16話生霊の章其の伍
お待たせ致しました。
暑さにより体調を崩しており更新が遅れました。
みなさんも暑さには気をつけてください。
「ところで、俺があげた護符はどうなった?」
久我さんに聞かれ護符の存在を思い出す。
エツさんの時に貰った護符同様にお守りの様な形をしていたので首から下げていた。
が取出そうとした時に違和感を感じた。
異様に軽く感じたのだ。
「久我さん、護符がなんか変です…。」
「…見せてくれないか?」
そう言って神妙な顔して護符を受け取り、中を覗く。
「!!…。」
何か見てはいけない物を見たかの様な、驚いたような表情を浮かべる。
「ん?環?」
その様子を見た明さんも声をかけるが、久我さんは一枚の紙を自分の前に敷き、護符を逆さにする。
すると、中からサラサラと灰が出てきたのだ。
灰。燃える。火。
「あ、あの時…。」
「んお?何か思い出した?」
「はい。実は…。」
私は、思い出した範囲での昨晩見た夢を二人に話した。
「成程〜。環。ちなみにこれ、何番の護符?」
「三十一番。」
「三十一かぁ〜。まぁ、完全に身代わりとしてって感じだね。」
二人は護符の残骸をみて話した。
「その番号は何ですか?」
「ん?あぁ。これの事ね。」
明さんは灰になった護符を指さし言った。
「環が作った護符にはそれぞれ番号を振って管理してんの。ほら、みっちゃんも見た通り、環の護符って普通のお守りにしては力があるから、ちゃんと管理しないとだから〜。」
「……。」
そうヘラっと笑う明さん。その対象に浮かない顔の久我さんがやけに目についた。
「ちなみに三十一番の護符は守りの護符で、効果は気休め程度だ。」
「だから、この護符は完全にみっちゃんの身代わりになった訳。」
南無南無。と燃えかすと化した護符に手を合わせる明さん。
「…とりあえず、次の護符を用意するから待っててくれ。」
「環ぃー。それなら…。」
二人は私用の護符の準備に取り掛かってしまって、完全に手持ち無沙汰になってしまった。
待ってる間に私は、押し付けられた方の本を読むことにした。
あの男性が去り際に「君なら正しく使える」と言ってたのだから何かの手掛かりになるかも知れない。
私はそう思い、二人の邪魔にならないように部屋の隅で本を読み始めた。
男性から渡された本のタイトルは「懺悔」。
そのタイトル通り、本の内容は主人公が友人に対する後悔を物語にした本だ。
一ページ、一ページ。ページを捲る。
その度に視界にノイズが走る。
「(あれ?…疲れてるのかな…?意識が…。)」
次の瞬間、私の意識は途切れる。
次の瞬間。私は見知らぬ軒下のベンチに座ってにいた。
目の前に広がる光景は雨が降って、薄暗く、山と田んぼ深緑の田園風景が広がっていた。
軒下と思っていたいた場所だが、よく見ると木造の古い作りのバス停だった。あちこち錆びた鉄製の時刻表。扉も窓もない、申し訳程度の薄い板の壁がコの字状に中と外界を仕切っていた。
自分の置かれている状況を把握する為に辺りを見まわした。
私の座っていた場所がベンチの端の方だったのだが、その反対側にもう一人座っていた。
年齢はおそらく自分と同じくらいの年齢の男の子だろう。身長はそこそこ、筋肉があまり無さそうな細い腕が、白い半袖のワイシャツから出ていおり、腿に肘を付くような前傾姿勢で何やら小説を読んでいた。
「すみません…。」
私は男の子に話を聞こうと声をかけるが、男の子は小説に夢中といった感じで私の存在に気づいていなかった。
「あの…。」
不躾かと思ったが、私は男の子の肩に触れようとした。がそれはできなかった。
するっと、男の子の体を通り抜けてしまったのだ。
その現象に驚く私を他所に男の子は小説に夢中と言った様子だった。
しかし、その小説を読む手がぴたりと止まった。
「(?)」
一度栞を挟み、本を閉じて制服のポッケから二つ折りの携帯を取り出し、時間と壁紙のみが映された画面を見てため息をついた。
「(どうしたんだろう…?)」
今のこの状況はきっとこの男の子が関係してると思い、私はそのまま男の子のそばに居た。
男の子のことをよくよく観察すると、シャツの胸ポケットに「本条」と刺繍されていたのが分かった。
