26話 鬼の章其の参
26話です。
よろしくお願いいたします。
海堂くんから聞いた話を早速相談所の二人に話そうと思い、学校終わりの足で相談所に向かった。
「お疲れ様です〜。どちらかいますか〜。」
相談所の扉に鍵がかかっていなかったので、一声かけて相談所内に入っていった。
そこには客対応用のソファーにどかりと寝転んでる久我さんがいた。
「久我さん…お客さんが来るかもしれないですよ?」
「…今日は予約は入ってないから大丈夫だ…。」
普段も割と塩対応だし、人をバカにする態度の久我さんだが、今の久我さんはやや違うように感じた。
なんかこう、ウジウジしたような、拗ねているようにも見えた。
「なんか、この間から元気ないですね…どうかしたんですか?」
「…別に…。」
思春期の子どもかっ!?
いや、反抗期の子どもにも見えなくはない。
つまり、今の久我さんは普段と全く違い、子供っぽいのだ。
「はぁ…。話だけでも聞けますけど…?」
私はソファーで寝転んでる久我さんに近寄った。
「いい。ほっといてくれ。」
そう言うと、私に顔を見せたくないのか、もしくは私の顔を見たくないのか仰向けの体勢から、ソファーの背もたれの部分に顔を埋めるようにして、顔を隠されてしまっった。
もしかして、これは結構重症なのでは…??
どうしたものか…。
「もしかして、蘆屋のことですか…??」
デリカシーがない問いかけだが、おそらく…と思い問いかけると、かすかに反応があったような気がした。
「久我さんらしくないですね。あんな子供の言葉を間に受けるだなんて…。」
「…っさい…。」
「え?」
顔を埋めて反論したようだが何言ってるのか聞き取れずに聞き返してしまった。
「うるさいって言ったんだよっ!」
そう勢いのまま叫び、起き上がった久我さんは忌々しそうに私を睨みつける。
その光景に私は多少は驚いたが、不思議と怖くはなかった。
「久我さんって…。」
「なんだよ。」
「意外と繊細さんですよね。」
「はぁ?」
私の言葉に益々苛立ったかのように私への睨みがキツくなる。
「だって、物事は用意周到に準備しないと気が済まなそうだし、蘆屋と会う前から不安定気味になってるし…。」
「だからなんだよ。アンタに何がわかんだよ。」
「分かりませんよ。」
私が食い気味に言葉を遮ると、少し驚いたかのように言葉を詰まらせた。
「久我さんの不安や恐怖、痛みは久我さんにしか分かりませんから。私がどれだけ話を聞こうが、同じような体験をしようが全部は分かり得ないんです。これは私の実体験です。」
私の家庭環境や体質を人にどれだけ説明しても、他人には理解ができなかった。
それはあくまで私の抱える痛みや苦悩で、私以外の人間には理解されないのだ。
私の話を聞いて先ほどまでのイラつきはどこかへ行ったらしく、反動なのかみるみると元気が無くなっていくのが分かった。
「蘆屋の言ったことなんか気にするなとは言いません。でも、蘆屋が自由に力を使えて、久我さんは使えない事に何かを思うなら、今は気にしなくても良いんじゃないですか?」
「…なんで?」
「だって、今の久我さんには私がいるじゃないですか。私を使ってくださいよ。その為に私はここに居るんですから。」
私は少しでも久我さんと視線を合わせるためにしゃがみ込み、近くにあった久我さんの手を握った。
握ったその手はひんやりとしていた。
「君の力を使っては、そんなの俺の実力とは言えない。」
「それは考え方だと思います。視力が悪い人がメガネやコンタクトを使うのと一緒です。足りないものを補おうとするのも努力なのではないでしょうか?
それに最初に言ってくれたじゃないですか。私の贅肉みたいな無駄についた力をありがたく再利用してくれるって。」
「…確かに…言ったな…。」
弱々しく返事をしてくれた。
「だから、私を使って依頼を解決しようとするのも、久我さんの努力の表れだと思いますよ?」
「…。」
こんなイチ女子高生の話で、今の久我さんをどうにかできるとは思ってはいないが、顔を伏せてしまって久我さんの表情が読めないのだ。
「(何か、また気に触ることを言ってしまってないだろうか…。)」
好き勝手言った後に少し後悔してしまったが後の祭りだろう。
「雪平さん。すまない。」
いきなり名前を呼ばれて、ドキッとしてしまったが、すぐに久我さんの表情を見て安堵に変わった。
先ほどまでの不安いっぱいといった雰囲気は消えて、久我さんの瞳に活気が宿っているのが分かった。
「確かに俺らしくもなかった。切り替えるよ。」
「そうですよ。久我さんは、他人を土台にしてその上で傲慢に高笑いしている方がお似合いですよ。」
「おい。俺はそんな非人道な人間じゃないぞ。」
そうやや怒ったような顔をしながら返してくれる久我さんを見て、私は安心した。
「そうだ。久我さんと、明さんに聞いてほしい話があったんだ。」
私は学校での海堂くんの話を思い出した。
「叔父さんなら暫く遠方の依頼でいない。俺が代わりに聞こう。」
そう言って、久我さんはソファーに座り直し、話を聞く体勢を整えた。
その際に握っていた私の手は解かれて微かな寂しさが掌に残ったが私はその感触を振り払うように話を続けた。
「あ、ありがとうございます。あの、鬼って存在するんですか…??」
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