。


扉が、静かに開いた。


そこに座っていたのは、ただ一人の少年。 生徒会長。 彼が顔を上げた瞬間、廊下の空気が物理的な質量を伴って凝縮された。 芥たち三人の余裕が、一瞬で霧散するのが分かった。彼らの肌が、生存本能によって粟立っている。


「……何か用かな。掃除が行き届きすぎて、廊下の温度が下がっているようだが」


会長の声が響く。それは命令ではない。ただの「事実」としての発言。 それだけで、十パーセントの権能を持つ三人の少年たちが、目に見えて委縮し始めた。 先ほどまでの傲慢な態度はどこへやら、彼らは猫背をさらに丸め、視線を床へと落とした。


「あ、いえ……その……。ちょっと、掃除の仕分けを……」


芥が、陰キャ特有のボソボソとした小声で、機嫌を伺うように呟いた。 無代と灰屋も、気まずそうに顔を背ける。 だが、彼らはただ怯えただけではなかった。彼らの指先が、絶望的な状況下で異能の**「解釈の拡張」**を始めていた。


「……あ、副会長の汚れ、取っておきますから。失礼します」


芥が指先を副会長に向ける。 本来、彼の能力は「不要物の排除」だ。だが、彼は「傷」や「欠損」を、人体における**「構造上の汚れ」**として再定義した。 死に体だった副会長の肉体から、ダメージという名の「不純物」が、目に見える粒子となって剥離されていく。


バシュゥゥゥ……ッ!!


一瞬。 副会長は傷が癒えるどころか、肌の艶までが新品同様、いや以前よりも「美しく」修復された状態で廊下に横たわった。 異能の粋を極めた、概念的な清掃。


「……用がないなら、帰ってくれ。ここはまだ、君たちの掃除場所ではない」


会長の冷徹な一言に、三人は「あ、はい……」「失礼します……」と、消え入りそうな声で頭を下げ、逃げるようにその場を去った。


廊下を歩く彼らの背中は、どこか痛々しかった。 「……今日は、低気圧のせいで本調子じゃなかったからな」 「そうそう。……あの部屋の照明、僕たちの目に優しくなかったし。……本気出す場所じゃない」 「……胃が痛かったんだ。……次は、もっと効率よく片付ける」


並べられる言い訳。自分たちに言い聞かせるような、虚勢の残響。 私は彼らの後ろを歩きながら、誰にも聞こえない声で、ぼそりと呟いた。


「……この人たちが『王』なら……あの方は『皇帝』だ……」


私の眼には、見えていた。 田中の「百」という頂を基準とした際、今、目の前を歩く三人の出力。


芥 蓮……十一パーセント。 灰屋 省吾……十二パーセント。 無代 零三郎……十五パーセント。


彼らは確かに、昨日よりも成長し、十パーセントの壁を越えている。 だが。


私は振り返り、閉ざされた生徒会室の扉を見つめる。 私の「生存者」としての直感、そして分析の瞳が、その奥に潜む怪物の数値を叩き出した。


(……三十パーセント)


絶望的なまでの質の差。 三人が束になっても、その半分にすら届かない。 あの男の背中の三割を継ぐ者が、この学園の頂点に座っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