頑張れ!やれやれ系主人公!
後半の描写でBANされないかだけが心配です。
転生した。
剣と魔法のあるファンタジー世界に転生した。
オギャーと生まれて17年。
ブドウ畑と牧場が広がる田舎でのびのび育った僕は、地方の魔法学校に入学し次席で卒業。今は冒険者として一番大きい街、帝都で活動中だ。
年の近い6人でパーティーを組んでいるが、期待の若手パーティーとして名を挙げている最中である。
僕は転生者であることを誰かに明かしたことはないし明かすつもりもない。
しかし前世でライトノベルを嗜んだ者としては、冒険者となって魔法で無双したいと思うのは必然!
僕は魔法学校で勉強したことをフル活用し、パーティーに貢献している。
…まあ僕は攻撃魔法を使う典型的な魔法使いじゃなくて支援寄りなんだけど。
パーティーに別の魔法使いいるし。
―それは置いておいて。
この国には明らかに「お前転生者だろ」という奴がよくいる。
僕のパーティーの剣士がそうだ。
女の子の前で妙にカッコつけ、パーティーメンバーが何かドジをすると、髪をかき上げ「やれやれ。仕方がない奴だな」と言って重い荷物を持ったり、魔物を倒したりしている。
俗に言う“やれやれ系”主人公だ。
パーティーメンバーの女性が、みんな顔が整った可愛い系か美人なのもお約束だ。まさに両手に華。ほぼハーレムパーティーだ。
そんな彼女たちが剣士に好意を向け、剣士はそれに対し表には出さないものの内心デレデレする。そして僕はその光景を目の前で毎度繰り広げられることに胸やけを起こし辟易する―
ということは残念ながら無い。
というか彼が「やれやれ。仕方がない奴だな」と言うタイミングが無い。
というかそもそも彼が彼女らの好感度を稼ぐために手を貸す場面が来ない。
何故なら彼女たちはとても強い。
まず魔法使い。名前はソフィア・ソルシエール。身長150cmの童顔巨乳。
いかにも魔女らしいとんがり帽子にローブを纏った少女である。言動も小動物みたいで非常に愛らしい。
…しかし彼女の放つ魔法は岩を砕き、山を割き、天を穿つ。1000年生きた魔女もびっくりの高威力である。彼女一人で純血の高位竜を倒せる。パーティーにいる意味あるか?
そもそも彼女は伯爵家の3女であり、名門帝立魔法アカデミー(周辺国の中でも1位2位を争うほどの超名門)の首席合格者だ。ついでに優秀な魔法使いに与えられるレインカフ帝国バイオレット勲章を受勲されている。(レインカフ帝国はこの国の名前)
バイオレット勲章を与えられた魔法使いというのは、引く手あまただし、帝国の軍や魔法省、魔法研究所に所属すれば、否。しなくとも、一生食いっぱぐれることなく贅沢な暮らしを送ることが保証される。
なんで冒険者なんかやってるんだこいつ?
つまり、彼女が魔法を放てば、剣士の出番など来る前に敵が倒れる。
やれやれ系主人公の出る幕など無い。かっこつける前にすべてが終わっている。
いつも先に魔物を倒されてしまう剣士は、毎回すみっこでメソメソ泣いている。男として情けないと思うも、同じく異世界に夢見る転生者として気持ちはよくわかる。
が、これだけでは終わらない。
次に魔法剣士。名前はニコル・バトリエ。身長173cmのスレンダーな麗人。
宝塚の男役のような出で立ちで、女性が惚れるカッコいい女性像そのままの人だ。
金髪碧眼だし、常に薔薇を背負っているように見える。めちゃめちゃ眩しい。
彼女は銀と青の鎧を身につけており、鎧と色とデザインが揃いの片手剣を持っている。
(これらは名の知れたドワーフが作ったものらしい。人生の最高傑作なんだとか)
彼女は公爵だか子爵だか忘れたが、とにかく貴族出身の冒険者である。
こちらも超名門のレインカフ貴族学院を卒業しており、将来は帝国軍の第1騎士団(貴族の魔法剣士のみ入れる)か近衛騎士団(身目麗しく礼儀正しい実力者しか入れない)に所属すると噂されていたらしい。
この2つの騎士団は騎士の花形ともいえる部隊で、騎士一人一人にファンクラブがあるくらい市民からの人気も非常に高い。当然、給料もいい。
なぜ歩合制の冒険者になった?
