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2話 出会いの章其の弐

先程も見た通り、玄関入ってすぐに部屋の全容が分かる造りとなっていた。


 相談所内は中々広く、実用的且つシンプルな印象を受けた。

入ってすぐに一口コンロや水道といった小じんまりとしたキッチンに、小さな冷蔵庫といった所謂給湯室のような場所があったり、壁際には天井までの高さの本棚があった。本棚の中には重要そうな本やファイルがびっしり入っており、埃が入らぬようにしっかりガラス戸も閉めてあった。

部屋の中心部には向かい合った黒い革張りのソファーとその間には膝下程の高さのテーブルがあった。テーブルの上には紅茶が置いてあり、その席には明るい茶髪のショートヘアの女性がいた。


先程お兄さんが言ってたお客さんだろう。


女性は私の存在に気がついたのか私の方に顔を向けて少し驚いたかのような顔して、軽く会釈する。それに対して私も釣られて会釈を返す。


女性の顔立ちは整っていたが、そのせいか隈がひどく目立って見えて見えてしまっていた。


 そのタイミングでお兄さんがソファーの方に歩き出してた。


 「君はここ座って。」


 指定されたそこは女性の向かいの席だった。私は言われるままにソファーに座る。


そしてお兄さんはソファーには座らず、この部屋の最奥の中央、一番大きな窓を背にして、この部屋全体を見渡せるような場所にに置いてある大きめのデスクに座る。


その様子は、年若いお兄さんには少しアンバランスな気もするが、この空間の主人と言わんばかりの存在感を放っていた。その様子に私だけでなく、目の前にいる女性も感じたのか緊張してるように見えた。



 お兄さんはゆったりとした動きでデスクに両肘をつき、顔の前に手を組む。丁度組んだ手のせいで口元隠れて表情が分かりにくくなってしまったが、見えずともわかった。

 「さて。予期せぬ来訪者もありましたが始めましょうか。あなたが見てしまったモノの話を。」



 あの静かに凪いだ目と形の綺麗な薄い唇が綺麗に歪み笑っていたことに。私はそれを見て背中の辺りがゾワゾワとした感覚を覚える。



 「まぁ、話を始める前に改めて自己紹介をしよう。俺はこの久我相談所の久我環(くがたまき)。今回の案件を担当する。確認の為に今回の依頼主でもあるあなたのお名前をお伺いしても?」


