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うしろの風子  作者: 聖いつき
47/49

エピローグ  仲良く並んで(1)

   供 述 調 書 


 私は、美しが丘高校二年生の桜台風子といいます。

 今日は、私が九月に高校の階段から落ちて大ケガをしたときのことについて話します。

 私はクラス委員長なので、いつも放課後になったら教室の鍵掛けをするのが仕事です。

 でも、階段から落ちた日は、入部している吹奏楽部の倉庫整理があったので、私は教室の鍵はあとで掛けようと思って、放課後になってすぐ音楽倉庫へ向かうことにしました。

 音楽倉庫にはまだ誰も来ていなかったので、まだ少し時間があるなと思い、それなら急いで教室の鍵を掛けに行こうと、私は鍵を取りに職員室へ走りました。

 どうしてできることなら教室の鍵を先に掛けようと思ったかというと、少し前に、私が鍵を掛け忘れたのを先生に見つかり、それを永岡くんが「その日は自分が代わりに掛ける担当だった」と言って、私を庇って先生に叱られたことがあったからです。

 永岡くんは、私がクラス委員長になったときに、私が自分で副委員長に指名した男子です。

 彼はいつも冷静で、小さなことでもちゃんと真剣に考えてくれて、どんなときも私を気遣ってくれます。

 そして、職員室で鍵箱を確認すると教室の鍵が無かったので、いつまでも鍵を取りに来ない私に先生が怒って鍵を持って教室に行ったんだろうと思い、私は慌てて教室へ走りました。

 でも、教室に着くと、鍵はもう掛かっていました。

 そして、そこから私が上って来たほうと反対の階段のほうを見ると、廊下のずっと向こうを歩いている永岡くんの後ろ姿が見えました。

 私は、すぐに永岡くんが私の代わりに鍵を掛けてくれたのだと分かり、せめて鍵を職員室へ返却するのは自分で行こうと思って、さらに走って永岡くんを追いかけました。

 階段の直前までたどり着いたとき、永岡くんはもう階段を数段下りていましたが、後ろから走って来た私に気が付いたらしく、彼は立ち止まって私のほうを振り返りました。

 私は、永岡くんに「ごめんね。鍵は私が返しに行くから」と声を掛けたのですが、なぜかそのとき突然、目の前が真っ黒になってしまったのです。

 そのとき私は、音楽倉庫からそこまでずっと走りっぱなしだったし、まだ気温も汗ばむくらい高かったので、もしかしたら熱中症のような症状を起こしてしまったのかもしれません。

 そのあと、私は完全に気を失って、階段の一番下まで永岡くんの横を転げ落ちて、さらに救急隊の人たちに病院へ運ばれたそうですが、私はそのことをまったく覚えていません。

 次に気が付いたのは病院のベッドの上で、両親や永岡くんから一か月半くらい意識不明だったと教えてもらい、とても驚きました。

 警察の人から、私の制服からいくつかのDNAが見つかったと言われましたが、何人か思い当たる人が居るので話します。

 実は、永岡くんとはクラス委員の仕事だけではなくて、個人的に交際もしていて、他の友だちに比べると一緒に過ごす時間も長いので、彼のDNAは見つかることがあるかもしれません。

 それから、永岡くんを通じて仲良くしている、彼の幼馴染みの御笠雅ちゃんと、ちょうどあの階段から落ちた日の昼休みに廊下でふざけてハグし合ったので、彼女のものも見つかるかもしれません。

 このように、私が階段から落ちて大ケガをしたのは、私が突然気を失ってしまったせいで、誰かに突き落とされたり、誰かと揉み合いになって落ちたりしたためではありません。

 あんな暑い中を、気を失うほどに慌てて走り回った私が悪かったと、とても反省しています。

 私が突き落とされたかもしれないということで一生懸命に捜査をしてくれた警察の方や、捜査に協力をしてくれたたくさんのお友だちや関係者の方々には、本当に申し訳なかったと思っています。

 二度とこのようなことがないように注意します。


          桜台風子



 以上のとおり録取して読み聞かせたところ、誤りのないことを申し立て署名押印した。

   二日市警察署

   司法警察員巡査部長    

          諸田桃子








「ただいまー。母さん、突然で悪いけど、風子を連れて来た」

「ただいまー、じゃなかった、おじゃましまぁーす」

 風子に付き添って警察署へ行った帰り、風子がどうしても僕の部屋に来たいと言うので、今日の放課後はお部屋デートとあいなった。

 玄関へ出て来た母さんが目を丸くしている。

「ああっ、風子さん? いっ、いらっしゃいっ! ちょっと光平っ、連れて来るならちゃんと言っておいてもらわないと」

「あ、お母さま、いきなり戻って来てごめんなさい! そうだ光平、この前買ってた本、見せてもらってもいい? 机の一番右にあるやつ」

「え? いいけど」

「あれ、ずっと見たかったのよねー」

 そう言って勝手知ったる他人の我が家よろしく、タタタッと階段を駆け上がる風子。

 母さんがさらに目を丸くする。

「えっと……、戻って来てって……、風子さん、今日初めてウチに来たのよ……ね?」

「うん。物理的にはね」

「物理的?」

「お母さまっ、お構いなくぅー」


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