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「悠馬、良かったの?あれ、アナタのパソコンでしょ?」春は気になって声を掛ける。
「竜星、分かってるよな?約束だぞ!
俺2回も裏切り者になりたくないぞ!」悠馬が複雑な表情をする。
「分かってるよ。細工はしてある。
それより真犯人を炙り出さないと、橋立さんの真意が知りたいんだろ?」竜星が悠馬にウインクする。
「???」春は会話が見えなくて首をかしげる。
「竜星に頼まれて
輪島さん家近くの掲示板でアレ見つけた時、
気がついたんだ…」悠馬が春の顔を見ながら説明する。
「輪島さんは、見つけた時すぐ持って帰るか捨てたはずなんだ、メモを。残ってるのがそもそもオカシイんだ。
押しピンの後が何回も付け直した跡が残ってた…
だから、俺が見つけたメモは…輪島さんの死後のだ…」
悠馬が信じられない事を言う。
「…!!!
どういう意味?」春は訳が分からない。
「国分寺の家も、俺は今日子ちゃんのゲーム機が消えてるのに気付いて無かった。
竜星に言われるまで分からなかったんだ!
あんなにゲームで今日子ちゃんと遊んだのに!」
悠馬が苦しそうに話す。
中学から悠馬を橋立さんが保護司として預かっていた。
今日子ちゃんに心を開いたのはゲームで遊んで貰ったからだとは春も悠馬から聞いてた。
「なのに気付いたのは竜星だった!
掲示板のメモもゲーム機も俺に向けたメッセージだったのに!」悠馬がすごい悔しそうだ。
「橋立さんは、悠馬に気付いて貰いたかったのさ。
パソコンの中の奴は自分じゃないと。」竜星が悠馬の肩に手を置く。
「あの、全然分からないんですけど…」春は混乱する。
「つまり、パソコンのマイ◯ラを連絡に使おうと計画してたのに
逃走のタイミングで何者かに乗っ取られたんだよ。」
竜星が説明する。
「だが、橋立さんはそれを知らせる事が出来ない。
橋立さんのパソコンにゲーム入れて無理やりマイ◯ラやらせたの俺なんだ。」悠馬が自分を指さす。
「だから、掲示板のメモは、俺宛なんだ!俺に真犯人を追え、探せと知らせようとしたんだよ!」悠馬が膝を抱えて泣きそうだ。
「えっ、じゃあ、輪島貴美子を殺したのは悠馬じゃないの?」春はビックリする。
「俺は貴美子が盗んだ二宮夫妻への礼状を返して貰っただけだ。手荒なことはしたが…
埼玉の三井家で橋立さんに頼まれたから。
橋立さんや俺らにとって輪島父娘なんか、どうでも良いんだよ。
今日子ちゃんの復讐に、輪島達に死なれても迷惑なだけだ!」
「!!!」春は口をポカンとする。
確かに計画を書いたメモさへ取り返せば貴美子も輪島さんも関係ないのだ。
確かに橋立さんはむやみに殺人なんかする人じゃない!
あの父娘がいくら叫んでも証拠が無ければ、誰も相手にしない!
「えっ、じゃあ、誰が輪島父娘を殺したの?」春は目が点になる。
竜星が春の肩に手を置いた。
「そのために今日仕掛けたんですよ。」
会議で「懐かしい!」と言ってた捜査官が組対の部屋から出てきた。
まだ残っていたのだ。
竜星は1人づつに、一声掛けて送り出してた。
その時に頼んだのだ。
「組対の部長と2人で記憶を辿って解読したよ!
こう書かれてたんだ。」メモを竜星に渡す。
『仲間を信じるな』