花形部隊に所属するという噂が立つくらいだ。もちろん、彼女の魔法剣士としての腕はピカ一だ。
魔法の盾を操って敵の攻撃を防ぎ、魔法が付与された剣で敵を斬る。
彼女は敵の弱点を突くのが非常に上手く、たいてい一撃で終わる。剣士の彼が敵にトドメを刺すという手間がほとんどいらない。そもそも彼女の動きが早すぎて彼はついていけてない。あまりにも彼が可哀想だ。
しかも魔法も使えるから、手数も多いし範囲攻撃も可能だ。魔法も特殊属性を除いた、基本の5属性すべて使える。文字通り万能型だ。もちろん良い意味で。
あと僕は彼女が人でも魔物でも苦戦している場面を見た記憶がない。
常にニコニコ笑みを絶やさず、舞うように敵を切り裂いている。しかもウインクというファンサ付きだ。街中でやったら死人が出る。
まあ、うちのパーティーには彼女に対して黄色い声をあげる奴なんていないけど。
……剣士は赤面してたな。
まあこの2人だけでも過剰戦力だがまだいる。
斥候のジゼルだ。
身長は148cmと小柄だし胸もそんなにない(両手で包めるくらい)。しかし美しい黒髪をなびかせるクールな女性だ。
彼女は、たいてい忍者のような黒装束かクラシックなメイド服(スカート丈が足首まである)を着ているが、場所や依頼によってはどこにでもいる町娘の格好をしていることがある。
彼女はうちのパーティーにいる回復術師の護衛として入っている。
彼女の出自は詳しく知らないが、貴族や闇ギルドにも伝手がある口ぶりから察するに、代々裏家業を請け負っている一族なのではないかと思われる。たぶん事実を知ったら消される。僕は自分の命が惜しい。
彼女は索敵、偵察、罠の感知および解除、宝箱や扉の鍵の解除、闇討ち、暗殺などなど…とにかく斥候や暗殺者ができそうなことは大体できる。
しかも植物や魔物の素材に詳しい。特に毒。
それだけじゃない。
馬にも乗れるし、たぶん車よりも速く走れる。
魔物や動物の解体ができるし、美味しいご飯も作れる。
審美眼があるし、値切り交渉もできる。
一家に一人欲しい人材だ。
戦闘面においても優秀だ。
たいてい彼女はパーティーの先頭を歩いているのだが、本当にただ歩いているだけ。というか動きが速すぎてそう見える。たぶん罠の解除とか敵への先制攻撃とかを行っているのだろうが、彼女の動きが見えた事がないのでわからない。
彼女が「前に3体」と呟いたと思ったら、ドサッと音がして敵が倒れていた。ということがよくある。当然、敵が倒れた音以外なにも聞こえなかったし、予備動作も見えなかった。怖すぎる。
彼女は罠の解除も、敵への攻撃も、目的地までの道案内も、全て一人でできてしまうため、基本的に、僕たちはただ彼女の後ろを歩いているだけで終わる。
初めて行った迷宮型ダンジョンで、一度も迷わず真っ直ぐ最下層へ進んだときは、流石に引いた。剣士も引いていた。わかるぞその気持ち。
