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「えっ、ココも〜どうしょう?」女子寮のシャワー室が全部故障中が張られていたので、女子更衣室のある3階まで降りてきたが、
ここもシャワーが故障中と貼られているのだ。
今日は対策室は多忙を極めた。
明日から神奈川、静岡、東京に分かれて橋立教官を捜す大捜査網が敷かれるからだ。
女子寮に戻れたのは午前様だ。
もう寝静まった寮から階下に降りてきたが、やはりシャワーが浴びれない。
「何してるんですか?」署長室から寮へ戻る竜星と遭遇した。
「あっ、寮のシャワーが全部故障中なってて、更衣室のシャワー使いに来たんですが、ココも故障中で…」春が言う。
「そんなバカな事がありますか!それは…」と言いかけたが、女子の陰湿なイジメに慣れてない春なのを思い出した。
剥がして普通に使えば良いのだが、それが分からないようだ。
オロオロしてる春を見て、意地悪な気持ちが湧いてきた。
「明日の着替え持って玄関へ来て下さい。
タワマンの僕の部屋のシャワー貸してあげますよ。
もう遅いし、そのまま泊まって下さい。」
竜星が命令口調で春に告げる。
春が大きく目を見張り硬直するのをワザと無視して、その場を離れた。
「サイテーかもなあ〜」竜星が呟く。
だが、自分がこんな重責を背負って苦しんでるのに
いつまでもお姉さん風吹かせて悠馬の面倒を見てる春に
イライラするのだ。
自分と同じくらいには追いつめたい。
タクシーを呼んで玄関ロビーで待ってると、春が真剣な顔をしてショルダーを抱えて現れた。
タクシーに乗り隣に座ると若干小刻みに震えてるが分かる。
本当なら緊張を解く声を掛けるべきだが、今はすごく意地悪な気持ちなので腕を組んで黙って夜景を見ていた。
タクシーを降りてタワマンのセキュリティーにキーをかざす。
エスカレーターを登りロビーに入る。
静かなBGMが流れる中でエレベーターホールへのセキュリティが開いた瞬間
春の足が止まる。
「あの…やっぱり…」春が口ごもる。
「どうしました?シャワー浴びないで護衛はイヤですよ。」意地悪に返す。
「シャワーだけお借りして帰ります。それか莉夏の部屋に泊めて貰います。」春が意を決したように話す。
「…どうして?」竜星が問いかける。
「僕らは恋人同士じゃないんですか?」竜星が春の手を掴んで聞く。
「あの…それは!でも、まだ…」春の目が泳ぐ。
「アナタは僕の事をどう思ってるんですか?」竜星が少し声を荒げる。
春がハッとした顔をする。
「行きます。泊まります。」唇をキッと噛んで春が答えた。