12話 生霊の章 其の壱
お待たせ致しました。
2章が書き上がりました。
是非楽しんでいってください。
「はい。本条です。はい。また…ですか…。」
本条聡太は自分の想起したとこを文字として世の中に出すのが仕事。
この小説家として自分の生活を成り立たせるのに数々の苦労を乗り越えて来た。
しかし、最近奇妙なことが立て続けに起こる。
己の書いた小説を読んだ者が奇妙な夢を見ると言う話が次々と報告が上がって来てるのだ。
最初は読者が数名。次に担当。と。
まるで何かが自分に近づいて来てるんじゃないかと。
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久我さんと私はエツさんの供養の為に電車に揺られること三十分。
昔ながらの民家や商店が立ち並ぶ小さな町にたどり着いた。
目的の場所は民家と民家の間に細い裏道があり、舗装された坂と階段を登った先にあった。
そこは小さな門構えのお寺ではあるが、細かいところまできちんと人の手が行き届いている綺麗なお寺であった。
「こんなところにお寺が…。」
「俺たちが通って来たのは寺の裏手だ。正面はちゃんと別にある。」
そう言われて下に続く長い階段がある、正門と思われる場所に案内される。
「なんで、裏門から?」
「裏門の方が駅から近いんだよ。」
そう面倒くさそう言う久我さん。
きっと久我さん、この階段登りたくなかったんだろうな。
「あのなぁー。ここは公共の場でとやかくは言わないけど、うちの家でもあるの忘れんなよ?」
そう言って本堂の方から出て来たのは作務衣を来たネイルとメイクとピアスバチバチ、グレーのハイトーンカラーの髪色をしたギャルだった。
「まぢ、たまちゃん無作法すぎん?」
「無作法に手足はやしたような住職が何言ってんだ。」
「え!?住職!?」
あまりの驚きの事実に声が出た。
「ここの住職の楪さんだ。」
「よろよろ〜!気軽にゆうちゃんって呼んでね〜!」
「雪平満月です。よろしくお願いします…。」
この明るいノリはまさにギャル…!
え?ギャルって、お坊さんになれるの???
ポカーンと呆気に取られてしまう私。
「楪さんはこう見えて結構優秀な住職で祓い屋なんだよ。」
「結構は余計じゃね?でもまぁ、うち、まぢ天才ですから…。」
そう言って顎にピースサインを作り、ドヤ顔する楪さん。
「でもこんなんだから、普段の住職としての仕事はこの人の父親と、この人の旦那がしてる。」
「旦那さん…!?」
このギャルの住職の旦那さんとなるときっと厳つい…。
「あ!ショーたんが帰ってきた!ショーたん!!たまちゃん来てるよ!!」
そう言って正門の方に大きく手を振る楪さん。
楪さんの手の振る先を見る。
「ただいま。ゆうちゃん。」
そう言って階段を登ってくるのは、30前半くらいの頭を綺麗に丸めた如何も優しそうなお坊さんだった。
見るからにどこにでもいそうなお坊さんなものだたから驚きが隠せなかった。
「紹介するね!うちのダーリンのショーたん。」
「どうも。ここ、香禅寺の副住職の精願といいます。妻のゆうちゃんがお世話になっております。」
精願さんの腕に抱きつく楪さんにそれを嬉しそうにする精願さん。
立場はどうであれ、おしどり夫婦そのものだった。
「初めまして。雪平満月です。」
「精願さん、ちょっと、楪さんを好き勝手しすぎなのだは?」
「何を言う環くん。神仏もギャルも人の心を救うのです。ゆうちゃんはギャルと住職を掛け合わせた最も尊い女性なのですよ。」
この人は真面目な顔して何を言ってるんだ?
