プロローグ
東京都千代田区秋葉原。
華やかな建物が並ぶ街中を、2人の女子高生がミルクティーを片手に、話しながら歩いていた。
「ねぇねぇ、“FREE UNITE”って知ってる?」
「フリーユナイト?何だっけそれ?」
一方の少女が首を傾げる。
もう一方の少女は相当噂好きなのか、ニヤニヤしながら続けた。
「最近ネットで話題になってる謎団体だよ。たまに問題起こすこともあるけど、悪い奴ボコったり、面白いイベント開いたりしてけっこう盛り上がってるんだよね」
「そう聞くとなんか楽しそう。規模的には大きいの?」
「そりゃあもう。ちなみに有名人とかの中にも“FREE UNITE”の団員居るみたいだよ。あの暴露系ユーチューバーのB.Uも団員なんだって」
「あっ、そう言えば何度か動画の中で言ってたかも。“FREE
UNITE”って」
「そうそう。B.Uだけじゃなくて、そのファンもね。“FREE UNITE”として協力して、悪い奴やっつけるのがいいんだよ。他にもファンと似たような関係のユーチューバー居るよ」
「その繋がってる感じ、やっぱり楽しそう!」
「そう、そこが醍醐味なのよ!“FREE UNITE”って、自由に団結できるって意味あるから」
「……なんかさ、アンタやけに詳しくない?」
「だってあたしも“FREE UNITE”入ってるし」
「えっ?」
一方の少女が素っ頓狂な声を上げる。
「マジで?」
「マジマジ。アンタも入れば?いろんな人と繋がれるよ」
「う〜ん…一応入っとこうかな?……ってかどうやって入るの?」
「“FREE UNITE”の公式サイトで入団申請するだけだよ。ちなみになんか問題起こしたり迷惑かけたりしたら退団させられるかもだから気をつけて」
「退団されるんだ」
「まぁ、団長って基本心広いから、相当悪いことしなけりゃ大丈夫だって」
「じゃあ見てるだけに留めとこうかな……。ていうか、団長って誰なの?」
「う〜ん。それが正体不明なんだよね〜。“FREE UNITE”最大の謎って言われるくらいだし。その辺は団員の中でもいろいろ考察されてるよ。無職のオッサンだって噂もあるし、政治家だって言う説まである」
「何それ怖い……」
そんなことを話している2人の横を、とある少女がすれ違った。
濃いピンク色のパーカーを着ており、猫耳が付いたフードを被っている。
顔立は整っているものの、右目に眼帯を付けていた。
その少女は両ポケットに手を突っ込み、少し冷めたような表情で歩き去って行った。
2人の興味は、すぐにその少女へと移った。
「ねぇ、今の子」
「ねっ、可愛かったよね。格好派手すぎだったけど」
「ピンクの猫耳パーカーに眼帯って……。派手っていうか痛すぎでしょ。私だったら無理」
「私も〜。ホント感性どうなってるんだろうね〜」
すれ違った見ず知らずの少女をボロクソに評価する2人。
その少女こそが、“FREE UNITE”の団長であることを知らずに。