出会い
「あー、今日も学校の授業終わったし、本屋でライトノベルを立ち読みして時間を潰すかな?」
ビーチャはいつものように本屋のライトノベルコーナーに立ち寄ろうとした。すると、そこに同じクラスのオロスからの交換留学生、ナターシャ・リュドミラが立っていた。彼女は肩にかかる位のナチュラルウエーブの掛かった金髪で碧眼、背の高さは女性なのでヤマト人の成年男性と同じ位あった。ビーチャの学校の女子の制服を着ていたのですぐにビーチャと同じ学校の生徒だと判った。
彼女は書店のライトノベルコーナーの前に立っていて、新入荷して棚積みされているライトノベルのイラストをしげしげと眺めていた。ビーチャはオロス語が得意でなかったので、ヤマト語で彼女に話しかけた。
「やぁ、ライトノベルに興味があるのかい?」
「ハイ、絵ガトテモカワイイデス。ヤマトゴハヨクワカリマセンガ、絵ガカワイイノデ、コレクションシタイデス」
「この一冊だけが欲しいの?」
「ハイ、コノクノイチ、オンナニンジャガヒョウシノイラストニナッテイルノガ、ホシイデス」
「何か困ったこと無いかい?」
「ヤマトゴデカイテアルストーリーガヨメナクテクロウシテイマス。ドンナモノガタリナノデショウ」
「 あぁ、現代で交通事故に遭って命を失い、過去の戦国時代のヤマトに転生した女子高生が忍術を学びながら仕える領主に認められて行くストーリーだよ。」
「アリガトウゴザイマス。ホントウニアリガトウゴザイマシタ」
* * * *
ビーチャは同じ興味の対象をナターシャと共有出来て得意満面だった。今までヤマト人の女子学生と並んで歩いたことの無かったビーチャは異文化交流に興味を持っている外国人の女の子と初めて連れ立って歩いていた。ナターシャの方も特にビーチャに警戒心を持つでもなく、彼と並んで歩いていた。二人は言葉を交わすことはあまりなかったが、ビーチャは女の子と連れ立って歩くことができて満足だった。彼女を下宿先まで送って行ったビーチャは、また下校途中に会えるといいねと言って、彼女と別れた。「彼女もヤマト語下手だし、今後、もし今日の出来事を契機にお付き合いできるとすれば、もっと自分もオロス語を勉強して喋れる様にならないとだめだな」とビーチャは思った。
ビーチャは帰宅すると、食事も程々に宿題と明日の授業の予習を始めた。ビーチャは部活は文科系の帰宅部なので学校が終わると直ぐに家に帰ってきて明日の授業の準備ができる。
「今日はオロス語の授業が無くて助かったよ。でも明日はまた、2時間あるんだよな」
これまでは、オロス語の学習動機がいまいちで勉強にも気が入っていなかったビーチャだが、ナターシャと知り合いになれてからは、次、ナターシャに話しかける時どんなオロス語を話そうかという、十分な動機付けが為されていた。
「少し会話の練習をするか」
ビーチャは今までのオロス語の授業で学んだ語彙や文法事項を思い出して、ナターシャとの会話をシミュレートしてみた。これは、ビーチャが明日の放課後、校門で偶々ナターシャと鉢合わせになったと仮定しての会話である。以下、その内容を日本語で書こう。
ビーチャ「やぁ、ナターシャ!」
ナターシャ「こんにちは、ビーチャ!」
ビーチャ「調子はどう?」
ナターシャ「元気よ。ビーチャは?」
ビーチャ「元気さ。こんなとこで話すのも何だから、どこか店に行って話さないか?」
ナターシャ「いいわ」
ビーチャ「学校から君の下宿先までの帰り道にカフェかレストランは無いかい?」
ナターシャ「ハンバーガーの店があるわ」
ビーチャ「じゃぁ、そこに寄って行こう。君の下宿先の門限は何時?」
ナターシャ「十八時よ」
ビーチャ「じゃぁ、ちょっとだけ話そうね」
ナターシャ「ええ、いいわ」
・・・以下、続く。
「まぁ、出だしはこんなところでいいか。如何に俺がオロス語が下手糞でも予め予想される会話の内容を辞書を引きながらオロス語に訳して行き、暗記すれば百戦危うからずってか。じゃぁ、学校周辺の地図をネットで調べて、ナターシャの下宿先までの間にどんな食事をする店があるかを調べていこう」
明日のオロス語の授業の予習も程々にビーチャは勉強を終えて、入浴して寝た。
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