15話生霊の章其の肆
今回は新キャラ登場します。
翌日、私は学校帰りにそのまま相談所まで来いと言われて、学校の最寄駅から乗り換え込みで一時間しないぐらいに相談所の最寄駅に着いた。
駅構内は様々なお店が入っており、その中にある書店に目がいった。
「(そう言えば、本条さんの本って他にもあったりするのかな?)」
そう思うと途端に気になり始め、私は書店に入った。
駅の書店だけあって品数もそこまでないが、最近人気の作家の本やら、有名な雑誌などは一通り置かれていた。
私は書籍のコーナーにて本条さんの名前を探すとすぐに見つかった。
あった!と思い手を伸ばすと、私と同じように手を伸ばす人物がいた。
「あ、すみません!」
「いえ、こちらこそ。」
そこには二十代そこらで長身の黒髪垂れ目で、ジャケットスタイルの男性がいた。
初対面の男性の見た目を決め付けるのは非常に失礼なのかもしれないが、目の前にいる男性は男性と言うにはあまりにも美形だった。
顔の造形自体は男性ではあるが、どこか女性的でもあり、髪型も女性らしい髪型にすれば女性と見間違いそうな外見だった。
「あの…何か?」
男性は気恥ずかしそうに頬を掻いてた。
「あ、すみません!ジロジロと!」
初対面の相手に不躾すぎた。反省。
「いえ、お気になさらずに。…本条聡太、好きなんですか?」
男性は、不躾な私への態度を咎めることなく柔和な笑顔を浮かべ訪ねてくる。
「いえ、好きってほどでも…ただ最近読んだ本条さんの本が印象に残ってたので、他にないかなぁ〜って思って探していたんです。」
「そうだったんですね。…差し出がましいのですが、もし良かったらこれ読んでみてください。」
そう言って男性は肩に掛けていたバックから一冊の本を出した。
それは本条さんの本で『懺悔』というタイトルの本だった。
「僕も本条聡太の本が好きでよく読んでるんです。この本、彼のデビュー作でものすごく面白いのでどうぞ!」
そう笑顔で本を差し出す、と言うか押し付けに近い形で男性から本を受け取った。
「え?え?急にそんな…。」
困惑してる私を他所に男性は柔和な笑顔を浮かべていた。
「では。僕、この後急ぐので。」
男性はそう言いその場をそそくさと去っていった。その時に微かに聞こえた。
「君ならきっとその本を正しく使えるよ。」
そう聞こえた気がして、急いで男性の後を追いかけたがもうその姿は見えなかった。
「君はもう少し、警戒心というものを持ったらどうなんだい?」
相談所について、先程の出来事を久我さんに話したら盛大なため息をつかれた。
「そう言っても。ほぼ押し付けに近かったんですから。」
私の言い分など右から左の様子でソファーに座り、書類と睨めっこしていた。
「それで、君はあの本を読んで夢を見たと言う事だが、具体的な内容は覚えてないのか?」
「はい…。夢をみたという事は覚えているんですが、薄ぼんやりとしか…。」
何か考えるようにしてまたテーブルに広げられた資料を睨む久我さん。
「あの…さっきから何の資料を?」
恐る恐る尋ねてみる。
「いや、例の夢を見た人達の情報だ。地域、年齢、性別もバラバラ。強いて言うならこの人達の共通点とするなら本条の作品のファンと言う事だが…。」
そう言う久我さんは何か腑に落ちない模様。
「…久我さんが何に悩んでるのかは分かりませんが、この資料、よく集まりましたね。」
「あぁ…それは…。」
「その資料は俺が集めたんだぜ?」
久我さんの声を遮る様声がその場に響いた。
声のする方を見ると、細身の髭を生やし、タバコを咥えた、野生味の中にどこか上品さのある中年男性が相談所内にいた。
「君が雪平満月ちゃんだね?」
「はい。」
「ごめんごめん〜。おじちゃん、ここの相談所の所長の土御門 明って言います。えっーと、君の雇い主で、そこの仏頂面の叔父です〜。」
そう聞いて私はことの重大さに気づき挨拶した。
「は、初めまして!雪平満月です!四月から高校三年です。久我さんの紹介で、こちらで働かせていただく事になりました!よ、よろしくお願いします!」
自分の勤め先の社長にあたる人物にまだ挨拶してない事に気づいて慌てて頭を下げた。
「お、良い子じゃん〜。環ぃ、大切にしろよ〜?」
「楪さんもそうだけど、叔父さんも勘違いしないで貰ってもいいか?彼女とはビジネスパートナーであって、そんな惚れた腫れたの関係じゃないよ。」
若干うざそうにして受け流す久我さん。
「まぁまぁ。神嫁なんて、大変な役を背負ってるんだから優しくしてやんなさいっての。ところで……。」
明さんは私のバックを指さして。
