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うしろの風子  作者: 聖いつき
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4-1  ついに見えた! うしろの風子(1)

 再び『うしろの風子』と話すことができるようになった、あの夜。

 あれから愛は昏睡状態に陥ったままだけど、その状態は、『死を待つ昏睡ではなく、長い睡眠がずっと続いている感じ』だとお医者さまが話していた。

 実は、風子のお父さんも、風子の状態について同じようなことを言っていた。

 頭部を強打しているけど、脳挫傷のような回復が容易じゃない損傷はなくて、他の生理機能はぜんぶ正常なのに、意識だけが戻らない状態だって。

「は? 風子の見舞いに行きたいって?」

「どっ、どうしてそんなに驚くのかしらっ」

「いや、一緒に学校へ行きながら話があるっていうから何かと思えば……。雅は風子とまったく接点なかっただろ」

「接点がなければ見舞いに行ってはいけないというの? その……、霊視よっ? 桜台風子を間近にして霊視をしたいのよ。そうすれば彼女が階段から落ちたわけが分かるかもしれないわ」

「しかし、それがもし雅が専門の妖怪変化のせいだって分かったら、それからどうするんだ?」

「それを基に、こうちゃんが犯人ではなかったと皆に知らしめるわ」

「誰がそんなの信じるんだ」

 天高く、気付けばもう十月も半ば。

 自転車を押しながら、雅と並んで歩く神社の境内。

 この境内を囲む木々たちも、もうずいぶん秋を奏で始めている。

 今度の週末は、『夏忘れ祭』だ。

 この神社で行われる、季節外れの夏祭り。

 見ると、参道の端には電源用のコードなんかが取り回されていて、普段はとても静かなこの場所も、祭の準備に向けてにわかに活気付き始めているようだ。

 雅には、まだスマートフォンの中の『うしろの風子』のことは話していない。

 いままで霊障や霊視の相談を山のように受けて来た雅だから、この不思議な現象のことを話したとしても、たぶん驚いたり恐がったりすることはないと思う。

 しかし、おそらく、話せばお祓いが必要だとか言い出して、変な儀式でこの大事な風子のスマートフォンを壊してしまうのがオチだ。

 もう少し様子を見て、最も危害が少ないと思われるタイミングで話そう。




「はぁ……、次は問題のホームルームであるな。永岡よ。大丈夫か? またブーイングの嵐になるのではなかろうか」

「大丈夫だ。それに、今日は僕のほうからみんなに話したいことがあるし」

 振り返った前席のハルダ。

 やや心配そうに眉根を寄せている。

 ハルダには、『うしろの風子』と再び話せるようになったことを、あの夜すぐに連絡した。

 週明けの今日は、久しぶりの風子との登校。

 風子は今日も元気いっぱい。

 一日中、イヤホンの奥でいろんな話をしてくれた。

 ただ、やはり自分自身でも、『うしろの風子』と『病院の風子』の関係はよく分からないらしい。

「そう言えば、雅どのが『リアル風子』の見舞いに行きたいと言ったのは本当なのであるか?」

「うん。どういう了見かよく分からないんだが」

「ううむ。雅どのはあるとき突然、わけの分からぬ儀式を始めるからな。ともすれば『リアル』の病状が悪化しかねないのである。とりあえず、放課後の『SSS』のミーティングでやんわりと説得しよう」

「その名称、意外と気に入ってるんだな。悪いけど、今日、僕は行けない。諸田さんがなんか用事があるらしくて放課後ここへ訪ねて来るんだ。そして、それが終わったらすぐ愛の病院だ」

「それなら小生も病院へ行くのである」

「残念だが家族以外は面会禁止なんだよ。それに、だれが雅の相手をするんだ? 雅はハルダが居ないと機嫌が悪くなるんだぞ?」

『そうよー。雅ちゃん、すっごくハルダのことお気に入りなんだからー』

 突然、スピーカーがオンになって入った、『うしろの風子』の合いの手。

 ハルダが「うわ」と言ってのけ反る。

「いきなり『バーチャル』が喋ると驚くのである。もう少しまろやかに入れんのか」

『なんですとー? あたしはさっきからずっとここに居たもん。それに、なに? その「リアル」とか「バーチャル」とか。なんかエッチくない?』

「そんな想像するほうがエッチなのである。しかし、永岡よ。よくそのスマートフォンを委員長の御父上が貸してくれたな」

「ファイルのコピーをしたいと言ったら貸してくれたんだ」

「システムファイルだな?」

「うん。今度こそ、『うしろの風子』の謎を解かないと」

 意外にも、風子のお父さんはこのスマートフォンを快く貸してくれた。

 特に期限も言わず、「キミが持っていてくれれば、きっと風子も喜ぶと思う」と言って。

「そうだ、風子。一応、見られたら嫌なとこ教えといて。そこは除外してコピーするから」

『え? ぜんぶ見ていいけど』

「でも、その……、女子的にマズイものだってあるだろ」

『ううん。ハルダには嫌だけどぉ、光平にはぜーんぶ見せちゃう♡』

「んんっ、ばか。変な言い方するな」

『うふっ』

「なんなのだ? この意外に高い破壊力はっ!」

『ハルダ、顔が真っ赤』

「うるさいっ、男の純情をもてあそぶでないっ! とにかく、永岡はとりあえずは物理室に来るのである」

『あっ、先生来たよ』


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