17話 生霊の章其の陸
更新遅くなり申し訳ありません。
続きです。よろしくお願いいたします。
日曜日。
私は今回の依頼主でもある本条さんに会うために、駅近くのファミレスにいた。
ファミレスには私の他に、久我さん、明さん、楪さんがいた。
依頼主の本条さんは、都心の方にお住まいとの事だったが、わざわざ新幹線に乗ってこちらまで来てくれるそうだ。
「あきおじ〜、これも頼んでも良い?」
「ゆずちゃん、これから依頼主が来るのに食い過ぎじゃねぇか?」
現在午前十時。
日曜ではあるが、時間帯的にまだ、そこまでお客さんは入っていない店内。
私たちはそれぞれ軽食なり、ドリンクバーなりを頼んでいた。
しかも、明さん持ちで。
「なんかすみません。食事代まで出して頂いて…。」
「んお?あぁ。良いんだよ。学生どもは大人の財布を心配せずに好きなだけ食え食え!」
「だーかーらー!このハンバーグ御膳頼んでも良い?」
「ゆずちゃんは、同じ大人なんだから気にしなさいよ…。」
ちなみに楪さんは先程からオムライスやら、ステーキやら、かなりボリュームのあるメニューを頼んでおり、それらを美味しそうに食べているのだ。
「楪さん、普段からそんなに沢山食べるんですか?」
「そーだよ。だって、お腹空くし、美味しいもの食べると気持ちもアガるよ!」
「それでその体型は羨ましいです…。」
目の前で、おいしそうにモリモリとご飯を食べる楪さんのお腹は薄く、先程食べた食事はどこに仕舞われているのか疑問を抱きたくなる。
「それに、私みたいな霊媒体質はよくお腹空くのよ〜。みっちゃんは、お腹すかないの?」
「?霊媒体質だとお腹空くんですか…?」
私の疑問にコーヒーを啜っていた久我さんが答えてくれた。
「霊媒体質は、霊に取り憑かれやすい体質だ。それ故に霊が取り憑いてる人間のエネルギーを取ってしまうんだ。」
「そー言うこと!みっちゃんなんかは、私以上に霊媒体質だからお腹すくと思うんだけど…それだけでいいの?」
そういう楪さんが指差すのは私が食べていたトーストとサラダのセットだ。
「私は…今はこれだけで大丈夫です。」
嘘。
本当はもっと食べたい。でも、沢山食べることは恥だ。と母親に言われてから、食べることへの罪悪感や羞恥心が無意識に出てしまう。
「そっか…。なら、みっちゃんの分まで私が食べちゃお!!すみませぇん!ハンバーグ御膳お願いします!」
何か言いたげな様子だった楪さんは、何も言わずに元気よく店員さんに新たなメニューを注文した。
「だぁかぁらぁ!!ゆずちゃんは遠慮を覚えなさいよ!」
その様子を見てツッコむ明さん。
「あのー…すみません。香坂さんですか?」
賑やかしいテーブルにふと、後ろから男性の声でそう尋ねる声が聞こえた。
振り向くとそこにメガネをかけた三十代くらいの知的な男性が立っていた。
「あ!本条さん!遠路はるばるお越しくださってありがとうございます!」
男性を見た楪さんが立ち上がりそう言った。
ちなみに香坂というのは楪さんの苗字だ。
「いえ。あの…こちらの方々は…?」
「私の知り合いのその手の専門家です。信頼できる方達なので大丈夫です!」
「そうなんですね。初めまして。本条です。」
本条さんは恭しく頭を下げて挨拶をしてくれた。
「ご紹介に預かりました。私、久我相談所所長の土御門と申します。こちらが助手の久我と雪平です。」
明さんも楪さんに続いて席から立ち、本条さんに名刺を渡しながら私たちの分の紹介をしてくれた。
それに合わせて、私と久我さんも席から立ち上がり、軽く頭を下げた。
そうして、一通り挨拶を終えて、皆それぞれ席に着いた。
「本条さんも何か頼まれます?」
「あ、いえ…とりあえず水だけで…。」
明さんの勧めを断った本条さんの顔色は青白く、覇気が感じられない。
「だいぶ…と言った様子ですね…。」
明さんも同じ様に思ったのだろう。本条さんの体調について指摘した。
「はい…。本が出せないとなると…生活が…。」
「そうですよね…。」
