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「僕は過保護な両親に過干渉な姉妹兄弟もいます。
その保護者ポジ要りません!」竜星が迷惑そうな顔をする。
「申し訳ありません。」春は顔をポーカーフェイスに戻して謝る。
が、頭を下げながら舌打ちする。
あくまで竜星に分からないように…
山本が訳が分からずオロオロしてる。
仲良くなってお姉ちゃんポジか母親ポジを獲得する作戦ははじかれた。
断って嫌われるのはお仕事上好ましくない。
かなりデカい借りもある。
泣き落としはもう通用しないだろう…
男と女は難しい。
春は対策室で食べると席を立った。
捜査官は皆出払って誰もいない。
窓からは遠くゲートブリッジが見える。
竜星は悠馬みたいなスキは無いようだ。
男性は結婚の時こういう状態になるらしい。
竜星が嫌いなんじゃない。
人間関係の新しい局面が恐いし嫌なのだ。
まあ、もう、そんなこと言ってる年では無いことは
充分分かっているが…
「やっぱり東京が滅ぶしか逃げ場はないか…」
思わず呟く。
「ダメですよ。東京も守りますし、アナタも逃がしません。」
後から竜星も対策室の窓際に来た。
「私じゃなくてもアナタならいくらでもモテるでしょう?
なんで、こんな男女が良いんですか?」春はキレ気味に問う。
刑事課の男女比率は1/100だ。
見回す限りギラギラした男の中で寄せ付けなかったのに。
この男の園で守り通せたモノが、なんでこの優男に脅かされないといけない?
「人の嗜好にとやかく言われる筋合いは無いです!
本当にアナタは難儀な人だ。
とは言え、無理強いしたら僕の命が危ないし。
説得を続けるしかないんですよ。」
「………」春はもう反論する気力を失って黙った。
「ハグからチャレンジしましょう。
今夜は外食して、まずハグが出来るかチャレンジしましょう。」竜星が提案する。
「知りませんよ。無意識に投げちゃうかもしれませんよ。」春が脅す。
「アスファルトと海の近くを避けましょう。海浜公園を散歩しましょう。」砂地なら大丈夫だ。竜星が提案する。
「まだシベリア寒気団が張り出してますよ。夜の公園は冷えますよ。」春は苦し紛れに言う。
「ちゃんと暖めて下さいね!風邪は引きたくない。」
食えない男である。
「そう言えば…今日、悠馬どうしたんですか?」春が話題を変える。
「あ〜、ちょっと気になる事あるから調べに行ってもらってます。
直帰で良いと言ってあるけど。」竜星がニヤッと笑う。
「悠馬にそんな事言ったら!絶対、早めに仕事済ませて絶対遊びに行っちゃいますよ!
良いんですか?」
春が心配する。
「経理にはザル計上許さないように言ってるけど。」
竜星が話すが、春が手をクロスしてバツを出す。
「あの人、口先で絶対経理の子言いくるめますよ!
絶対目を離しちゃダメですよ!」
春が腰に手を当てて注意する。
竜星が目を見開く。
「だから組対以外で仕事させれないんですよ!
アナタの名前出して絶対大金チョロまかすから!
気を付けて下さい!」
春もクセ強鉄処女だが、悠馬も気を抜けない。
アポロンの2頭立て馬車は大変だ。




