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『悪役令嬢ですが、周囲が全員「狂人」しかいないので、婚約破棄イベントが世界崩壊の引き金になりました』  作者: 限界まで足掻いた人生
『聖域粛清(クリンナップ)編』

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第33話:絶対王政の産声、あるいは塵芥の臣従

教室という名の密室は、依然として狂気に満ちていた。 我々「一年X組」の三十三名は、自らが概念的に生み出された存在であることに気づいていない。隣り合う者が昨日までどこにいたのか、何者であったのか、そんな根源的な問いを思考の外へ追い出し、ただ一点――この閉鎖空間における「王」を決めるための闘争に没入していた。


前方の教壇付近では、先ほど地面に沈んだ貴族たちの残党が、なおも虚勢を張り、次なる標的に向かって異能を振りかざしている。一パーセントの一般生徒をゴミのように扱い、三パーセントの勇者を圧倒した「十パーセント」の出力。その力に酔いしれた者たちは、自分たちこそが世界の中心であると誤認していた。


だが、私は見ていた。 窓際の一番後ろ、深淵よりも深い静潔を纏った「彼ら」を。


(……勝てない)


私の本能が、心臓の鼓動を止めるほどの冷気を送り込んでくる。 数分前、私は勇者ヒカルを赤子の手をひねるように処理した。その慢心は、彼らの放つの黒い極光を視認した瞬間に霧散した。この教室の序列カーストなど、彼らが沈黙を破った瞬間に無に帰す。


私は確信した。生き残る道はただ一つ。彼らという「絶対」に、誰よりも早く膝を屈すること。


私は、闘争に明け暮れる中央の群れを離れ、窓際の後方へと歩を進めた。 一歩、近づくごとに空気が「重く」なる。 それは物理的な重力ではない。存在の密度、清浄の圧だ。


「……何用かな。不燃ゴミ」


**芥 あくた・れん**が、本から目を離さずに囁いた。 その瞬間、私の全身を凄まじい圧力が襲った。


ドォォォォォォン!!


床がひび割れる。 私の体は、あたかも不可視の巨人に踏みつけられたかのように、冷たいタイルの上に押し付けられた。十パーセントの出力を全開にして抗おうとするが、指一本動かせない。骨が軋み、眼球が裏返りかける。


「ぐ、おぉぉ……ッ!!」


身体の自由を奪われ、肺胞が潰れる寸前。 それでも私は、震える腕で床を掴み、頭を上げようとした。 ここで屈服しなければ、私は「汚れ」として消去される。 私は、床に顔を擦り付けながら、必死に声を絞り出した。


「お……お仕え、させて……ください……ッ!」


その言葉が空間に溶けた瞬間、わずかに圧力が和らいだ。 巨躯を揺らし、**灰屋 省吾はいや・しょうご**が私を見下ろす。その瞳には、人間を観測する慈悲など微塵も存在しない。


「……いいだろう。ゴミ拾いには、手足が必要だ」


**無代 零三郎むしろ・れいざぶろう**が、窓の外を眺めたまま、廃棄を宣告するように言った。


「君を……我々の『塵取り(ダスト・パン)』として登録した。……壊れるまで使い潰してあげるよ」


私は、ようやく解放された肺に酸素を送り込み、深く頭を下げた。 十パーセントの力を持つ「X組」の生徒が、さらにその深淵に位置する三人に服従を誓った。この歪な階層構造こそが、これからの学園を塗り替える理となる。


彼らは「管理」そのものだ。 感情を清掃クリーニングし尽くした者たちが、この世界の掃除屋・田中の因子と共鳴した果てに生まれた、執行人。


私は、彼らの足元に這いつくばりながら、遠くでまだ王を決めようと騒いでいる「同級生」たちを憐れんだ。 彼らはまだ知らない。 明日、この教室に朝日が昇る頃には、自分たちが「整理整頓」されるべき対象に過ぎないということを。

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