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お台場のきらびやかなタワマンの地下ラウンジへ非常階段から入っていく。
「なぜ悠馬君と春だけヘルメットをカブらないんですか?」ガサ入れ直前、防弾チョッキにヘルメットの軍団の中で
悠馬も春だけヘルメットしていない。
「あ〜2人には邪魔なんですよ。」部長が直前なので
ぶっきらぼうに竜星に答える。
「見ていれば分かりますよ。」山本が竜星に声を掛ける。
先頭はデカい悠馬だ。
長い足でドアを蹴り倒した!
鉄のしっかりした普通の扉だ!
「信じられない…」竜星がつぶやく。
「鉄だろうと木だろうと固定してるビスの強度はあまり変わりませんから。
うちの会社は扉良く外れます。」春が事も無げに言う。
部長が「警察だ!動くな!その場で手を上げろ!」と号令した。
数人がやはり銃を所持していたらしく構えるが、それより早く悠馬が全部銃を弾き飛ばした。
スゴい速さである。
銃を構えた警官がわらわらと違法賭博のカジノになだれ込んだ。
最後尾から春と竜星も入った。
令状を見せて部長がその場の客ごと地面に伏せさせていく。
後から続く警官が次々と手錠を掛けていく。
「客もスタッフも一緒くたなんですね。」口々に文句を言う客達や連れの女が悲鳴を上げるが関係なく手錠を掛けられ繋がれていく。
「とにかく警察署へご同行願います。
選別は後からですね〜」春がいつもと変わらない調子で淡々と話す。
が、振り向きざま銃を撃った。
無抵抗で伏せた中にも銃を持ったスタッフが居たのだ。
アチラもプロを雇っているのだろう。
「撃つ奴は必ず死角を狙います。つまりヘルメットで
見えない部分ですね。
反応が遅れるし正確に撃てないので邪魔なんです。
殺したくは無いですから。」
春が事も無げに言う。
実家は山の中の父が建てた小屋だった。
つまり獣達の領域に無理矢理入ってきた一家だった。
なので父も母も猟銃の免許を取っていた。
食べ物の匂いにつられて、秋から冬場は特に獣に狙われた。
銃を持ち360°に気を配るのは、普通の生活の子供だったのだ。
「やはり組対に居る女性は特別ですね〜」竜星の目がキラキラしてる。
「丹沢は普通に熊いますから。
あの子達は凄く賢いんですよ。何匹か人間の味を知ってる熊も居ましたから。
寒くなると冬眠の為に新鮮な内臓が欲しくなるんでしょう。」
春はサラサラと恐ろしい話をする。
春は足元に伏せてる1人に寄り、ジャケット下の銃を取り上げた。
「人間は殺気を出すんで、熊より分かりやすい。
熊にとっては人間なんて蟻みたいなもんなんで
殺気出さないですからね、実家来る子は。」
ブツブツ言いながら、その銃を悠馬に放り投げた。
「コラーッ、銃を投げるな!」部長が怒る。
その方が問題みたいだ。
「安全装置は確認しました。私は係長から離れられないんです!」
春も大声で返した。
タワマンの外に外人用観光バスみたいな大型の護送車が待ち構えていた。
そこにワラワラと繋がれた人が押し込まれていった。
「なんでこんな大きなバスを用意してたのか?
不思議でしたが分かりましたよ。
ありがとう、いい勉強になりました。」竜星が感嘆していた。