小説家として生計を立ててるのだから、本が出せれないと言うのは私が思っている以上に死活問題なんだと理解した。
「あの、この現象について、何かわかったことがありましたか?」
切羽詰まった様子で問いかける本条さん。
「単刀直入に申しますと、原因と解決方法は分かりました。」
「本当ですか!!どうすれば…!?」
明さんがそう言うと、青白い顔に一瞬生気が戻ったような、希望を見出したかのような表情を浮かべ本条さんは詰め寄った。
「本条さん、桑島、という人物に心当たりはありませんか…?」
楪さんがいつもの明るい雰囲気とは打って変わり、真剣な声色で本条さんに質問した。
その質問に本条さんは不思議そうあ表情を浮かべた。
「桑島ですか。彼は、私の高校の時の友人です…。」
「今、桑島さんはどちらに…?」
「…恥ずかしながら、高校の時に喧嘩をして以来、連絡はとっていません。今の彼の状況はおろか、居場所すら…。彼が何か…??」
答えていくうちに、本条さんがじわりじわりと冷や汗をかいていくのが見えた。
「本条さん。あなたの本、微弱ですが呪われているんです。その呪いもあなたの作品に熱心な方のみに発動する様です。その呪いをかけた人物が…。」
「桑島…と言うことですか…。」
明さんの説明に絶望したような、しかし何処か納得したかのようにガクッと体の力が抜ける本条さん。
「その様子だと、桑島さんがあなたに対して呪いをかける理由に心当たりがあるようで…。」
「はい…。」
本条さんはぽつりぽつりと語り出した。
「先程も申した通り、私と桑島は高校時代の友人で、お互い本が好きと言うことで同じ文学部に所属してました。
仲違いしたのは高校三年生の夏頃です。本を読むのもが好きな私達でしたが、自分で創作するのも同じくらいに好きで、高校最後の思い出作りに自分が作った小説をコンテストに応募したんです。勿論、なんの経験も経歴もない素人の高校生が選ばれるはずもなく、二人とも落選してしまいました。」
そう言い、恥ずかしそうに頭を掻き話を続ける本条さん。
「私も桑島もその後の進路は決まっていたので、コンテスト自体は私達の青春の思い出になりなした。しかし…、問題はその後に起きたのです。
応募したコンテストの審査員の一人が、とある出版社の方でして、私が応募した小説に目を付けてくださって直々に話がしたいと連絡が来たんです。」
「それって、もしかして…。」
「はい。今、お世話になってる出版社の方です。しかし、桑島の方にその話はいかなかったんです。当時の私は何を思ってか、出版社の方と会う日に桑島もも自分の小説を売り込むように、もしかしたら出版社の方直々に何かアドバイスを貰えるかも?!と誘ったんです。今思うと非常識と言われても仕方がありませんが、私から見た当時の桑島の小説はとても素晴らしいものでした。再びこの小説が評価される機会が来た!それがその時だと思ったんです。しかしその気持ちが彼のプライドを酷く傷つけてしまったんです。」
「成程…。」
「散々詰られました。喧嘩慣れしてないのに取っ組み合いにもなりました。それもそうでしょう。彼から見たら私の言動は憐れみにしか見えませんからね。そんな簡単な事に気がついたのはだいぶ経ってからになってしまいましたけどね…。」
本条さんから聞いた過去の話はまるであの本の内容に似ていた。
「すみません。もしかしてなんですが、デビュー作の『懺悔』って…。」
「はい。私が桑島への懺悔の気持ちを元にした作品です。当時の担当編集者からのウケが悪くて、今となっては絶版となってしまいましたが…そうですか。読んでくださった方がこんなところにいたとは……。」
そう言う本条さんの表情は何処かほっとしたような、顔して言った。
17話読了ありがとうございました。
18話につづきます。
ちなみ本条が過去のことを話してる間に、楪さんはハンバーグ御膳をハムスターの様に食べてました。
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