彼女に関して一つ困ることと言えば、気配が薄すぎて後ろに立たれても気がつけないという点だ。
声を掛けられるか、音を立てられるまで物理的に見えない。魔法での捜索もすり抜ける。彼女は魔法が使えないはずなのだが…
まあ、それもあって剣士はいつも彼女に驚かされているし、彼女もわざと驚かせるような行動をしている。これは好意から来るツンデレ的なあれこれというより、おそらく音の鳴るおもちゃ扱いだ。もはや人扱いされていない。
出る幕が無いうえに、おもちゃ扱い。あまりにも剣士が不憫すぎる。
―まあ以上がうちのパーティーの前衛である。剣士のやれやれ系主人公ことアルマン、魔法剣士のニコル、魔法使いのソフィア、斥候のジゼルの4人。
あとは付与術師である僕レオンと、回復術師が1人、後衛としてパーティーに入っている。
ジゼルの護衛対象でもある回復術師の名前は、イザベル・カリソン。
身長165cmのボンキュッボンのお姉さんで、聖母のごとくすべてを包み込むかのような雰囲気をもっている。
彼女は常に、真っ白な布に金糸で刺繍を施された美しいカソック(聖職者の平服)を纏っている。
ちなみに僕は彼女の服が汚れているところを見たことがない。確実に野外で砂埃にまみれているはずなんだが…
―まあそれは置いといて、
彼女はこの国のある大陸で一番広く信仰されているロリエール聖教会に所属する、正真正銘の聖女である。ちなみに次期教皇候補の1人らしい。なぜ冒険者になった?
彼女が回復魔法を使えば失った手足が再生され、神聖魔法を放てばアンデッドが灰も残らず浄化され、結界を張れば一切敵の攻撃を通さない鉄壁の要塞が完成し、彼女がひとたび祈れば神の祝福が付与される。ちなみに広範囲でこれらを行うことができる。
まさにチート級。
だからアンデッドがはびこる大きな墓場やダンジョンに行っても、彼女がいるだけですべての敵が片付く。剣士がスケルトンをバッタバッタ斬り倒す、なんて事は起こらない。
なんでパーティー組んでんの?剣士が可哀想だろ。
てか教会でも似た仕事あるだろ。そっちやれよ。
―察した人もいる通り、剣士の出番がないパーティーでは、けが人は出ない。出てもかすり傷程度だ。つまり彼女の回復魔法は無用の長物。才能を持て余し過ぎている。
――――――――――――
以上でパーティーメンバーの女性陣の紹介は終わりだが最後に、剣士アルマンの紹介をしておこう。
彼は剣士、と言うより大剣使いの方が正しいだろう。
身の丈ほどもある大剣を振り回し、敵をなぎ倒している。
見た目は爽やかでそこそこカッコいいし、引き締まった肉体は男受け女受けどちらもいいだろう。中身は…まあ、その、うん。女慣れというよりもはや人馴れしてないんだろうなって感じだ。あと承認欲求とプライドが高め。
あと彼は常に赤い鎧を着ている。顔が爽やかなのに鎧が暑苦しいのはどうなんだ…?
