28話 鬼の章其の伍
お待たせしました。28話です。
よろしくお願いいたします。
「その痣は生まれつきではないんですか?」
「はい。俺の両親の葬式が終わった後ぐらいから徐々に…。」
海堂くんの話を聞いて何か考え込む久我さん。
「その痣を見たお祖父様とお祖母様は何と…?」
「何にも。ただものスゲェ悲しそうな顔しながら、俺を抱きしめてくれました。」
「…。」
「久我さん?」
眉間に深い皺を刻みながら、また何かを考え込む久我さんが気になった。
「いや何でもない。話を続けよう。海堂くんは何故それが鬼の呪いと知ったのですか?」
「じいちゃんが言ったんです。『この痣は鬼の呪いの証だ。詳しいことは俺にも分からないが、この家の者にその痣出る時は鬼の怒りが降りかかる』って。」
「…なるほどな…。ちなみに、海堂くん以外にあの痣が出たと言う前例は?」
「じいちゃんの叔母さんがその痣があったって言ってました。」
「…そうですか…。ちなみにその災というものはどのようなものなんですか?」
「災そのものは色々あるみたいなんですが、確定で起きることは…痣が出たやつは長生きできないって…。」
そう言って俯き、自嘲じみた笑みを浮かべる海堂くんに、私は同情をしてしまった。
それは、神嫁で短命の運命を言い渡された自分と重ねてしまったからかもしれない。
「大丈夫だよ。」
気づいたら私はそう口走っていた。
「大丈夫って何を根拠に…。」
私の言葉を聞いて、諦めたような表情を浮かべながら海堂くんは言った。
「大丈夫だよ。だって、久我さんがどうにかしてくれるから。」
「おい。雪平さん…。」
「だって、久我さんや、今はいなけどここの所長の明さんもは凄い人なんだから。だからその…大丈夫だよ!」
明瞭な言葉にできない。しかし、短期間ではあるが、私は明さんや、久我さんの実力や人間性をこの目で見てきた。
今、海堂くんに投げかけた言葉は、これから来るのか分からない、将来への不安を抱いてる私自身に、言い聞かせてるのかもしれない。
でも、久我さんならどうにか出来るのかもしれない。そんな確信があった。
「…雪平さん。依頼人の前です。落ち着いてください。」
「す、すみません。」
感情的になりかけた私を説き伏せる久我さん。
「雪平さんはこう言っていますが、現段階の情報だけだは何とも言えません。」
「そう…ですか…。」
海堂くんは久我さんの言葉を聞き落胆する。一方の久我さんは立ち上がり、デスクの引き出しを開けて何やら手帳と紙を取り出し何かを書き出す。
「なので、もっと詳しい調査を行いたいです。よければですが、海堂くんのご自宅まで伺って、現地調査をしたいのですが、宜しいでしょうか?」
「…!!はい…是非お願いします!…あ、でも料金が…。」
そう不安げに聞く海堂くんに、久我さんは言った。
「安心してください。こちらとしても学生である海堂くんの事を考慮しながら、価格を提示させていただきます。…具体的にはこのぐらいかと…。」
そう言って、先程書いていた紙を海堂くんに渡す。
「…これくらいなら、バイトでどうにかなりそうです…。」
「それは良かった。では、ご自宅にお伺いする日程なんですが…。」
そうして、トントン拍子に予定が決まり、心なしか海堂くんの表情も明るくなったような気がした。
「では、このような日程で調査させていただきます。」
「ありがとうございます。…正直、こんな話を信じて貰えるだなんて思っていなかったもんで…。雪平もありがとな。」
「…うん。まぁ、それが仕事だからね。」
そうそっけなく返す私に、海堂くんはそうか。と短い返事で返すが、初対面で会った時の鋭く近寄りがたい印象はどこかに行き、目元を細めて柔かに笑って相談所をあとにした。
「気のいい青年じゃないか。」
久我さんは海堂くんが相談所を出たのを見届けて言った。
「…そうですね。」
それに対して、もやもやした感情をが拭いきれない私は返事を言い淀んだ。
「ふふっ。君は案外根に持つタイプなんだな。」
そんな私の様子を見て久我さんはどこか愉快そうに見えた。
「きっと君にはあぁいうタイプの青年の方が良いのかもしれないな。」
「何言ってるんですか?あの人、初対面で私を試すような事したんですよ。」
「話す内容が内容だ。いきなり『あなたは幽霊が見えますか?』なんていきなり聞く方が、俺にしてみれば怪しさ満点だと思う。」
そう言って、相談所中央のデスクにどかりと座った。
「それに、今回の依頼、君の為にも受けた方がいいぞ。」
「私のため?」
「あぁ。君の神嫁という厄介な立場から解放される方法が見つかるかもしれない。」
「…!!」
久我さんの言葉に心臓がざわついた。
「最初に会った時に君には簡単に話したかと思うが、神嫁とは、神が気に入った人間を手元に置くためにマーキングした存在だ。」
「…はい。」
「しかし、神嫁という存在自体が非常に稀だ。その詳しい内容を知るためのサンプル数が圧倒的に少ない。」
「つまり、調べようがないと…。」
「そうだ。しかし、似た事例なら多少はある。そこから、徐々に解決の糸口を見つけるしかない。」
「それが、今回の海堂くんの件だと…。」
「そうだ。」
久我さんはハッキリと肯定した。
「それを踏まえて、改めて神嫁とは何か、そして、現段階での海堂くんの現状を俺の仮説で説明をしようじゃないか。」
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