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第二話 過去との邂逅

 「こいつは派手に崩れたな・・・」

 「でしょでしょ?」

 遂に目的地へ到着した。砂や土に半ば埋もれた状態の丸みを帯びたドーム状の屋根と思われる部分がある遺跡だ。この遺跡は他の物と違って塔の様な形では無く、全体がそれほど高く無い。なので土の斜面を登って容易に屋根まで歩いて行ける。以前に来た時は入口らしき部分は殆どが埋まっていて、屋根部分にも入れそうな損壊部が見当たらなかった。だが今はどうだ。屋根の真ん中に巨大な遺跡の瓦礫が刺さっているではないか。旧文明の遺跡に使われている素材は基本的にとてつもなく硬い。少なくとも手持ちにある道具では全く歯が立たない。だからこそ、今回の様に長く閉じていた遺跡にはお宝が眠っている可能性が高い。

 「早く行こうぜ?座りっぱなしでケツが痛ぇや。」

 「先にベリルとジグ兄ぃとで行っててよ。こっちの準備しておくから。」

 「悪いなアリエス。」

 「いいってジグ兄ぃ。車も見ておかないとだし。一旦戻ってきたら交代ね。」

 「いつも通りだな?うし、行こうぜジグリス。」

 「へいへい、足下気を付けろよ〜。」

 一人が外で車や機材を見守りながら待機。残りの二人が探索に行くのがいつものパターンだ。今回はアリエスが最初の留守番である。遺跡漁りを始めた最初の頃は三人で探索していたのだが、遺物を手に入れていざ帰ろうとしたらエンジンがかからなかった時があった。原因は小型の生き物がエンジンルームに入り込んで食べ放題とばかりに色々な部品を食べてしまっていたからだった。あの時の三人の表情と場の空気といったら、今でも定番の笑い話になっている。

 屋根に刺さった瓦礫は横倒しになっており、ロープを使ったりしなくても余裕で歩いて降りていける坂道になっていた。

 「ベリル、ライトだ。」

 「おぅ。・・・こんな場所は初めて見るかもな。」

 「よっこいせっと。どれどれ・・・確かに。なんというか他の遺跡よりも小綺麗な感じ・・・か?」

 「こんだけ綺麗に残ってる遺跡なんて見たこと無いぜ?随分と頑丈に作られてたみたいだな。」

 ジグリスからライトを受け取って建物内を照らす。驚いた事に、内部は過去の原形を殆ど保っていた。建物の外側が他の遺跡とは違って頑丈だったからなのかは分からない。しかし、明らかに他とは何かが違っていたのだろう。

 「何に使われてたんだろうな?あっちには壁が無ぇ部屋みたいなのが並んでるし、それに機械だらけの部屋とか。」

 五つの小さな部屋が連続して並んでいた。中には何も置いていない空っぽの四角い部屋だ。だが不思議な事に出入り口があるべき面の壁が存在していなかった。つまり単に壁に仕切られた部屋が並んでいたのだ。倉庫に使うとしても仕切りの壁が邪魔になる筈だ。機械だらけの部屋も奇妙であり、埃や砂を被った四角い機械が規則的にいくつも並んでいる。棺桶みたいなサイズの機械がズラリと並ぶ間に立つと、まるで迷路に入ったかの様な妙な圧迫感を感じた。

 「ベリル、何に使われてたかなんてのは重要じゃない。使えるものがあるかだ。だろ?」

 「そーだな。綺麗に閉じられてたおかげで動物も殆どいないみたいだし手分けして漁るか?」

 「そうするか。動力コアがあったら優先的に集めてくれ。村のコアがいくつか悪くなってるらしい。」

 「わかった。なら俺はあっち側な。」

 「りょーかい。」

 ジグリスとは反対側を探索していく。いくつか部屋があるらしい。しかし、どの部屋の扉も通り抜けられる程にも開いていない。それどころか取っ手さえも付いていない。昔の人間はどうやって扉を開閉していたのだろうか・・・と思案していても埒が明かない。こじ開けるのに適した何かを探す必要がある。

 「ん?」

 足先に何かがコツンと当たった。ライトで照らすと金属の滑らかな仕上がりの棒が転がっていた。棍棒の様に先端は太いのだが、手元に行くほどに細く握りやすい形状だ。

 「これこれ。こーいうのが欲しかったんだよ。ちょいと重いか?あー、なるほどな。壁に掛かってたやつなのか。」

 持ち上げて具合を確かめる。少し重い気がしたが、きっとそれだけ丈夫な筈だ。壁には棒を掛けて飾るのに丁度いいフックが二つ突き出ていた。それと金属のプレートが壁に貼られていたのだが、生憎と昔の文字は読めない。だが何かしらの記念品なのだろう。