 お兄さんもとい、久我さんは女性の名前を尋ねた。


 「はい。私は赤井 涼子。会社員です。えっと、今日は訳あって久我さんに相談があり来ました。」

 赤井さんは不安な面持ちで自己紹介をした。


 「そして、親切にもこの封書を届けてくてた君は?」

 そしてついに私の番が回ってきた。

「あ。えっと。雪平満月です。黒城高校二年ですが、四月から三年になります。」


 咄嗟の自己紹介に吃ってしまったがよしにして欲しい。


 こうしてこの場にいる人間の簡単な自己紹介を終える。


「さて、本題に入ろう。赤井さん。事前にメールで相談内容を拝見させていただきました。今お住まいのアパートに若い女性の霊が出ると言うことでお間違い無いですね?」


 久我さんの口から出た言葉に驚きを隠せなかった。


「…はい。」

「では、詳細をお伺いしましょうか?」 


 それを静かに肯定する赤井さんにも驚いた。

幽霊とかは見た事ないし、その手の話は実はあまり得意ではない。なので、今この場からすぐにでも立ち去りたいし。そもそも何故私は今この場にいるのかがわからない。


「あの…。すみません。この子は相談所の方ではなさそうですが…。」


 私の疑問を赤井さんが代わりに聞いてくれた。私もそれに便乗するように久我さんの方を見ながら首を縦に振る。


「彼女は先程偶然会ったんです。私が見るに今回の件だけでなく私の相談所が対応する案件の解決の糸口となってくれるでしょう。」


「は?それって…。」

と私が反論しかけた所で、久我さんがわざとらしい大きな咳き込みと、お前は黙ってろと言わんとする視線が向けられた。それに思わず私は気負されてしまい黙る事にした。


 「は、はぁ…。」


それを赤井さんも感じ取ったのかど了承した。


「それでは仕切り直して、詳細をお伺いしましょうか。」



「はい。三ヶ月くらい前の大雨の日の夜に見たのが最初です。その時は驚きのあまり気絶をしてしまい、気づいたら朝になっていて、気のせいだ。悪い夢でも見たんだって思うようにしたんです。」


 冷静に、分かりやすく伝えようとしてるのが分かった。やや俯いた顔、何かを抑え込んでるように膝の上に置いてある拳に力が入っていた。そして微かに肩も震えてるように見えた。

 赤井さんは続けた。



「でも、それが夢じゃなかったんです。あの日以降あれは私の前に何度も現れるようになったんです。仕事で外回りしてる時も、買い物してる時も、家でお風呂に入ってる時も、あれは私に付き纏ってるんです!視界の端々にあれの姿が映り込むんです!」



「…。」

話をすすめる程に興奮状態になっていく赤井さんとは対照的に身じろぎ一つもせずにただただ静かに話を聞く久我さんの姿が不気味に思えた。


「挙げ句の果てにあれは夢の中にも現れるようになったんです。」


「夢?どんな?」

ここにきてやっと反応示した久我さん。


「はい…。川?で溺れる夢でした…。川で溺れて苦しむ私にあれはしがみついて何かを永遠と言ってるんです…!そんな夢が最近毎晩見るようになって…私っ…もう…。」



限界が来たのだろう。話の出てくる「あれ」に酷く怯えてるのだろう。赤井さんはソファーに座った状態で上半身を丸めて。自分の肩を掻き抱くような体勢になり、嗚咽混じりになった声を聞いて、これ以上の話は無理だと分かる。私はそんな赤井さんの姿が痛々しく見えていてもたってもいられず、赤井さんの隣に座り、少しでも安心できるように背中をさすってみる。



「…話は大体わかりました。間違いなく【こちら側】の問題ですね。」


 久我さんはそういうと机の中から長方形の薄っぺらい紙と筆ペンを取り出し、紙に何かを書き出した。


「応急処置ではありますが、これを肌身離さず持っていて下さい。あと、実際に霊を見る必要もあるので直近でご自宅の方に伺っても良い日を教えて下さい。」


 何かを書き上げた久我さんは席から立ち上がりながらそれを封筒に入れて赤井さんに渡す。


「これは…?」

「お札です。一ヶ月くらい身に付けてください。入浴とかやむおえず身に付けれない場合はなるべく近くに置いといてください。あと、決して破いたりしないで下さい。この瞬間効果は消えてしまいます。」


 説明からして本当にお札のようだ。赤井さんの相談内容といい、久我さんのお札といい、俗にう霊感商法というやつなのでは?だとしたらこの場にいる私も中々ヤバい状況なのでは?



 そんな事を悶々と考えていると久我さんと赤井さんは話を進めていった。脳内に響く警戒音のせいで二人がどんな話をしてるのかあ耳に入ってこなかったが、赤井さんが立ち上がり帰るような様子になってきた。それに便乗するかのように私も帰ろうとするが、「おい」と肩を掴まれた。

「君はこれから作戦会議だ。」

 と有無を言わさぬ威圧で引き止められてしまった。


「では、また後日によろしくお願いします。」

 そう言って相談所から去る間際の赤井さんに、なんか哀れみの目を向けられたのはきっとき気のせいではない。

 そんな視線を向けるなら少しは助けてほしかった。そんな思いも虚しく私と久我さんは二人っきりとなってしまった。



2話読了ありがとうございます。

3話に続きます。


もしよろしければいいね、コメントもよろしくお願いいたします。

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