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「油田公園」でハイヤーを降りるとビジターセンターへ竜星は入っていった。

「すいません。ココは防災倉庫ありますか?」

聞かれたスタッフはポカンとしてる。

「裏に山林があるし、山火事も多いので準備されてるかな?と。」

本当にコイツはクレーマーか?

と少し春は思い出してきた。

慌てて責任者らしき人が走ってきた。

「すみません。無いですね。建物内に防災用品と備蓄は用意してますが、はい。」と丁寧に教えてくれた。

竜星はクルッと春と悠馬の方を向いて、意味深に笑う。

「覚えておいてね。防災倉庫は無いんだよ、ココには。」そういうとスタスタと外に出た。

春は怪訝な顔をしているスタッフに会釈して出る。

「ここは日本では希少な良質な油田なんだよ。

エネルギー革命が起こるまでずっと使われていたそうだよ。

そんな近くに原子力発電所とかね。面白いよね。

鉄板の上に卓上コンロ置いてるようなものだよね〜」

良く分からないが、竜星はヒドい嫌味を言ってる気がする。

そして裏山へ入って行く。

「ここからは山育ちの春に任せるよ。

人が立ち入ってる気配を探して欲しい。」竜星が春の方を向いて言う。

「あっ、はい、分かりました。」

変わった山だ。下は広葉樹の森なのに、頂き近くには針葉樹がニョキと生えている。

気候が変わるほどの高度はない。

そしてそこに昔、油田を採掘したらしい鉄塔が見える。

「多分、山頂付近は昔伐採整地して油田を掘っていたんでしょう。

でも必要が無くなって、針葉樹を植樹したんでしょう。

昔はやたらめった杉とヒノキを植えるの流行ったので。」春は木々の間を歩き回る。

「聞いたことあります。昭和の植樹が花粉症の原因だと。」竜星が受ける。

「でもそれ以降鉄塔へ行く用事がなくなって、山道は消えてしまった…ようで有りますね、道が。」

春が、足元の小枝や枯れ草をどけると轍がついた山道が現れた。」

「さすが!広葉樹ばっかりだから、枝が伸びてて分かんないんだよね。」竜星が春の後から付いていく。

「あまり使われてないので草ボウボウですが、ワザと枯れ草で覆って隠してますね。」

誰がこんな事をしたんだろ?

何のために?

春は頭の中が???だらけになる。

「やだよね〜SIT出身は。対テロリスト訓練で山歩きしてるから。

山道消して追跡逃れる技知ってるから。」竜星が経験ないのに知ってる。

「え〜、俺も知んない!SITなんて頭良い奴しか選ばれないからさ!

狙撃と拳しかないからなあ〜チェッ」

悠馬が羨ましそうだ。

橋立さんに憧れているが、自分では無理だと言うのも分かっているから。

山育ちの春には、ほぼ道取りが分かる。

山の傾斜や木の根や岩の配置で。

山頂の針葉樹の森まで来ると、木々が開けた部分で分かりやすかった。

そして、白い建物が突然現れた。

大きなシャッターが付いた倉庫だ。

ちゃんと県マークが付いた防災倉庫と書かれていた。

「えっ、防災倉庫って。ビジターセンターの人は無いって!」春は驚く。

「そう、確認したからね。

あるはずのない防災倉庫が有るんだよ。」竜星がニヤッと笑う。

「これかあ〜昨夜パソコン画面でうっすら見えてたの!」悠馬が建物を触りながら一周する。

「さあ、ココからは悠馬だね。開けてくれる?」

竜星が悠馬に頼む。

「やっと出番か!」

悠馬は大きなシャッターをドカッと蹴った。

ほとんどシャッターの意味をなさない程折れ曲がり、開いたドアほどの隙間から中に入る。

そこには、二宮夫妻の軽とトラックがあった。

「ねっ、あったでしょ。」竜星が2台の車の前に立つ。

「ここは2人の家から農道を走るだけで来れるんだよ。そして、発電所もね。

高速道路のインターと発電所の中間にあるから、ここに東京からの大型トラックを隠して爆弾と炉内に入れるロボットを少しづつ自家用車で発電所に運び込んでたんだよ。

作業は夜勤のシフト中やり放題だ。」

「カモフラージュですか?」春が聞く。

「そう、鉄塔見に登山者来ても鉄塔横にさも行政が設置したかのような防災倉庫もどきがあればね、

誰も疑問感じないんだよ。」竜星が笑う。

「そして車で登れる道が無ければ、行政官はわざわざ来ないからな。

田舎で平屋ばかりだから山頂の建物なんか誰も気づかない。

あ〜っ、橋立さん!こういう知識も教えてもらいたかったなあ〜組対でも絶対役に立つ!」悠馬がベコベコになったシャッターをもっとボロボロに足でしていく。

「その大型トラックは?」春が聞く。

「高速道路で東京戻ったんじゃない?それもカモフラだよ。近くに製茶工場あるし。」竜星がまたニヤッとした。少し楽しそうだ。

「製茶工場のトラックと同じ塗装すれば、高速道路のカメラに映っても素通りだからね。

今さらナンバー確認に人手割いてる暇も無いしね。

優秀な警官を敵に回したくないわ〜」竜星が何だか嬉しそうだ。

『この人、エロ魔王だし変態かも…』春は心の中で呟く。


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