「(もしかして、この男の子って本条さん!?)」
今回の依頼主の本条さんには直接会った事はない。
ただ、本条さんの本を調べた際に、検索結果の画像に大人の本条さんの顔写真が出てきたのを覚えていた。
顔写真と比べると、目の前の彼はかなり幼いが、画像で見た本条さんの面影があった。
暫くすると、遠くの方からエンジン音が聞こえてくる。定刻のバスが来たのだ。
男の子もとい、本条さんは少し焦った様な表情を浮かべ、立ち上がり、もう一度携帯を開くが、画面は先程のまんまだった。
そうこうしている内にバスはバス停の位置に停車した。
ドアが開き、あとは乗るだけだが、本条さんは乗らなかった。
ずっと、バスの通ってきた道の先を、苦虫噛み潰したような顔で眺めていた。
「ねぇ!君!乗らないの!?」
本条さんがが乗らないことに痺れを切らしたバスの運転手さんが大声で聞いてきた。
「え!?あ…乗ります!!」
一瞬迷った様子を見せたが、本条さんはバスに乗った。
私もその後をついていく様にバスに乗り込んだ。姿が見えないし、、触ったものが通り抜ける今の私はきっと無賃乗車には該当しないはず。
バスに乗り込んだ本条さんは後ろ側にある、二人掛けの席の窓側に座った。
私もとりあえずと思い、本条さんの隣の席が空いていたのでそこに座った。
本条さんは窓の外を見ていた。視線の先は先程の通りだ。
「……でだよ…。」
聞こえるか聞こえないかの声で本条さんは何か呟いた。
もう一度聞き取ろうと、私は耳を澄ます。
「何で来ないんだよ…桑島…!」
そう本条さんは、悔しそうなつぶやきと一緒に誰かの名前をポロリと出した。
その瞬間、私の意識がまたノイズがかかり始めた。
「(嘘…ここで??)」
まだ、本条さんのこれからの行先を知らないまま、ここで意識を失うのは惜しい。
そう思う私の意思とは裏腹に、意識が遠のくのがわかった。
「…!!…!!」
しかし、遠のくのと比例して誰かの声が聞こえるような気がした。
「…ら!…き平!!雪平!!」
聞き覚えのある声で私を呼んでるのが分かった。この声は…。
「久我さん…?」
そう言っていつの間にか閉じていた思い瞼を開くと、少し焦った様な顔の久我さんと、その後ろに煙草をふかし興味深そうに私を見る明さんがいた。
「やっと起きたか…。」
「みっちゃん、おはよ〜。」
私が覚醒した事を確認した二人。
久我さんはやや呆れた様子で、明さんは何ともなかったかの様ににこやかに挨拶をしてくれた。
「君の護符を用意している間に、気づいたら寝ていたものだから最初はそっとしておいたんだ。しかし、おじさんが…。」
「なぁ〜んか気になっちゃって、みっちゃんに声かけて起こそうとしたんだけど、全然起きなかったんだよね。昨日のこともあったし、心配ににって必死に起こしたんだよ〜…環が。」
そう、ニヤついた顔で言う明さんの鳩尾辺りを思いっきり、肘で打ち込む久我さん。
グエッと潰れた蛙の様な声を出す明さんたちを見て、少なからず二人に心配をかけてしまった事に申し訳なくなってしまう。
「心配かけてすみません…。あの、明さん…。」
「ん?」
「これから、本条さんに会う予定はありますか?」
「…なんか見たね?」
私は頷いて答えた。
「会う予定はあるよ。そもそも実際に本人に合わないと話が進まない部分もあるからね。」
そういう明さんに私はお願いをした。
「その、本条さんに会う時、私も着いて行ってもいいですか?」
「ん?いいよ〜?今後のここでの仕事の流れの見学も含めておいで〜。」
明さんは思いの外、快く了承してくれた。
みっちゃんが来るなら土日だね〜と予定の調整もしてくれる明さん。
「体の方は大丈なのか…?」
心配そうに声をかけてくれる久我さん。
「大丈夫ですよ!」
「そうか。…昨日の今日だ。無理しないでくれ。」
今までの久我さんらしからぬ心配の仕方だった。
「はい。お気遣い、ありがとうございます。」
でも、その不器用な優しさが今は嬉しかったりした。
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