31話 鬼の章 其の捌
更新が遅れてしまい申し訳ございません。
今年初投稿となります。
かなり遅くなりましたが、今年もよろしくお願いいたします。
香善寺での修行後の食事の時間は私達にとって恒例の時間となった。
私はともかく、海堂くんもこうした和気藹々とした食事風景は慣れていないようだった。
否、慣れていないと言うか、こうした温かい光景が彼にとって久々な光景で最初の頃はどこか落ち着かない様子だった。
それが、、今となっては桃ちゃんの隣で、良きお兄ちゃんをしているのだ。
「たっちゃん!もものにんじんあげる!」
「こらこら。桃ちゃん。ちゃんと自分で食べなきゃ大きくなれないぞ?」
「う〜。にんじん、たべたら、ももえらい?たっちゃんほめてくれる?」
「おう!メチャクチャ褒めるぜ?」
海堂くんのその返事に桃ちゃんは渋々といった様子でにんじんを口の中につっこみ、咀嚼し、飲み込んだ。
「…にんじんたべたよ…。」
「おぉ!!桃ちゃんスゲェ!にんじん食べられて超えらいぞ!!」
そう言い、海堂くんは桃ちゃんの頭をワシワシと撫で回した。それ対して桃ちゃんは満足そうな笑みを浮かべていた。
そんなほのぼのとした光景の二人と真逆に、何やら寂し気なオーラを放つ男性が二人。
一人は桃ちゃんの父親の精願さん。そして、もう一人は楪さんの父親で、桃ちゃんの祖父である、この香善寺の住職の善丈さん。
「分かっている。分かっているんだ…。龍樹くんが良い子が故に我が孫が懐いているのは…。しかし…!」
「お義父さん。分かります…。私達の説得で食べてくれなかったにんじんを、龍樹くんの一言で食べたこの親としての寂しさ…。」
「二人とも、超ショック受けててまぢウケんね。もし、桃に彼ピが出来たらどーすんの??」
「か、か、か、彼氏だとっ!!!??」
「ゆうちゃん!!言ってもいい事と悪いことがあるよ!?!?」
二人の父の慌てふためき様にお腹を抱えて笑う楪さん。
「もも!おとなになったら、あきらおじちゃんみたいな、ひととケッコンする!!」
「そこは俺じゃないの!?つか、あきらおじちゃんって誰!?」
小さい女の子の言動一つ一つに動揺している大の男三人を見て更に大笑いをする楪さん。
桃ちゃん、あなたはきっと将来魔性の女になる未来が見えたよ。
そんな賑やかな食卓に突然の来訪者が来た。
「邪魔するぜぇ?なんか、ゆずちゃんの笑い声が外にまで響いていたぜ?」
「あ、噂をすれば。」
「あきらおじちゃん!」
「おぉ〜。桃ちゃん!元気そうだね!また見ないうちに大きくなったね〜。」
そう言って桃ちゃんの頭を大きな手で撫でるのは、Tシャツにハーフパンツと言うラフな出立ちの明さんがいた。
「久しいなあき坊。孫はやらんぞ。」
「こんばんは明さん。娘はやりませんからね。」
「え?え?何?ガチキレしてるじゃん。こわっ。」
笑顔にはずが先程の桃ちゃんの発言のせいで、どこか鬼気迫る雰囲気を醸し出す精願さんと善丈さん。
「はいはい。親バカはそこまでにして、あきおじはどうしたん?」
「お、おぉ。ウチから出した若もんの修行の成果を見に来たんよ。」
といい、親指で私と海堂くんを指した。
「お疲れ様です。明さん。」
「…どうもっす。」
「みっちゃん元気にしてるかい?んで、その子の君が海堂くんだね。」
「明さん、お疲れ様です。」
「っす。」
「今晩は。俺は土御門明。君の依頼を受けた環の叔父で、久我相談所の所長やってます。」
「海堂龍樹っす。この度はお世話になります。」
食事の途中だった為、あぐらを組んでいたのを正座に座り直して、明さんに軽く頭を下げる海堂くん。
「なんだ。不良だって聞いてたけどめっちゃいい子じゃん。」
そう言って明さんは徐に海堂くんの額に指を当てる。
「!?…あの…。」
「ごめん。ちょっと静かに。」
いきなりの状況に動揺する海堂くんを制して、明さんは目を閉じ、数秒間何かに集中している様だった。
「…ん…環の見立ては正しい様だね。」
「あのぉ…何を?」
「いきなりワリィな。君の今の状態を覗かせてもらったんだよ。君ん中にある鬼の加護凄い強さだね〜。体付きも同世代の子と比べるとだいぶ立派だし、何というか、山での修行とかでもっと鍛えれば君自身が鬼と言っても過言じゃないくらいの力を付けるんじゃね?ゆずちゃん、どんな修行したのさ?」
「特に何にもしてないよ〜?座禅とか、薪割り、運搬、寺の中の掃除とか…?」
「それ、ほぼ雑用じゃね?…いや、逆にそう言う初歩的なモノの方が効くのか。」
楪さんの話を聞いてまた何か思案する明さん。
「とりあえずこの出来なら、君からの依頼を達成できるっしょ。」
「!?…本当ですかっ!?」
明さんの言葉に目を輝かす海堂くん。
「あのぉ…私も大丈夫なんでしょうか…?」
海渡くんの喜びに横槍を刺すようなタイミングで申し訳ないと思いつつ、私も明さんに尋ねた。
