18
「良い感じじゃない?
鼻持ちならないと思ったけど
割と優しいじゃん!」莉夏がキラキラお目々で見つめてくる。
居る間は警戒してたが、好奇心が抑えられないようだ。
「結局会う約束してた子、殺されたんでしょ?
会えてるもんだと思ってたからガクブルだったよ!
春は大丈夫なの?」莉夏が心配してくれる。
「ありがとう、大丈夫だよ。
それより話がどんどん大事になって、ちょっと私のキャパを越えてきたよ。
あの人にも協力してもらわないと!
だから、今日は私の考えを聞いて貰いたくて来たの。」
何も説明しないでも莉夏はうなづいてくれる。
「良く分かんないけど、あの人、春の事気に入ってると思う。
あなたを守ってくれると思う。」莉夏がまた春の手をしっかり握る。
そう言えば、竜星もそれらしい事を言ってた。
まさか冗談だとは思うが…
「とにかく死なないでね!
あの18の夏みたいに、絶対生き抜いて私と一緒に年取ってね!
それだけは約束して。」
莉夏の手の暖かさが勇気に変わる。
「簡単には殺されないよ!安心して!」
春は約束した。
翌日、悠馬と一緒に署長室に呼ばれた。
「失礼します!」頭を下げて中に入ると署長と竜星、
そして部長も居た。
係長である竜星が前に出て説明する。
「すでに橋立容疑者は、都内には居ない可能性が高くなった。
そして二人の同期ですでに警察を辞めてる彼らと合流して静岡に潜伏してるようだ。」
見せられた写真は同期の二宮夫妻だった。
「3年前に結婚して、農業がやりたいと都の支援受けて移住してます。
彼らが橋立教官と?なんでだろう?」
写真を受け取り春が首をひねる。
そこまで話すと竜星は後に引き、部長が前に出る。
「それでだ、組対は大仕事終わってしばらく若手の潜入捜査段階なので中堅の2人には橋立教官を探し出し
出来れば…穏便に説得を試みて欲しいんだ。」
難しいのは分かっているようで、部長の顔は険しい。
「2人は橋立君の秘蔵っ子だ。
娘さんを失って辛いだろうが、君等2人の成長は楽しみにしていたと思う。
君等から説得されれば、万に一つ止めるかもしれない?
同期の仲間も君等の能力の高さは十分知ってると思う。
2人なら、止められるかもしれない?」
部長がいつもより難しい顔で話す。
や◯ざの方が簡単かもしれない。
警察の最大の敵は、警察かもしれない…
「明るみになると都庁も警察も痛手を負う。
何とか秘密裏に解決してもらいたいんだ。
すでに2人の警官が命を失ってる。
これ以上被害が広がらないようにしてもらいたいんだ。頼む!」
署長が深刻な顔をしている。
「警察庁も事態を深刻に捉えて、もし橋立が計画を止めてくれるなら、全てを不問にすると言ってます。」
竜星が語る。
「全部無かったことになるんですか?」悠馬が睨みながら質問する。
「今日子ちゃんが生き返る事は無いのに…」悔しそうだ。
「輪島父娘だってよみがえらない。
これ以上、人が死んでも誰も喜んだりしない!
悲しみが広がるだけだ!」竜星が返す。
「お二人には私も同行します。
橋立容疑者と約束を取り付けるには、私も要るでしょう。」竜星が前に出た。
「そんな!!!」春と悠馬が動揺する。
「危険すぎます!」思わず署長と部長の顔を見る。
2人は顔面蒼白だ。
「私の研修の重要なミッションとして本部の許可は取りました。
都知事も支援を約束してくれました。
そして、これに成功すれば次期副総監候補に私が推薦されます。」竜星が涼し気に笑った。
昨夜、ラウンジから離れてから、これだけの根回しを一晩でしたのだ。
なぜか署長が席を立った。
そして竜星が座る。
「非常事態なので、警察法71条により私が臨時の港湾署署長となり
この事案に対処する決定が下りました。
つまり、私の作戦に逆らうのは警務違反です。
分かりましたか?」
竜星が2人を見据えた。