戦闘面に関して言うと、彼は無属性魔法である「肉体強化」を使えば、C級(オーク、スケルトンソルジャーなど)の魔物なら1人で容易に倒せるくらいには実力がある。
そう。彼はちゃんと強い。
やれやれ系主人公になるために努力を重ねていたのだ。
ただ悲しいかな、彼女たちの実力が突出し過ぎていた。
冒険者ランクで言ったらS級は確実にあるだろう。
彼女たちがいなければ、彼は堅実に冒険者として成功していたのだろう。
残念ながらそんな理想的で平穏な未来は、彼がこのパーティーを抜けない限り訪れない。
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そもそも何故このようなトンチキパーティーが出来上がったのかと言えば、単純も単純。
たまたま同じ時期に冒険者加入試験を受け、そこで剣士アルマンが手あたり次第、身目麗しい乙女を誘ったからである。僕はただのおまけだ。役割が誰ともかぶってなかったというのもある。
さすがに男1人、女4人ではいけないと理性が働いたのだろう。
…いや、もしかしたら彼女たちに断られかけたか嫌な顔でもされたのが原因かもしれない。
どちらにせよタイミングが良かったのだ。
こうして僕たち「栄光の冒険者」が結成された。(命名はアルマン)
パーティーを組んだ最初の方はアルマンが頑張って指揮を取ろうとしていたが、半年が経つ頃には気がつけば魔法剣士のニコルがリーダー的役割を担うようになった。(絶対、軍団長や将軍とかの職の方が向いている)
初めは薬草採取やスライム討伐など初心者向けの依頼を主にやっていたのだが、気がついたらワイバーン討伐など、A級の依頼を受けるようになっていた。最近はベヒーモス討伐などS級に近い依頼も受けるようになった。
ここまでくると、僕とアルマンはただただ突っ立って、目の前の惨状を眺めているだけになった。実力的に完全に置いて行かれている。
しかし誰も僕たちのことを追い出さず、気がつけばパーティー結成から2年が経っていた。
今思えば、僕は本当に何もしていない。
付与の必要がないほど彼女たちは強いし、荷物も、魔法使いのソフィアが亜空間に収納できるバッグ(質量もバッグ本体分しか感じない)を個々に作ってくれたおかげで、予備のポーションや遠征中の食料を僕が持つ必要が無い。
野営中の料理番は斥候のジゼルだし、見張り番は回復術師のイザベルの結界があるから必要ない。
パーティーの休暇中にも個人で依頼を受けたりなんてことはしていなかった。
そもそも付与術師は戦闘職がいないとほぼ役に立たない。
…僕このパーティーにいらなくないか?
そう思ったら少し視界が歪んだ。…泣いてはいない。
まあアルマンはコツコツ地道に頑張っていたようだが。
涙ぐましい努力である。
しかしその努力の成果がパーティー内で発揮されることは無いので、そろそろこのパーティーを抜けるべきだと思う。
あと僕も依頼に誘ってほしかった。切実に。
まあ彼には彼女たちしか見えていないのだろう。悲しいことに男の友情というものは存在しないらしい。
―あと何か述べることがあっただろうか?
「……あ」
そうだ。最近、パーティーで拠点となる家を買ったんだった。
冒険者の拠点となる家と侮ることなかれ。
彼女らはほとんどが貴族出身、加えてA級やS級依頼の報奨金で懐がたいへん温かい。
するとどうなるか?
あろうことか、彼女らは帝都の貴族街の一等地に近い場所に拠点を置いたのだ。
思わず呆けてしまうほどの立派な門構えに、貴族でも目が飛び出るほど華美な装飾が施された屋敷。庭師によって手入れされた季節の花々が咲き誇る優美な庭に、剣や魔法の鍛錬ができる屋内演習場(体育館くらいの大きさ)もある。さらにこの世界では珍しい、浴槽付きのお風呂にみんなでご飯を食べる食堂もある。ちなみにメイドと執事付き。
庶民の僕とアルマンは思わず身を寄せ合って震えた。住む世界が違いすぎる。
敷地内に入るのを躊躇ったのも一度や二度じゃない。
しかし依頼へ行く前の準備や作戦会議は拠点で行うし、風呂に入れる食事つき宿は高い。
かといって他へ行く当てもなく、結局、僕は1カ月で他の方法を諦め、拠点を使うことにした。心の中の小市民の僕が泣いているが、見ないふりをした。
……時には諦めも肝心だよな。住めば都とも言うし。
ちなみにアルマンはというと、彼女たちとの共同生活になることに早々に気づき、1日目に「はーやれやれ、俺はこんな大きな家はいらないんだけどな」という顔をし、3日目には「ここ、俺の拠点ですが?」という顔をするようになった。さすが、やれやれ系主人公転生者、神経が図太い。…僕も見習うべきか
――――――――――
さて、現在僕とやれやれ系主人公アルマンは完全にパーティーのお荷物となっている。
それは本人もわかっているし、彼女たちもそう思っている。
つまり、
僕とアルマンは近々パーティーを追放される可能性が高い。
というか今受けてる依頼が終わったらアルマンが追放される予定である。
…パーティーメンバー集めた奴なのに。
そう。彼は失敗したのだ。
ハーレムの形成に。
…まあそもそもの話、彼女たちからの好感度はマイナスに振り切れているようなので、ハーレムどころか好意を寄せてもらうことすら難しかったようだが。
まあ彼ならここを出てもやっていけるだろう。
個人での冒険者ランクC級だし、依頼には困らないだろ。
…可愛い女性とパーティーを組めるかどうかは知らないが。
(そもそも冒険者をやってる女性で線が細い人は一握りだ。大体がアマゾネス)
―僕?