「みっちゃんの場合、海堂君みたいに一朝一夕でどうにかなるって訳じゃないモノなんだけど…うん。だいぶ整って来てるね!」
「整う?」
「そ。環からなんて聞いてきた?」
「えっと…心身を鍛えろって…。楪さんからも似た様な説明をされました。」
「そ。心身…と言うより、みっちゃんの場合『心』の方がメインだな。ここの修行やってどうだった?」
「どうって…。確かに掃除や力仕事は最初は大変でしたが、やって行くうちに慣れてきて、最初に比べるとに段取り良くできる様になりました。それに、修行の後のご飯の時間が楽しみでした。」
「いいねぇ〜。その間なんだけど、みっちゃんの中の嫌な事とか忘れていなかった?」
「あ。」
確かにそうだ。修行の間は見たくもない霊とか、考えたくもない家の事とかを忘れる事ができた。
「意図的にメンタルをフラットに出来る人間はそういない。特にみっちゃんみたいな大きい力を持っている子はとても揺らぎやすい。言い方を変えると力に呑まれやすい。呑まれた結果、力が暴走して自爆しちゃうわけよ。ちなみに、ここまでの事なら海堂君にもありえた事だからね。
俺ら術師もメンタルが揺らぐと色々危ないのよ。分かりやすいのが式神に乗っ取られたりな。海堂くん。君、この間まで不良少年やっていたらしいけど、何がきっかけで不良になったの?」
「え!?俺!?あ〜…。あんまし覚えてないけど、今みたいになったのは中学二年の頃だったような…?その当時ガラの悪い上級生数人に絡まれて、殴られたんすよ。んで、ムカついたんで俺も無我夢中で殴り返してたら、全員のしていたんっすよ。その時の快感?征服欲?が忘れられなくて…現在に至るって感じっす。」
「うん。正にそれだね。不良全員がそうって訳じゃなし、君に鬼の加護があったって言うのを前提の話だけど、海堂くん自身が秘めていた力が、その上級生達を返り討ちにする事によって目覚めたのは良いけど、その時の海堂くんの状態を考えるとかなり興奮状態だったんじゃない?」
「ですね。他人から殴られたのなんてあの時が初めてだったんで……。」
「興奮状態…。つまり、精神的に冷静を欠いてたわけだ。多感な年頃で、初めて殴られたんだ。当たり前だ。でも、そこで運悪く鬼の加護が働いてしまい、海堂くんは自分の力に呑まれてしまったって流れ。今はどうよ?ちょっとは気持ちが穏やかになっているんじゃない?」
「確かに…。修行前ならキレてた様な事も今は何とも思いません。」
「良いねぇ〜。修行の成果がちゃんと出ている証拠だよ。さて、これで、海堂くんは良いとして、みっちゃんの話に戻るけど、みっちゃんの場合、その力故に感受性が半端ないんだよね。」
「感受性…?」
「そもそも霊が見える、ましてや声が聞こえるなんて感受性が並の人間と違って桁違いなんだよ。そんな人間、無念の塊の霊からして見れば格好のカモなんだよ。」
「カモ…ですか。」
「そうだよ。拗らせた人間って自分の話を聞いて欲しくて仕方がないの。その辺の浮遊霊はそこまで強くはないけど、それの究極形態がいわゆる悪霊とかその辺になるんだけど、こいつらは兎に角我が強いのなんの…。」
そう話す明さんの顔はどこか疲れていて、どこか遠くを見ていた。悪霊で何か苦労したんだろう。
「そんな自己中の塊が、自分の話を聞いてくれそうな人間を見つけたらそりゃ、取り憑く一択だろ。んで、取り憑かれた側の人間は霊なり、悪霊なり、負の感情を受け取って病んじまうわけよ。」
「確かに。友達の重めの悩み相談とか真面目に聞いてると気疲れするよね〜。」
話を傍で聞いていた楪さんが、桃ちゃんを抱えてそう言った。
ここまでの明さんの話はそこそこ長く、それに飽きた桃ちゃんは気づいた頃にはお母さんの楪さんの胸の中で眠っていた。
「正にそう。現実でもそうだけど、そう言う話を間に受けるのは普通疲れちまう。だから大抵の人間は聞き流す。でも、みっちゃんみたいな感受性の強い子は一から十どころか二十、三十と受け取っちゃうんだよね。結果病んでしまう訳よ。環から聞いてるだろ?病んだらどうなるかって。」
「はい。」
最初の頃この神嫁の力についての説明で言われた。
負の感情に呑まれて、心身ともに病んでしまい命を落とすと。
「だから、みっちゃんにはこの修行で無心になる、受け流す力をつけて欲しかったんだよね。今のところ無心になるってところまでは行ったみたいだけど。でもその先の力を身につけて欲しいんだよね〜。」
「その先?」
「そう。みっちゃんの力は神にも通じる力。でも現段階では、その力をひたすら受信するだけの状態だ。そこに送信機能を取り付けらどうなると思う?」
「送信機能って…どう言う事ですか?」
私の問いかけにニヤリと不敵に笑う明さん。
「それは、神通力になるんだよ。」
31話読了ありがとうございます。
今の時期寒さで体調崩し易いとおもいますが、ご自愛ください。




