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「なんで男子寮に女が居るんだよ?」倒れた竜星を担いで寮に戻り部屋に届けた。
戻ろうとすると悠馬に部屋を出た所で出くわす。
「仕方ないでしょ!
竜星さん、めまい起こして倒れたから届けただけよ!」春はサッサと階段の方へ向かおうとする。
が悠馬に腕を掴まれる。
「なんであいつが目眩起こすんだよ?
お前、あいつに何したんだよ?」
答えにくい質問をしてくる。
「…何でも良いじゃない!早く女子寮戻らないと!
離してよ!」春が悠馬を振り切ろうとする。
「なんでアイツは良いんだよ?」悠馬が聞く。
「アンタのせいだからね!
アンタが橋立さんに加担するから、こうなったんだからね!」ずっと言いたかったことを春は言う。
「なんだよ、それ?意味が分からん!」言いながら悠馬が腕を離さないので引きずったまま階段の所まで来る。
「イタイでしょ!離してよ!
橋立さんに習ったでしょ?
日本は警官しか銃持てない。だから、仲間でも銃構えたら撃ち殺せ!って」悠馬の手を振り払う。
悠馬が目を見張る。
「テロリストなった橋立さんにアンタが肩入れしたら
追い込まれたアンタが警官に銃を向けたら…
撃つのは私なんだよ!」悠馬は力があるので手首が赤く腫れてる。
さすりながら春は悠馬をにらむ。
「知ってるでしょ?
銃なら私が1番だって。
アンタが銃構えたら、私が撃つしかないんだよ?」
力では悠馬には到底勝てない。
春は女警の中では体術もできる方だが、男性の中では
下から数えるレベルだ。
だから、人一倍銃に力を入れてきた。
でも不安でもあった。
仲間が裏切った時に矢面に立たされるのは、自分なんだろな…とも。
春は動体視力が飛び抜けているのだ。
動く標的に強い。
実戦向きなのだ。
悠馬が本気で暴れたら、誰も太刀打ちできない。
悠馬を止めるのは春の銃になる。
「ちょっと考えれば分かるでしょ?
それも分からないほど、橋立さんの力になりたいの?」春は警察学校時代から漠然と不安だった。
橋立さんを父親みたいに慕い、いや教祖みたいに傾倒してる悠馬が。
悠馬は俯いて手を握りしめる。
「アイツが急に署長なって対策室設けたのは…俺とお前連れて原発行ったのは…
お前がアイツに頼んだのか?」すごい目で悠馬がにらんでくる。
「……」春もにらみ返したまま階段を登った。
5分後爆発音が寮内に、いや港湾署ビル全体に響いた。
翌朝、寮の談話室の10人ほど座れる大テーブルが真っ二つに割れていた。