「ヤダァ〜!!ショーたんたら!!」
精願さんの言ったことに恥ずかしそうにバシバシと背中を叩く楪さん。
「精願さん。普段は真面目な坊さんだけど、ギャルが好きなんだよ。」
横からぼそっと解説してくれる久我さん。
この場のメンツのキャラの濃さに若干の胸焼けを起こしていた。
「楪さん。本題なんですが、こちらをお願いしたいです。」
久我さんはそういい、カバンの中からエツさんが入った人形を渡す。
「どれどれ〜。…おけまる!ちょっぱやで準備してくるから、本堂の方でスタンバッて〜。」
そう言って、颯爽と何かを準備しに行ってしまった。
「さて、私が本堂まで案内しようか。」
そう言って精願さんは私たちを本堂の方に案内をしてくれた。
本堂は見た目に反して中が広く見えて、部屋中央には壮大な仏像と、周りには仏教由来の豪奢な装飾があった。
親戚とかの葬式とかでお寺に行く機会はあったりするが、こういった場所の神聖さには身が引き締まる思いがした。
「おまた〜。んじゃ、ちゃちゃっとやっちゃいましょうか。」
そう言って本堂に入ってきた楪さんはお坊さんらしい袈裟と片手には数珠、ネイルやメイクはそのままだが、ハイトーンのグレーの長い髪はシンプルに頸にの辺りでまとめられていた。
本堂中央の座布団に座るように指示されたあと、すぐに楪さんのお経が始まった。
「〜〜〜〜。〜〜〜〜。」
そのお経がベテランの住職さんにも負けない伸びのある美しいお経だった。
楪さんがお経を唱えてる最中は、私たちはその後ろで手を合わせ、エツさんの成仏を願った。
数十分の経読みが終わり、本堂の中はお線香の白檀のいい香りが漂っていた。
本堂から移動し、廊下挟んで隣の応接間に私たちは通された。
何かの後処理していたのだろう。遅れて楪さんも応接間に入ってきた。
「なんとか、あの女の人、送りとどけておいたよ〜。」
その一言でエツさんが無事に成仏出来たと思うと心の底から安心した。
全てを終えて、太陽のような笑顔を浮かべる楪さんの声は少し枯れていた。
「ゆうちゃん。お疲れ様。はい。喉にいいお茶。」
そう言って、作務衣姿の精願さんは湯気が立ってるお茶を楪さんに渡した。
「や〜ん。さすがショーたん!!そう言う優しいところがまぢらぶ!」
楪さんはゆっくりとそのお茶を飲む。
「君たちも疲れただろう。一息どうぞ。」
そう言って精願さんは、私たちにもお茶とお茶とお菓子を出してくれた。
「ありがとうございます。」
お礼を言い、私は出されたお茶を飲み一息ついた。
「ねぇねぇ!みっちゃんの力、まぢパないね!!うち、お経読んでる時、力がこう、ブワァぁぁ!!って流れてきてブチあがっちゃったよ!」
みっちゃんって、私か。
「そ、そうなんですか?」
「そうだよ!さすが神さまの好きピに選ばれたことなだけはあるわ〜。」
そう言って出されたお菓子に手を伸ばす楪さん。
あれ?私、そんな話したっけ?
困惑しながらお茶を啜る久我さんの方を見る。
「楪さんは俺なんかより、霊力ある実力者だからな。そのぐらいは一目見れば分かる。」
そ、そうなんだ…。
久我さんのその説明を聞いた楪さんは得意げな顔で私を見ていた。
「にしても、たまちゃんやるね〜。神さまの好きぴを彼女にするなんて〜。あきオジもびっくりだべ〜。」
楪さんの言葉に啜ってたお茶を吹き出す久我さん。
「あきオジ?」
誰だ?
「…ごほっ…!俺の叔父さん。前に話したあの事務所の責任者。というか、楪さん。変なこと言わないで下さいよ。彼女は霊力がない俺の補佐で、決してそう言う関係では…。」
「まあまたぁ〜。照れなくても良いんだぜぇ〜?こんな可愛い子をそばに置いて、なぁんにも思わない訳ないでしょ〜!」
突然の楪さんからの褒め言葉に顔が熱くなるのがわかった。
「でも、神さまから好かれるって、超・超・超ーーー大変だから、いつでもうちにおいでね〜。このお姉様がいつでも話聞いてあげるからさ!」
「楪さん…。」
そう言って、私の頭に手を伸ばし優しく撫でてくれる楪さん。
その手の温かさにじんわり涙が浮かんだ。
「あ、そうだ。ゆうちゃん、あの話…。」
「あの…??あぁ思い出した!」
精願さんの言葉に、何かを思い出した楪さん。
「ちょっと、たまちゃんとあきオジに協力してほしいことがあるんだよね〜。」
「この前、うちに来た人で作家さんなんだけど…最近霊障に悩まされいるみたいなんだ。」
楪さんと精願さんからの協力依頼の要請。
また、新たな依頼が始まる。
12話読了ありがとうございました。
13話へ続きます。




