閑話 美樹視点:初等科・中等部・高等部
4月の図書館。
華族子弟が集う初等科。埃っぽい棚の間。
小さな背中を見つけた。
本に埋もれてる。星座図鑑を手に。ページをめくる。
まるで星空に手を伸ばすみたい。
古い木の匂い。静寂。窓から光。
彼の髪が、淡く染まる。
真剣な瞳。埃の粒子がキラキラ。
床に響く、かすかな足音。
なぜか——
目の奥が、じんわりと熱くなった。
孤独な星。私を呼んでる?
胸に、小さな波紋。ぽちゃん。
「ねぇ、その本好きなの?」
声をかけた。
彼が顔を上げる。驚いたみたい。
埃が舞う。光の中。小さな手が本を握りしめる。
真剣な表情。私を見つめる。
1歳年下。なのに——
心臓が、トクンと跳ねた。
「……まぁ、好きかな」
控えめな返事。
もっと興味が湧く。男の子でこんなに熱心に本を——
そっと近づく。隣に座る。
古い木の椅子。ギシッと軋む。
紙の匂い。鼻がくすぐったい。
「私、一条院美樹」
名乗る。
「君は上杉義之君でしょ」
なぜか知ってた。不思議。
「声を掛けたの迷惑だった?」
「いえ、声を掛けてくださって嬉しいです」
彼の瞳が揺れる。
その目に宿る何か——
孤独。遠い光を求める切実さ。
息が、詰まった。
「星座って、遠いよね」
言ってみる。
「でも、いつか届くかもしれない」
彼が呟く。
心が、ドクンと震えた。
「届くなら、私が手伝うよ」
笑った。なぜか。
彼は何も言わない。でも——
顔が、ほのかに赤い。
あの瞬間。
私の中で、何かが動き出した。
小さな指が本の縁をなぞる。その仕草。
胸が、ぎゅっと締まった。
***
その日から。
義之君と言葉を交わすように。
図書館の静かな隅。星座図鑑を手に持つ彼。
瞳に宿る孤独。寄り添いたい。強く。
ある日。
「この世界が現実なのか、時々わからなくなるんです」
彼が漏らす。
私は——
手を握った。彼の手を。
「これが現実じゃないって思う?」
囁く。
彼の手が、握り返す。強く。
温もり。顔が、熱くなる。
「……現実だ」
彼が呟く。
安堵。胸に広がる。
手を離さない。笑う。
その瞬間——
心の奥で『カチリ』。
何かが、鳴った。
運命? そんなの信じてなかったのに。
掌から伝わる熱。胸に染み込む。
心が、静かに波打つ。
小さな指先に、未来を感じた。
なぜ? 分からない。でも——
図書館だけじゃない。
校庭。放課後。時間が広がる。
芝生に座る。星座の話。
風に揺れる髪。押さえながら聞く。
春の風。頬を撫でる。笑い声が遠くで。
私が彼を支えてる?
違う。逆かも。
彼の真剣さ。素直さ。触れるたび——
私が影響されてる。
小さな石を手に。
「これ、星みたいだね」
彼が呟く。
笑う。
「そうだね」
頷く。
彼の瞳が遠くを見る時。
私の心も、同じ星を追いかける。
芝生の感触。掌に。
彼の声が、風に溶ける。
***
中等部。
生徒会で一緒に。
ある日。書類を手に走る彼。
転ぶ。紙が散らばる。廊下に。
埃が舞う。
笑いながら拾う。
「義之君、慌てすぎだよ」
「間に合わせなきゃ…」
彼が呟く。汗だく。立ち上がる。
息が、詰まった。
額に汗。光ってる。夕陽が廊下を赤く。
彼の努力。誰かのため。必死。
星を掴むみたい。輝いてる。
背中を見つめる。
共に歩む。決意を固める。
汗が紙に滲む。一滴に、情熱を感じる。
肩に手を置く。
「大丈夫だよ」
囁く。
彼の努力を見るたび——
心臓が、小さく跳ねる。
才能じゃない。ただ必死。
でも、それが——
いや、だからこそ。美しい。
ある夜。徹夜で企画書。
「見てくれる?」
差し出される。
薄暗い部屋。紙とインクの匂い。
「君って、本当にすごいね」
呟く。
照れ笑い。私も負けてられない。
窓の外。星が瞬く。
彼の瞳が、光を映す。
隣に座る。企画書に目を走らせる。
紙を握る音。静寂に響く。
***
高等部。
いつからだろう。義之君が変わり始めたのは。
長い廊下。窓から陽光。彼の背を照らす。
AIの設計図を手に。
息を、呑んだ。
「これ、戦闘機の動きを予測するんだ」
彼が言う。
「君なら未来を変えられるよ」
答える。
でも——
本当にできるのか? 一瞬だけ。不安。
彼の瞳が輝く。胸が、熱くなる。
設計図の線。夢を形に。
廊下に響く靴音。彼の情熱を際立たせる。
隣に立つ。彼の夢に触れる。
舞踏会。
特別な記憶。
彼と踊る瞬間。手の温もり。
震えた。私が。
シャンデリアの光。彼の瞳を照らす。
楽団の調べ。心を満たす。
絨毯の感触。足裏に。
彼の手が、腰に——
ドキドキドキドキ。
決意を固める。
父に切り出す。
「お父様、義之君との婚約を真剣に考えていただけないかしら?」
父がティーカップを置く。
「本気か、美樹?」
目が、潤む。勝手に。
「彼の夢が私の——」
違う。
「私自身の夢でもあるんです」
父が呟く。
「一条院家の未来を託すなら、彼か…」
静かに頷く。
想いを伝えられる。その時が来た。
紅茶の香り。部屋に漂う。
父の瞳に、静かな決意。
屋敷での面談後。
婚約の話。義之君に。
最初、動揺してた。当然。
でも——
「ずっと義之君を好きだった」
告白した。
彼も、自分の想いを自覚。
肩に触れた指。微かに震える。
未来が怖くない? 嘘。怖い。
でも——
「初等科のあの時から」
囁く。
「君の孤独が私を呼んだ気がしてた」
彼が答える。
「俺もずっと好きでした」
真剣な声。
胸が、幸福感で満たされる。
いっぱい。溢れそう。
義之君と出会ったあの瞬間。
私は変わった。
この絆が、私を強くする。
いつか彼と一緒に。
未来を切り開くために。
絶対に。
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