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誰かに子供を殺されたら…それはその個人を恨むだろう。死んでほしいと思うだろう。

会社の仕事で自殺した女性のお母さんが、大手広告代理店と戦った話もTVで見たことある。

じゃあ、都民に殺された娘の親は…

個人じゃない。集合体だ。

だが、その集合体を恨むだろう。

マスコミと票が欲しい議員の煽りで盛り上がった愚かな都民に

亡くなった妻から託された忘れ形見の大切な大事な娘を殺されたのだ。

まだ子供がいない3人だが、その憎悪は分かる。

どれほどの憎悪か。

「俺は都民全員死んでも許せないよ。

あんな優しいお姉ちゃんが、なんで死ななきゃならないんだ!

議員もマスコミも都民も死ね!」唇を噛んで悠馬は竜星の後をついていく。

2人が先を登る姿に春は複雑な気持ちになる。

『土壌汚染でギャーギャー言った人達を放射能人間にして世界中から嫌われ排斥抹消される存在にしたいんだろなあ〜土より汚い人間にしたいんだ、教官は。』

その悪意に戦慄する。

が、自分だって母や父や弟がもし村人に殺されたら…

と想像する。

「村人全員殺しちゃうだろなあ〜」ちよっと悪夢みたいな光景が浮かぶ。

『教官は、多分ずっとその悪夢の中で生きてきたのだ…』

お台場で橋立教官らしき人を目撃した日を思い出す。

輝く夜景の下の真っ黒な東京湾を見つめていた姿を。


展望ギャラリーは、原子力発電への前向きな解説で飾られてた。

ネット社会が当たり前、お金すら要らなくなる未来。

それは全て電力ありきの世界だ。

安定した電気の供給には原子力は必ず要る。

そこを抜かして便利だけ享受しょうとしても無理なのだ。

政治家や利権絡みで悪人仕立てて、自分達の責任を回避しょうとする国民。

その心の隙間をつくマスコミ。

原子力発電もまたその板挟みで無用な死人を作るのだろう。

その家族はどうしたら良い?

春は橋立教官の心を思って沈んでた。

が、急に距離の縮まった竜星と悠馬は、茶畑が広がる丘陵地帯から遠く高速道路のインターを指差しながら2人で話しこんでる。

そして、春の方を向いて意味ありげに笑う。

「さあ、ココからは悠馬と春にお任せだな。」

待たせていたハイヤーに乗り込み竜星が「油田公園へ」と行き先を告げる。


「俺、根本的に分かって無いんだが、なんで茨城とか

もっと東京寄りに発電所あるのに、

なんで御前崎の発電所が問題になるの?」悠馬がハイヤーの後の席で竜星と並びながら質問する。

春が前の席に変わってる。

昨夜パソコンイジっててオンラインゲーム同じのやってるのが分かったらしく一緒に遊びだしたのだ。

「偏西風って分かる?」春が説明しょうとしたが、竜星が止めた。

「悠馬くんには、こう説明した方が分かりやすいよ。

雨とか大阪名古屋に降ってるとだいたい12時間後ぐらいに東京に降るだろう?

そういうこと。」竜星が説明する。

「そうか!御前崎なら1時間後は東京上空か!」悠馬が即理解した。

「僕の予想では時限爆弾ではないとにらんでる。

いや、時限爆弾ならもう救いようが無いが、橋立さんは良い人だと言うのに掛けてる。

偏西風の動きを見て東京だけにダメージ与える日を選ぶと思うんだ。

静岡、神奈川、千葉は仕方ないとしても東北地震で家族を沢山亡くしてる地域に流れない日を選ぶと思うんだ。」竜星がプロファイルから導き出した考えをのべる。

「うん、橋立さんはそういう人だよ。

俺、二宮夫婦はもう日本いない気がする。インターポールに属してない国へ逃がしたと思うな、橋立さんなら。」悠馬がキラキラした目で竜星に話す。

「そうなの?君のとこには連絡来ないの?この頃?」

竜星が軽い感じで聞く。

「うん、埼玉のバーベキューの日以来電話も繋がらないし、国分寺の家ももぬけの殻だし…」悠馬がしょげる。

「本当は今日子ちゃんの月命日に一緒にいつも飲むんだけどな…」悠馬は本当に家族だったみたいだ。

「自分も連れて行って貰いたかった?」

コクンと悠馬がうなづいてから、慌てる!

「オイッ、コラッ!分かった風な事言うな!」顔を真っ赤にした。

「情ない!警官のくせに!」春が呆れてる。

竜星のプロファイルは当たってると思う。

橋立さんの狙いは、あくまで都民だけだ。

そして協力してる教え子達も守ろうとするだろう。

だから、橋立教官は自分が殺ったと宣言して消えたのかも?

悠馬を守る為…


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