 「ふんっ!ふんっ!・・・なかなか良い棒だな。」

 扱いやすい長さと重量。何よりも棒だ。良い棒を手に入れた時、人は誰しも良い気分になる。それは昔の人間も同じだったのではなかろうか。

 手近にあった部屋から探索を開始する。少しだけ開いている扉を手に入れた棒でこじ開けていく。苦戦はしたが、なんとか入り込める隙間にする事ができた。肝心の部屋の中なのだが特にめぼしい物品は見当たらなかった。次の部屋も、その次の部屋もハズレ。古代の貨幣らしき物があったくらいだった。

 「ハズレ。残りはこの部屋だけか。ふーむ、どう開けたもんかな・・・」

 一番奥にあった部屋。しかし残念ながら他の部屋の様に扉が半開きになっていない。だが遺跡漁りの嗅覚は、この部屋が当たりだと囁いていた。扉の装飾が他よりも少し凝っているからだ。

 「ジグリス達に相談してみるか?あっちも何か見つけてるかも知れないしな。」

 機械いじりはジグリスとアリエス兄弟が得意だ。こういった開かない扉も、あの兄弟にかかれば頑固な口も開いてくれるだろう。そうと決まればとりあえずジグリスに見てもらわなければならないので探しに来たのだが・・・

 「ジグリス?お〜い!そんなに広い場所じゃねぇんだがな・・・。おっ、下に行く階段か。地下があったのか。」

 どうりで呼びかけに応えないはずだ。土や瓦礫で塞がってもおらず、暗闇がこちらを覗いている。

 「上よりも狭そうだな。ジグリス〜?返事くらいしろって〜?そっちか?」

 地下は真っ暗で視界はライト頼りだった。ジグリスを呼んでみるのだが返事が無い。隠れて驚かすなんて遊びは流石に勘弁して欲しいところだ。広めの円形スペースといくつかの小部屋がある。その内の一つから物音が鳴った気がした。

 「ここか?・・・いねぇのか。こいつは動力コア。なら近くに・・・よし、あった。」

 小部屋は倉庫として使われていた様子だった。崩れた棚の残骸に紛れていたのは埃を被った動力コアだ。見た目は円柱状の白い石なのだが、正しくエネルギーソケットに嵌めてやると白い紋様が現れる。主に遺跡から発見され、驚くべき事に長い年月を経ても使用する事が可能なのである。

 壁にライトを当てて見ると、四つの動力コアが刺さった配電盤らしき物が見つかった。他の遺跡でも動力コアの近くには配電盤らしき物が見つかる事が多い。

 「大丈夫かこれ・・・大丈夫そうだな。そんじゃ抜きましてっと・・・どうだ?」

 刺さっている動力コアを上階で見つけた金属の棒で小突いて様子を見る。動力コアの詳しい仕組みは知らないのだが、過去にジグリスが他の遺跡で配電盤らしき物に刺さった動力コアを引き抜こうとしたらエネルギーが炸裂してふっ飛ばされた事があった。半日は体が痺れてまともに動けないと愚痴っていたのでアリエスと二人でからかってやった。とまぁ、そんな事があったので安全確認は大事なのだ。それから動力コアを抜いて、さっき見つけた物と入れ替えてみると挿した動力コアに僅かな光が灯った。そして次第に四つ全てに白い紋様が光ると、建物内に低い振動の様な唸りが響き照明が点灯したのだった。

 「建物の中が綺麗だったからもしかしたらとは思ってたけど・・・本当に明かりがつくとはな。」

 遺跡の技術力は非常に高い。今の技術力なんてものは比べ物にならない位だ。長い年月を越えても稼働する施設なんて、実物を見ていなければ信じられなかっただろう。だが現に明かりが灯り、壁や床には光が薄いプレートみたいに浮かんでいて何かの情報を映し出している。

 「それじゃあジグリスを探して・・・・・・なんだありゃ?」

 暗かった地下に明かりが灯れば後はジグリスを探すだけ。そうして改めて地下室を見回して二度驚いた。一度目は別の部屋の中に鎮座していた巨大な白い卵。その表面は照明の光に砕いた宝石を散りばめた様に煌めいており、今までに見てきたどんな物よりも美しい逸品であった。問題は二度目の驚きだ。部屋の外、円形のスペースの天井にあった。それは大きく、美しく、暴欲的に狂い咲いていたのだった。

 

 


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