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「すみません。今夜は出かけられなくて。」

竜星がすまなそうに春に話しかける。

「やっと動き出して良かったですよ。

このまま、東京最後の日を迎えるかと思いました。」

春が笑う。

今日は2人共食堂の夜定食を食べ、そのまま港湾署の裏手の潮風公園をふらつく。

本当は壮麗な噴水広場になって海外客を呼び込む観光地になるはずが、

議会で反対にあい遅れている。

人気のない噴水が寂しくライトアップされている。

2人共ジャージにベンチコートを羽織って完全な私服だ。

「公安と話し込んでましたね。

あれから元気ないですが…何かありました?」春が聞く。

「いや、そうかな?

原子炉の周りを覆ってチェルノブイリのように石棺化する準備も進んでます。

もし爆発しても被害を最小限できるかもしれません。

未来は明るいんですけどね。」

そう言いながら表情は晴れていない。


いつもやる気満々の竜星を見てたので、憂い顔で心ココにあらずな風情の竜星は、

初めて見た気がする。

噴水の薄い光に照らされた青白い肌

長く繊細な指があごの下で指を交差させて複雑な造形を作っている。

この姿を独占して見れてるのが…たまらん!

思わず面食いの血が騒ぐ。

東京がヤバいのは分かっているが、何か実感が湧かなくて、

そして橋立さんがそれを企てたのなら、

なんかされる都民の方が悪党な気がする。

それぼと清廉潔白で心優しい人だった。


「寒いし帰りましょう?」春は竜星の前でしゃがんで

見上げるように目線を合わせて声を掛ける。

ハッと我に還った竜星は、手を春に伸ばした。

「あの…抱き締めてくれませんか?

すごく甘えたお願いなんですが…抱き締めて欲しいんです。」

時には不遜で食えない奴で官僚としては口やかましいクレーマーみたいで隙がなくて攻撃的で

弱さを感じたことない。

そんな竜星が初めて年下の男の子みたいな事を言う。

「…いいですよ。」

春はこんなシチュエーションは断れない。

長年長子として生きてきた(さが)と言うべきか?

少し前屈みに丸くなった竜星をすくい上げるように

抱きしめる。

きっと彼をここまで弱らせたのは、春が悠馬を撃ちたくなくてどうにかしてくれ!と言ったからだ。

ただの実地研修だったのに、東京を背負わせてしまったのだ。

「1人で全部背負わないで下さい。

私にも責任があるんです。

話せなくて良いですから…」

竜星の腕に力が入る。

春が抱き締めたはずだが、竜星に羽交い締めにされる。

それでもしたいように任せた。

竜星の奥歯を噛んで歯ぎしりの音が、春の耳にも聞こえる。

荒い息が顔に掛かり唇が塞がれる。

この前みたいな優しいキスじゃない。

口腔の中で春の舌を何度も掴まえてどんどん自分の口の中へ引きづり込む。

舌の根が痛くてほどいて自分の口の中に戻すが、またすぐ

追いかけて春の舌を吸い込む。

背中に回った腕もキツくなり春は仰け反りながら肩で息をしながら耐えるしかない。

振りほどいた方が良いのかもしれないが…春には耐えられるし

竜星の気の済むまで耐えた。

酸欠で竜星の方が先にめまいを起こして倒れた。


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