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ビーナスフォートから大して遠くないので歩いて港湾署に帰ると窓口に同僚の山本が当番していた。

もう夜勤組に代わっていた。

「友達家行ってたんじゃなかったけ?早くない?」

同じ組対だ。

既婚なのでもう寮は出ている。新婚だ。

「うん、大学時代の友達が有明のタワマン引っ越してきたから遊びに行ったんだけど輪島貴美子がさあ〜

どうしても会いたいってお台場まで来るって言うから

ビーナスフォート行ったのに来なかったんだよ!

ちょっとひどくない?」

暇そうなので窓口で愚痴る。

「あ〜っ、あのSPの娘かあ〜

オヤジさんも何人も病院送り出してるが娘も容赦ないらしいな。」同僚は教官が違うし入庁した時期も違うのに

貴美子の事を知っていた。

「よく知ってるね〜柔道も剣道も有段者だしね〜

強いちゃ強いんだけど…」春が苦虫つぶした顔でグチる。

「人の話聞かないし自分勝手なんだよね〜

捜査とか連携取れないしやりづらいんだよね!」

窓口のテーブルに頬杖ついてグチる。

「ちょっと〜そこは市民の皆さんが来るとこだから

警官の愚痴の窓口じゃないんだよ!

どいてどいて〜」

警杖(けいじょう)で後から来たデカい男が春をけちらす。

「乱暴だなあ〜悠馬(ゆうま)は!」春は、テーブルをヒラリと飛んで中に入って避ける。

「お前、そんな入り方署長に見つかったら怒られるぞ!」デカい男が棒でこづこうと刺してくる。

それを交わしながら、

「警杖をそんな使い方してる奴に言われたくないわ!

だいたいもう夜勤交代だから署長も福もいないし!」

市民の出入りも減り、夜勤だけなので受付のあるエントランスロビーも人はまばらだ。

明かりも省エネのため半分ほど消されている。

「おいおい、お前ら子供か?春も悠馬もいい加減にしろ!」

既婚者でもう子供もいる山本が2人を叱った。

「組対は仲良いなあ〜元気だし。」同じ夜勤組の強行班がグッタリしてる。

「すごい疲れてるね〜どうしたの?」春が聞く。

「そこの運河で身元不明の遺体が上がったんだよ。

あ〜今日は仮眠無理だ!」当番の2人がグッタリしてる。

「身元不明?」山本が訝しそうに聞く。

衣類やカバンがあれば、普通分かるはずなのだ。

「見事にマッパだよ。顔も手も切り刻まれてる。解剖待たないと身元に繋がるものは出なさそうだ。」

「解剖待つと時間掛かるよなあ〜仕方ないが。」山本が同情する。

「春、お前非番だろ?上がれよ!」本腰入れて話に加わっている春を警杖を持った悠馬が小突く。

「うるさいなあ〜

ねえ、遺体が見つかったの何時?」強行の刑事に聞く。

「え〜っ、今から2時間くらい前かな?」腕時計を見ながら答えた。

「若い女?」春が念の為聞く。

「よく分かったな!そうだよ!若い筋肉質の女だよ!」

嫌な予感がする。

「コイツ、今夜あの輪島貴美子とお台場で待ち合わせしてたらしいが

来なかったらしい。見せて貰うか?一応…」強行の刑事と春の顔を交互に見ながら山本が話す。

「上司に許可取りしたら大丈夫だと思う。

どうせもう現場入ってるし…俺等は噂は聞いてるが顔知らないしな。」強行の刑事も不安そうに携帯を持って席を離れた。

「もう鑑識に入ってるらしい。良いってさ…見るか?」

港湾署の地下の遺体安置室に向かった。

「自殺か他殺かも、まだ分からんが。

警官だと、また面倒だなあ〜」強行の係長が嫌そうな顔で中に入れてくれた。

袋のジッパーを開けてくれた。切り刻まれているが、

それは輪島貴美子だった。


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