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29話 鬼の章 其の陸

更新が遅くなり申し訳ございません。

29話です。よろしくお願いいたします。楪さん再登場です。


「神嫁とは、その名の通り神の嫁なんだが、神嫁に選ばれる基準は未だ不明。選ぶ側の神の好み次第だからな。性別も関係ない。」


「はい。最初に久我さんからそう聞きました。」


「あの時には神嫁のデメリットは短命と言ったが、神嫁のメリットもあってそれが神と通じやすい力でもあるんだ。」


「神と通じやすい…?」


 その言葉にイマイチピンと来ず、首を傾げる。


「神社に巫女とかいるだろ?大昔、あの人達は神と人間の橋渡し的なポジションで、神からのメッセージを人間達に伝える役目だったんだよ。その力が…と言うかそれ以上の力が君には備わってるはず…。」


「はず…ですか。」


「あぁ。君自身も感じてるだろ?自分にはそんな力を使った覚えはないって。」


 久我さんの言葉に私は首を縦に振った。


 これまでの人生でそんな、文字通り神がかった力を行使した覚えはない。



「まぁ、神嫁って人種自体がかなりレアで事例も少ないから何とも言えないが、一般人として生活していた君が扱うには強大な力だ。よって、心身ともに力を付ける必要がある…と俺は思っている。」


 神嫁の力を行使したいなら、と付け加えて久我さんは言った。


 確かに最初久我さんが言っていた。

 私に宿る力はあまりにも強いから、そこにあるだけで器である私の肉体が持たない事もあると。



「神嫁の話はとりあえずここまで。次に海堂くんの悩みの鬼の呪い…というか、加護の話だ。」


 空気を切り替えるように久我さんはパンっと両の掌を勢いよく合わせた。


「加護?呪いじゃなくて?」


「あぁ。本人から聞いて確信したよ。彼のあれは加護だ。」


「でも、海堂くんのご両親やお祖父様は…。」


「亡くなった。それは本来海堂くんが受けるはずの厄を身近な、しかも血縁の親類縁者に肩代わりさせた結果だ。」


 その話を聞いて私の中で何かがゾワゾワと騒ぎ始めた。


「それって…海堂くんは…。」


「本人に聞かなきゃ分からないだろうが…薄々気づいてるんじゃないか?だから、()()()()()()()()()()()()()()()と思っているんじゃないかと思ってる。実際、彼の祖父は彼にそう説明しているようだし。」


「…!」


 素行不良で学校では有名な彼だが、昨日今日と話してみて分かったのが、中身はただの家族が大好きで大切に思ってるただの同級生の男の子だ。そんな子が、不本意に身についた自分の力によって大切な家族を亡くしたのかと思うと、どれだけ苦しかったか。


「鬼は悪い印象が多いだろうが、その加護をモノにすれば強大な力と、強靭な肉体を手に入れることができる。しかし、その加護を使いこなせないとなると…。」


「短命…。」


 先程の久我さんの神嫁の話と、海堂くんの話を思い出して私は思わず口に出した。


「そうだ。だから、今回の依頼は俺ら専門家側と依頼者側での同時進行での作業が必要になる。」


「海堂くんも何かやるんですか?」


「海堂くんだけじゃない。君もやるんだよ。」


「…え?」




 ――――――――――――――――――



 海堂くんの依頼を受け翌日。

 私は久我さんの指示でとある所に海堂くんと共に来た。



「やほやほ〜!みっちゃん!いらっしゃ〜い!元気にしてたぁ?」


 海堂くんと来たのは香善寺。

 そして、私たちを熱烈歓迎してるのはこの香善寺の住職の楪さん。



「楪さん、お忙しい中お邪魔します。あ、彼が事前にお話しした私の同級生の…。」


「海堂っす…。」


 流石の海堂くんも雰囲気のあるお寺背景にギャルマシマシの美女が来て面食らってるのが分かった。

 私もそうだったから。


「そんな畏まんないでよ〜!海堂くんだっけ?下の名前はぁ?」


「龍樹っす…。」


「おけおけ!なら、たっちゃんね!」


「たっちゃん…?」


「よーし!みっちゃん!たっちゃん!これからは二人にはとあることをやって貰おうと思いまぁす!」


 意気揚々と楪さんは私たちにとある物を渡してきた。


「何すかこれ。」

「着物?」


「ブッブ〜!これは作務衣と言って、お坊さんの仕事や修行の時に着る着物です!」


「仕事や…修行…???」


「そ!昨日珍しくたまちゃんから連絡きて頼まれっちったのよ〜。二人に修行をつけてくれって〜。」


「え!?」

「何だそりゃ!?」


 私と海堂くんは香善寺に行けと久我さんに言われるがまま来ただで、そこでの用は聞かされていなかった。


「何でも、たっちゃんからの依頼を無事にこなすには二人は雑魚すぎるから鍛えて欲しいんだって〜。」


「ざ、雑魚だとぉ?!」

「か、海堂くん!!落ち着いて!」


 己を貶す単語に反射的に怒りを覚えた海堂くんの腕にしがみついて海堂くんを止めた。


「ほら、そう言うところだよ。霊って人の負の感情に敏感で、そこに付け入るやつが多いの。なので、二人には基礎体力向上と己自身の感情をコントールの修行をやってもらおうと思いまぁす!」


「…っ…っス…。」


 なにか言いたげだった海堂くんは、楪さんの押しの強さに負け大人しくなった。


「…あのぉ…楪さん…。」


「はいみっちゃん!何でしょう!」


「私も参加する意味はありますか…?」


「もちのろんです!霊感の強いみっちゃんは普通の人より霊達に引っ張られやすいから、引っ張られないように心身ともにバイブス上げてもらいます!それに…。」


 そう言うと、楪さんは私に近寄り耳元でこう言った。


「前からたまちゃんに頼まれていたのよ。みっちゃんに修行を付けてくれって。」


 そう言って太陽のような眩しい笑顔を浮かべ、肩をポンと叩いた。


「ほらほらぁ!二人とも早く着替えてちょ!善は急げ!思い立ったら吉日!なる早で修行するよぉ!!」



 そうして、私と海堂くんの学校終わりの修行が始まった。

 

29話読了ありがとうございました。

キリよく年内には30話目をあげられるよう頑張ります!

今後もよろしくお願いいたします。


また、ブクマやいいねの方もよろしくお願いいたします。

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