「みっちゃん、とんでもない物持ってんね。ちょっと叔父さんに見せてご覧よ。」
「!?」
そう言われ、私には心当たりが一つしかなかった。
私は言われるがまま本条さんの本を取り出した。
「あ〜これだねぇ。」
そう言って、咥えていたタバコを一息に吸い、煙を吐いた。吸い殻はポケットから取り出した携帯灰皿に捨てた。
そして、私から本を受け取り、いろんな角度で本を見たり、パラパラページをめくったりしながら、久我さんの向かいのソファーにどかっと座る。
「叔父さん、何か分かる…?」
久我さんは明さんに尋ねるが、明さんはお手上げと言った形で両手を上げた。
「ん〜や?さっぱり。でも、呪術の類には間違いが無いんだけどね〜。色んなものが薄すぎる。」
「薄い?」
明さんは、胸ポッケに入ってるタバコを取り出し、ライターで火をつける。
「そ、今この場で出来るのは、この本に掛かってる呪術を解くとこしかできない。」
トンと骨ばった指で本を指さしそういう。
「薄いって言うのは?」
久我さんは真剣な声色で明さんに聞いた。
「これ、ゆずちゃんとか、精願くんには効かなかったんでしょ?でも、そこのみっちゃんには効いた。」
「感受性の問題…??」
そう溢す久我さん。
「そ。感受性って言っても、ただの感受性じゃない。霊的、呪術的感受性だ。みっちゃんは神嫁っていう、超ウルトラレア、ガチャでいうならSSSRの霊力の持ち主だ。だから、本のごく僅かな呪いでも感知した。」
そう言いタバコを吸いながら明さんは説明してくれた。
「だとしたら、霊感のない一般人が呪いを感知して、発現するのは不可能だ。」
久我さんはそういい、先程から睨めっこしていた書類を明さんに見せる。
「おー。目通してくれた?なんか、分かった?」
「やっぱり、見てないんだな。…住んでる地域、性別、年齢はバラバラだが、どの人も本条のファンと言うことが分かった。」
「それだ。」
ふぅーっと煙を吐き出した明さんは続けた。
「要は呪いが発現した人は、本条の本を何度も、何冊も読んでいる。だから霊感がなくても呪いが発現した。」
薄いから被害が出なかったみたいだけどな〜。とケラケラと笑いそう言った。
「…まるで薬みたいですね…。」
私は一連の話を聞いてそう呟いた。
「みっちゃん、するどーい!まぁ、今回のは呪いじゃなくて、呪いだから、薬じゃなくて毒になるのか。遅効性の毒。だから、体内に蓄積されて、発症した。そう言う感じだね。」
「だとしたら、この呪いをかけた人間は三流以下、素人の仕業だな。」
「どう言うことですか?」
「呪い、呪術にも種類があって、大きな害が出ない微毒なものから、掛かれば即死レベルの猛毒な呪いと様々ある。使用用途によって使い分けるんだが、叔父さんの見立てが確かなら、こんな無毒に近い様な、何度も同じ作者の本を読まないと発動しないよなコスパ悪い呪いは普通使わない。
それに、『人を呪わば穴二つ』。呪いをかけるにも何かしらの代償が絶対あるんだよ。」
そう流れる様な説明をした久我さんに明さんは拍手をした。
「流石環!!おじちゃんの自慢の甥っ子だぜぇ〜!!よしよししてやるからこっちおいで〜!!」
そう言って両手広げて久我さんに近づく明さんに、「キモい!!」とキレた顔して、書類の束を明さんの顔に叩きつける。
その様子を見た私は久我さんってこんなに表情豊かなんだ。と感心してしまった。
「いてて…。まぁ、そう言うこと。環の言う通り、この呪いは素人仕事で、何度も呪いを行使してる様に見える。だから、ぶっちゃけ、今回の件、この本の作者より、呪いをかけたやつの方がヤバそうだね〜。」
「素人が下手に呪いを行使するのは危険だ。それを何度もとなると…。」
「最悪死ぬね。」
淡々と言う二人に私は呆気に取られていた。
死ぬって、そなん簡単に…。
何か出来ることは…。
そう思った瞬間私は、もう一冊の本を明さんに見せた。
「明さん。この本にも呪いってありますか?」
私がそう言って取り出した本は先程、見知らぬ男性に押し付けられた本条さん作の本だ。
明さんはキョトンとした顔で、本を見てくれた。
「いや?この本には特に呪術的なものは感じられないよ?どったのこれ?」
「え〜っと。通りすがりの方に貰いました…??」
「うげっ…。みっちゃん。ちょっと不用心すぎない??」
苦笑いしながら本を私に返す明さん。そのそばで、うんうんと頷く久我さん。
だから、押し付けられたんだっての!
15話読了ありがとうございます。
16話に続きます。
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