僕は…迷いどころである。
このまま追放されるまでパーティーに残ってもいいし、魔法学校で出会った恋人の元に行くのもありだ。
僕の恋人は医療術師(現代で言う医者)兼商人として世界中を旅している。
今はちょうどこの国に向かっているようだし、旅に同行させてもらうべきか…
――――――――――
「なあ、どっちがいいと思う?ニコル、ソフィア」
「それを今僕たちに聞くあたり、君も大概だと思うよ」
ちょっと困り顔でニコルが答えた。
…その顔も眩しいな。
「そうそう!それに今!他の女性の話を出すなんてよくないよ!」
「あー、、ごめん」
そうだ、今は彼女たちに集中せねば。
顎に伝った汗を手の甲で拭う。
「しかしこういった事をしておいて言うのもあれだけど、君は恋人に怒られないのかい?」
「んー、まあ大丈夫だろ」
あっちはあっちで男を何人か囲ってるだろうし。
学生時代の頃、出会った時からそうだ。彼女は常に目も眩むような美男子に囲まれている。
…よく僕と付き合おうと思ったな、あいつ。
「もぉー、ニコルも話題に出さないでよー、なんか冷めちゃうじゃん!」
「あはは、ごめんって」
プンスカ怒るソフィアを2人で宥める。
「もぅ、騙されないんだから!」と口では言いつつ、まんざらでもなさそうな顔をするソフィア。
あざといのは分かってるんだが、やはり可愛いな…
「さて、夜はまだ長い。続きをしようか」
「そうそう!夜はこれからだよ!」
「…そうだな」
ソフィアに手を引かれ、そのまま唇を合わせる。
彼女たちの吐息ひとつで体が熱くなる。
ひとしきりキスをすると、彼女たちは獰猛な笑みを浮かべた。
「君のこともめいいっぱい可愛がってあげる。だから、」
「私たちが満足するまで、へばらないでよね!」
「…ああ、望むところだ」
どうせ明日は休みで、依頼は明後日からだ。朝起きるのが遅くたって構わないだろう。
僕らは真っ白なリネンに体を沈めた。
夜はまだ長い。
――――――――――
ひとつ言い訳をさせてほしい。
冒険者というのは常に命懸けだ。
特に最近は命の危機を感じることが多くなった。
そうするとどうなるか?
人間の身体というのは不思議なもので、命の危機を感じると生存本能が働き、子孫を残そうとする。
…要は性欲が高まるのだ。
だからどこかで発散する必要があるのだが、まあ依頼で行く先々に娼館があるとも限らないし、都合のいい娼婦や未亡人もそうそういない。
ではさてこの持て余した欲をどうしようか悩んでいた時に、ニコルと目が合った。合ってしまった。
彼女も女性とはいえ冒険者だし、常に命を張っている。
それなりに溜まるのだろう。
それからはお互い発散したいときに呼んで、宿か、野営の時は野外かテントで致すようになった。
んで、それがソフィアに見つかった。
たまたまニコルとお喋りしようと部屋へ突撃したソフィアは、僕とニコルがキスをしている場面に遭遇。
赤面した彼女に「ソフィア、君もおいで」とニコルが誘ったことでソフィアが加わった。
ニコルにドロドロに甘やかされた彼女は味を占めたのか、たびたび混ざるようになった。
…まあソフィアと2人ですることもあるが、彼女の目的はニコルだからほとんどない。
そんなこんなで今現在に至る。
ちなみに、僕たちが体の関係を持っている事を、ジゼルは知っている。おそらくイザベルも知っている。何故ならこの間「夜の間はできるだけ防音魔法をかけてください。聞こえるので」と言われてしまったからな。
…さすがに聖女とその護衛に手を出す気はない。聖女に手を出した時点で教会に目を付けられるし、処刑は免れない。ジゼルも殺される可能性を考慮すると、な?
