22話 術者の章其の肆
22話です。
よろしくお願いいたします。
金曜日の夜。
明さんの指定通りに私たちは一度相談所に集まった。
「みっちゃん悪いね、夜遅いのに。」
「いえ、我が家は割と放任主義なので一言いえば大丈夫です。」
時刻は夜八時。私みたいな未成年がうろつくには色々と不味い時間帯だ。
いつもの制服だと警官の目に留まりかねないので、私は一度家に帰り、動きやすいようにパーカーとジーンズに着替えてきた。
その時、一応リビングにいた親に声かけるが、聞いているのか、いないのかわからない返事を返された。
これは、いざ遅くに帰って来た時に、閉め出されかねないと思い、こっそり家の鍵を持ち出して来た。
「…。」
久我さんは出て行った後、暫くは帰って来ず、今日まで顔を合わせて無かったが、この様子を見る限りまだ感情を処理しきれていないようだ。
「環ぃ〜。そろそろ切り替えろよ〜?そんなんじゃ、あいつに付け込まれるぜ?」
「…あぁ…わかってる…。」
「あいつ?そういえば、明さん、未成年を補導しに行くって言ってましたが…今から誰に会いに行くんですか?」
「叔父さん、説明してなかったの?」
「あはは〜。わりぃわりぃ。…今から会いに行くのはこのサイトの創設者で、俺たちの因縁の相手だよ。」
そう言ってスマホの画面を私達に見せた。
『ご依頼ありがとうございます。
早速、今週金曜二十一時に〇〇市にある〇〇会社の元第一工場にお越しください。あなたをお救いできる術を直接お教えします。もし、お越しくださらない場合は規約違反とみなして、こちらで厳正な対応をさせていただきます。』
「これって…!」
「このサイトに繋いでみちゃった!てなわけで、この創設者の指示通り今から廃工場に出発しまぁす!」
そう言って明さんと共に、相談所から出発したのは今から三十分前の事。
私たちは明さんの車で指定の廃工場に向かってる最中だ。助手席に久我さん。後部座席に私と言った座り順だ。
え?明さんにツッコミは入れなかったのかって?入れましたとも。そしたら…。
「だってぇ、来いってぇ、言うからぁ〜。」
と、かわい子ぶりっ子でかわされ、久我さんには。
「こう言う術師の尻尾を掴むことは、本当はそうそう無いことだが、向こうから馬鹿みたいに足跡残してくれてるんだ。罠だとしてもついて行く価値はある。」
との事。
そんなの知りませんよ!確かに私もこの相談所の仲間ではありますけど、明らかに、今から荒事をしに行くテンションですよね!?
今まで誰かを殴ったことはおろか、喧嘩をしたことすらないのですが!?
そう思うと、胃がキリキリと痛み、心臓はバクバクと嫌に早く脈を打ち、冷や汗が出始めた。
「あの…私、今から行く場所でお役に立てるかどうかわかりませんよ…?」
「ん?あ〜!大丈夫大丈夫!今回はみっちゃんどころか、環も多分出番は無いから〜。」
「なら、私たち来る必要無いですよね!?」
「理由はちゃんとあるよぉ。これから俺が見せることは、きっと君達に起こることだから、まぁ、見学として…ね?」
「これから私たちに起こること…?」
何それ。怖すぎるんだが?
「…。」
明さんの説明を聞いてないフリをしてる久我さん。
夜の暗闇のお陰で窓ガラスに、久我さんの顔が微かに反射していた。
その顔は一言で言うと不満と言った表情だった。
「環、今回は実戦じゃないが、見ることも修行だかんね?」
「…わかってる。」
声色からして納得してないのが伝わってくる。
そんな感じで車に揺られること二十分そこら。目的地と思われる廃工場前についた。
「到着〜っと。俺が先に行くから二人は俺の後に着いてきてね〜。あ、一応、ライトは付けずにね?」
明さんがそう指示話出すのでその通りに、明さんの後をついて行くようにして廃工場の敷地内に入って行った。
何が起きるか分からない私は周りを見渡した。
廃工場は屋根や窓、壁までもがヒビや穴だらけ。そこから月明かりが入り込み、その光を埃がキラキラと反射していた。
夜ではあったが、ライトがなくてもある程度周りが見えた。
隅に寄せられた鉄筋や木材や、残地された工場の機械類には埃や錆があちこちに見えた。
人の手が入らなくなって何年経った?と思えるくらいには荒廃していた。
暫く歩みを進めると、突然前を歩いていた明さんが立ち止まり、左手を横に出して後ろの私達にも止まるように合図した。
どうしたのだろう?と思ったその時、明さんの目の前で突然何かが爆発した。
その激しい衝撃波は後ろの私達にも伝わり、爆発による閃光に咄嗟に顔を背けてしまった。
「…!!明さん!!大丈夫です…か…。」
目の前であれだけの爆発が起きたのだ。常人なら無事でいられない筈だが、私たちの前にいた明さんは平然と立っており、久我さんも慣れたといった様子で前を見据えていた。
「なんだよ…。おじさんって、夜目が効かないんじゃないの?」
突然前方から私達以外の声が響いた。
その声はまだ幼さが残ったような男の子の声だった。
「君が思うほど俺はおじさんじゃないんでね。」
「いやいや。三十二歳っておじさんだから。」
割れた窓ガラスから月明かりが差し込んでる。そこに入り込むように人影が浮かび上がる。
そこには、学ランを着た中学生くらいの少年がいた。
あれ…どこかで…?
「ガキのお前からしたら、年上なんてみんなオッサンやおばさんだろ?」
「あれれ〜?誰かと思ったら、土御門の落ちこぼれ君じゃん〜。まさか、術もまともに使えないから、俺に頼りにきたの〜??クソだせぇ。」
少年はケラケラと愉快そうに、久我さんを挑発するような態度を取り、それを受けた久我さんは「クソガキが…」と呟き前に出ようとしたのを明さんが静止した。
「おっさんを馬鹿にする君もいつかはおっさんになる事を忘れずにな?蘆屋の坊ちゃん。」
蘆屋…!この前楪さんが言ってた子だ。こんな子どもが…。
「なら、俺がおっさんになる頃には、アンタは老いぼれのジジイになってる事もお忘れなく。」
蘆屋が手を前に翳すと私達三人の周りを黒い煙が覆う。
しかし、何かが私たちの周りを囲っているのか見えない壁一枚を隔てて、私達には触れてこなかった。
「病魔の呪いか…。あの歳でこの規模か。末恐ろしいクソおガキ様だな。」
面倒くさそうに加えてたタバコを口から放し、宙に横一線を描くと、黒い煙が真っ赤な炎に変わり黒い煙が綺麗に消えていった。
「可愛い新入社員もいる訳だし、叔父さんちょっとカッコつけちゃおうかな。」
そういう不敵に笑う明さんの肩には、先程までいなかった真紅に輝く鳥が炎を纏ってとまっていた。
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