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「どこが私を守るなのよ!
セクハラ三昧じゃない!」春は莉夏の言葉を疑う。
発電所内に入り時限爆弾は全て外したとSATから連絡が入る。
しかし、竜星は納得してないようだ。
「二宮夫妻と一緒に働いていた方々を集めたので話しを聞いてみましょう。」
中央の管理センター室に入る。
保守点検のスタッフは20人程度だったらしく、24時間勤務をシフト制でこなしていたらしい。
「本当に元警官なんて思えないくらい、のんびりした親切な2人でしたよ。」年長の男性がまだ半信半疑だ。
「親切ですか?」竜星が質問する。
「私なんて子供が、熱出す度にご夫婦どちらかがシフトに入っていただいて助かりました。」主婦らしき人が話す。
「貴女は主にどんな仕事を?」質問する。
「深夜の清掃に入ってました。」
「深夜ですか?夜勤シフトは何人ですか?」
「正社員は昼間しか勤務しないので
深夜はこの管理センターに非常勤の私らが2人と清掃の女性だけです。」
『夜中に作業し放題じゃないか!』春は驚いて中腰になる。
海外に比べて平和ボケしてるとは言え、あまりにズサン過ぎないか?
「防犯カメラもありますしね。下手な事は出来ませんよ。」監視でついてる正社員が言い訳をする。
「去年、エネルギー庁が安定した電気供給の為に原発を順次再稼働すると通達してましたよね?」
竜星が社員をにらむ。
「2人で交代で見回りには行ってましたよ。」年長者が気を使って話す。
「頻度は?」竜星が不機嫌に聞く。
「まあ、3時間に1回ですかぁ〜」
「保守点検業務で採用されてるはずでは?
お話聞いてると見回りだけのようてすが?」竜星が書類と本人達を見比べてイライラしてる。
こういう所を見るといかにも官僚臭がする。
正社員と契約社員の年長者が顔を見合わせ、
「名目上、その名称で人を配置するよう言われてますが、こんな田舎で集まりませんよ。
わしらは見回りや掃除しか出来ません。
二宮さんにマニュアル見せたらあっという間に覚えてしまって。
本当に助かってたんですよね〜」
まだ、仕事仲間は夫婦に戻って来て欲しそうだった。
「…話にならない!
この内容は、そちらの上に上げて絶対再稼働止めますから!」竜星がキレ気味に話す。
「そんなあ〜正社員採用して、すでに研修はじめてますよ〜」正社員は文句を言う。
「2人は、小型の軽とトラックで来てましたよね?
何か荷物を乗せて来てましたか?」悠馬が質問する。
「う〜ん、トラックの荷台はいつもホロかけてあったからなあ〜
奥さんの軽も後席はミラー窓で中見えないし」契約社員達はお互いに顔を見合わせる。
皆、困惑し動揺している。
ほとんど茶畑などの農家の人達で農閑期の小遣い稼ぎで働いていたのだ。
帰り道、明らかイラつきながら竜星が先頭を歩いていく。
後から竜星のバッグを持った悠馬が続く。
「見事にお役所仕事だったな…」悠馬が肩で笑う。
「絶対、再稼働なんかさせない!
悠馬くん!ノーパソ出して!」竜星が片手を出す。
「あれ?使わないんじゃなかったんでんすか?」と言いながらパソコンを渡す。
「内閣府通して書類上げる!
絶対このまま再稼働なんかさせるか!」
珍しく竜星がカッカしていた。
「じゃあ、俺らは2人の車でも探しま…」と悠馬が言いかけたが、竜星が指でハイヤーに乗れと合図する。
「君等は僕の警備も仕事なんだよ。
絶対単独で動かない!いい?」
悠馬を前に乗せ、後部座席で春の横でスゴい勢いでパソコンを叩き出した。
「すごいな。めちゃくちゃに叩いてるようにしか見えない!」
後ろ向きにその様子を見ながら悠馬が感心する。
「あんたもこのスピードで打てないとガサ入れ後の打ち上げ行けないんだよ?
分かってる?」春がため息まじりに悠馬にうながす。
「ムリ!」悠馬が諦めたように前向きに戻った。