まあ、僕らの関係を知らぬは剣士のみというわけだ。
―以前、ニコルとソフィアに「アルマンとはしないのか?」と聞いたことがあるのだが、
「アルマン?ああ、彼とはしないよ。だって彼は童貞だろう?誘ったところで色好い返事がもらえるとも思えないし、一度関係を持ったら変な勘違いをされそうだからね」
「アルマン?あっはははっ!ないない!だって彼、私の胸しか見ないもん!普段の会話で目合ったことないし!ありえないよー」
だそうだ。
………頑張れ!やれやれ系主人公アルマン!
―――――――――――――
その後、依頼を無事終えた彼女らは拠点に帰るなり、剣士アルマンをパーティーから追放した。
荷物と共に拠点から放り出された彼は、しばらくの間騒ぎ立て、敷地内に入ろうと足掻いていたが、残念なことに拠点の敷地にはソフィア・イザベルが共同開発した“許可されたもの以外立ち入ることができない”結界が張られている。
不許可となってしまったアルマンは、足を踏み入れるができず、話し合いをする機会も与えられないまま彼女らの元を去ることとなった。
その後どうなったのかは知らないが、冒険者ギルドで名前を聞かないので、きっとパーティーメンバーを選り好みしすぎて苦戦しているのだろう。
頑張ってくれ、アルマン!
ちなみに、僕らのパーティーは名前を「誇り高き戦乙女」に変え、S級冒険者パーティーとして活動している。
―結局、僕はパーティーに残ることになった。
今は主に食材確保やギルドとの交渉、あとは細々とした雑用を担っている。
…相変わらず戦闘面ではほとんど役に立てないが。
僕の恋人はというと、なんと帝都で再会した翌々日には別の国へ行ってしまった。引き留める間も旅について行っていいか聞く暇もなかった…
なんでも東方の国の美形に会いに行きたいのだとか。
そう書いた置手紙だけ残した彼女へ僕は
「味噌や醤油と呼ばれる調味料を見つけたら僕らの拠点へ送ってください。
住所 レインカフ帝国帝都中央街XXX―」
と手紙にしたためて伝書魔法で送った。
もしかしたら、転生してから諦めていた味噌汁や肉じゃが、豚の角煮が食べられるかもしれない。
…お腹空いたな。
どちらにせよ、元気にやっているようで良かった。
まあ、ついて行こうが行かまいが僕は彼女らのダッチワイフにされる未来しかないので、どっちでもいいのだが。
――さて、もう夜も明けたし、今日から始まるダンジョンアタックに向けて準備するか。
今回潜るダンジョンは、出現後100年は完全攻略されたことがないと言われているS級ダンジョンだ。少なくとも2ヵ月は帰ってこれないだろう。
だが何も心配はいらない。何故なら彼女たちは、剣士アルマンのような転生者を必要としないほど精神面でも戦闘面でも強い。
僕はただ、戦闘時には後ろで応援し、夜は彼女たちを慰めればいい。
―ある意味これが、やれやれ系主人公転生者が望んでいた生活なのかもしれない。
頑張れ!やれやれ系主人公!
―終わり―
読んでいただきありがとうございました。
現実って非情ですよね。