19話 術者の章其の壱
大変お待たせ致しました。
前回のつづきてす。
新キャラ登場します。
あ〜。どいつもこいつもくだらない。
女子は猫撫で声でまとわりついてきやがる。男子は低脳丸出しな言動ばかり。俺はこんな奴らと同族と思われたくない。
俺はそう思いながら、自分の席で次の授業の予習を軽くする。
「蘆屋く〜ん。放課後、暇?」
「みんなでカラオケ行くんだけど、蘆屋くんも一緒にどう?」
ほらきやがった。
「ごめん。今日は用事があっていけないんだ。またいく機会があったら誘ってくれるかい?」
当たりさわりのないように断る。
その時にこちらも残念そうな表情を浮かべるのがポイントだ。こいつらはどうやら俺の顔が好きらしいからな。
こうして断っておけば角もたたずに済む。
女子達「そっかぁ〜」と残念そうにその場を去っていく。
「お前らなんかと連むわけねぇだろ。バァカ。」
俺はお前らと違って忙しいんだよ。
ポッケからスマホを取り出して、メールを確認する。
受信ボックスには複数のメールが届いていた。
「ほぉんと。どいつもこいつも低脳で奴らばかりだよ。」
そう、蔑んだような笑みを浮かべながら俺、蘆屋 満は届いたメールへの返信をしていった。
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放課後、私は学校帰りに相談所近くの喫茶店に用があり、電車に揺られていた。
あの久我さんと初めて会った喫茶店だ。
今日から季節限定のメニューが出ると、SNSで宣伝していたので学校終わりに直行で向かっているのだ。
「まだ残ってるといいなぁ〜。」
そう思っているうちに電車は目的の駅にたどり着いた。
駅から喫茶店は近く、電車から降りた私の足どりは軽かった。
喫茶店に着くとそこは他のお客さんで溢れていた。
みんな期間限定のメニューが目的なんだろう。
レジに続く列があったので私もその列に並んだ。
ここの喫茶店は定期的に期間限定のメニューを販売する。その度にこうして行列ができるのだ。
レジまでたどり着くのにまだかかりそう。
でもこうして他の人と同じ目的で同じ行動すると安心する。
周りの人間と同じ行動を取るのは日本人特有って言われるけど、私のはまた違う理由だ。
人と違うものが見えたり、聞こえたり、場合によっては触れることができる私は、昔から気味悪がられることが多々あった。
周りと何かが違うとその集団から排除される。これは人間のみならず動物の世界でもよくあることだ。
私はその排除される対象。
私はそういった扱いの残酷さや虚しさ、悲しさをよく知っている。
こうして期間限定品に飛びついて、人の列に並ぶと自分は普通の人間になれた気になれる。
そんなことをぼんやりと物思いに耽っていると私の後ろに並んでた人から、すみませんと声をかけられた。
私はその声の方に振り向くと、スーツ姿の一人の男性がいた。
あれ…?この人、どこかで…?
「突然すみません。この間、駅の本屋にいませんでしたか?」
駅の本屋。その単語で私はハッとした。
「あ!あの時の!」
「凄い偶然ですね。どうでしたか?本条聡太の本は。」
男性はあの時と同じような柔らかな笑みを浮かべていた。
「はい。とても面白かったです。あ!そうだ!あの本、今は売ってない貴重な本らしいじゃないですか!?お返ししたいのですが、お名前と連絡先を教えていただいても…?」
こんな偶然そうそうない。私はそう思い男性に捲し立てるよに言ってしまった。
「うん。君みたいな可愛らしい子に声をかけて貰えるのは嬉しいんだけど、まずは注文してから落ち着いて話そうか?」
男性はそう言って私の後ろを指さした。
そこには先ほどまで私の前に並んでいた人が、レジで注文して会計をしてるのだった。
「やっば!?!?すみません!先に注文して席を確保しときます!」
私はそう言って慌ててレジに向かい、目的の物を注文した。
会計を済まし、二人掛けの席に男性と向かい合うようにして座った。
「名乗り遅れました。私、雪平満月と言います。」
「改めまして。僕は月山 尊と言います。そこのビル…アマテラスグループでしがないサラリーマンをやってるよ。」
男性もとい、月山さんはそう言って名刺を丁寧に渡してくれた。
「(おぉ…。大人だ。)」
高校生の私からしてみれば、このように自己紹介するのは物凄く大人な男性に見えて感動してしまった。
しかし、その大人の男性の目の前には私と同じ物。期間限定のフラペチーノがクリーム増し増しで置かれていたのだ。
「月山さんも甘いのがお好きなんですね。」
「うん。昔、妻から勧められてそれ以来ね。」
「え!?奥さん!大丈夫ですか!?私とこうして一緒にいて…。」
月山さんの言葉に思わず左手を見ると、確かに薬指指輪をはめていた。
高校生といえど、妻帯者とこうして向かい合って、二人っきりになることの不味さは理解してるつもりだ。
「あぁ。気にしないで。妻とは死別してからは寂しく独身生活を送っているよ。」
そう言う月山さんは笑ってはいるが、どこか寂しそうにしていた。
「そうだったんですね…。」
「うん。だから気にしないでね?あ、そうそう。本は別に返さなくても大丈だよ。僕自身何度も読んだから、まだ読んでない人の手に渡った方が本も幸せだろから。」
代わりに…。と言って月島さんは続けた。
「またこうして、僕の話し相手になってくれないか?」
眉を八の字にして懇願する月山さんだが、それって、まるで…。
「…パパ活ですか…?」
「違うよ。」
やや食い気味に否定された。
「別に金銭や身体的やり取りはいらないよ。ただ、今みたいにこうして話し相手になって欲しい。」
そういう月山さんは企みや疚しさは感じられないような気がした。
「う〜ん。まぁ…話だけなら…。」
これ聞いたら、久我さんや明さんあたりにまた小言言われそうだな。
「!!本当かい!?嬉しいなぁ。ありがとう。これからよろしくね、満月さん。」
満面の笑みを浮かべて、向かい合っていた私の手を握る。
「こちらこそ…。」
それから私と月山さんは一時間程話した。
私より年上の月山さんだが、とても話しやすく、別れるときはもう少し話したいと思ってしまったくらいだった。
別れ際、私と月山さんは互いの連絡先を交換した。
「(私がまさかあんな格好いい年上の男性と仲良くなれるだなんて。人生わからないなぁ〜。)」
美形の年上男性と、仲良くなったことによって浮かれていた私は、前方不注意によって向かい側から歩いてくる人物に気づかずにぶつかってしまった。
「った!」
「あっ。すみません。」
ぶつかった相手を見ると、学ランを着た、私より少し背の小さい男の子だった。
「ってぇなぁ…。気をつけてくださいよ…。」
男の子は悪態をつき、一瞥をしてその場を去っていった。
こちらの不注意とは言え、あの態度は…と思っていると。
「あれ…?」
男の子の後を追いかけるように黒い大型犬が歩いて行くのが見えた。
「あんなワンちゃん、いたっけ…?てか、リードつけてないじゃん…。」
「あのお姉さん、コイツが見えてるんだ…。」
そう独り言を呟きながら男の子、蘆屋満は黒い犬をひと撫でした。
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