エルフの里19話 戦闘開始9 昇華
カミト視点
一旦体制を整えるため、魔力障壁を四人の周囲に貼った。
キメラの方も、負った傷口を治すため翼を動かしながらも攻撃はして来ない。
「シルフィーは後方からの支援、それをアクアは守ってくれ」
「分かりました!」
「ん。折角来たのに力になれず、申し訳無い……」
「そんな事は無いです! 私の命を助けてくれたじゃ無いですか!?」
「……そう、だね。ありがとう、シルフィー」
女子二人の会話を一瞥し、再び口を開く。
「クロロは俺と一緒に、キメラに接近しての攻撃。主力だ」
「うむ。承知した。あと、一つ主人にしてもらいたい事があるのじゃが……」
「今出来る範囲でなら、受け付けるぞ」
耳元まで近づき説明するクロロ。
聞き終わる。やれなくもないが……
「本番で失敗しても俺は責任を取らないぞ?」
「大丈夫じゃ、よろしく頼むのぅ」
■□■□
「グォォォォッッッッォオッ!」
「動き出したか」
「ん。ほぼ回復した感じ」
空中から四人を見おろしている。準備は出来てるってことだな
「三の合図で障壁を解くぞ。三……二……一……、行動開始!」
「はい!」
数字からのタイミングと同時に走りだす。
クロロは腰から剣を引き抜き、クロロは影に溶け込む。
まずはあの翼をどうにかするべきだな。
「作戦通り息を合わせて行動するぞ、相棒」
「うむっ! 奴を地上へご招待じゃ」
二人は地面を蹴り屋根上に飛び移った。
キメラは傷を瞬時に癒す事が出来る。
与える一撃を重くしないと意味がない
「クロロ、分身体は最大どのくらいまでなら作れる?」
「そうじゃのう…..体力的に考えて、五十程度なら可能じゃな」
「それなら問題無い。後は話し合った通りにな」
一言残すと、クロロの言葉を聞かず飛び出す。
ダークキメラは、向かってくるカミトに対し、余裕だといわんばかりに、尻尾を放って近付かせない。
「グオオッッ!!」
「よっとっ」
背後からせまってきた黒色の鞭。
今振り返っても間に合わない。
服に付いている血を力に変え、上手く操り横から切り倒す。
「グオッツオオオオッ!」
「一応痛覚は伝わっているのか」
キメラの表情がしまる。
やられた腹いせか、翼で風の刃を放つ。
が、そこにカミトの姿は見当たらない
「どこを見てるんだ?」
後ろから声が聞こえた。
モンスターは、首を動かし振り返ったその時。
左翼に激痛が走る
「グォォォォッッッッオォォッッッ」
痛みが伝わる部分へ目をやると、いつの間にかカミトがいるではないか。
「流石に剣で切断しようってのは、無理があるか……。 それならっ」
「グォォォォッッッッァァァァァア」
キメラは悲鳴にならない悲鳴をあげた。
翼が燃え、凍る。
表面は予想以上に頑丈らしい。
カミトは剣に、火属性と水属性を交互に使用して無理に刃を滑らせていく。
「っ、切れたな」
「グォォォォッッッッ!!」
「再生はさせないぞ?」
氷魔の手を使い、すぐさま切断された部分に氷を作る。
翼に瘴気が集まってくるが、凍らせた部分は再生不可能。
「シルフィーッ、アクアッ」
「はい!」
「ん」
カミトは地上にいる二人に声を掛けた
シルフィーは焔を宿した弓矢を引き、アクアは水の分身を用意する。
片方にバランスが偏ったキメラは、今にも墜落しそうな飛行機のようになっていた
「うがて炎焔!」
「斬る」
下へと落ちていくカミトとすれ違う矢と分身。
矢は翼に当たると全体に燃え広がり、アクアの分身は次々と切り口を増やしている。
「グォォォォッッッッァァオォォ」
右翼がキメラの体からは離れた。
アクアのスキルにより、本来回復すべき部分が凍りついていて再生力は無効。
空を飛べなくなり、重力に引っ張られる。
なす術なく、地面と激突。
「よし、最後の仕上げだ。クロロッ!」
「分かっておる」
カミトの影から飛び出し、目の前でキメラを捉える。
あちらもこちらの視線合わせた。
気のせいか、寂しさを感じさせる瞳をしている。
「不死身ゆえに辛い生だのぅ……せめてものむくいを受け取るのじゃ」
モンスターの正面へと進むと、クロロは重い口を開く
「これで終いじゃからのぅ……『雷神影牢」
唱えると、キメラを中心として影が這うようにして広がっていく。
巨大な体を覆うまでの大きさになると、地面から生気を奪っていくかの如く、次々と現れて不気味な鎖が全身を縛りつけた。
「グォォォォッッッッァァァァァアオォォッッッッ」
瞬間、空に電気柱が走る。視界が光で塗り潰される。
それは瞬きをする間もなくキメラに直撃する。
よくよく見ると、雷では無く槍が刺さっていた。
目に見えるほどの電気量を周囲に放っており、まるでこの世の物とは思えない。
「主人に特製の魔法が、ここまで強力とはのぅ……」
既にキメラは焼き焦げた肉片と成り果てていた。
この魔法は戦闘前、クロロカミトに頼んで世界で一つとない魔法だ。
「ま、とりあえずは終わった、な……」
「じゃな」
「ん」
「はい!」
日が昇り、キラキラと輝き出す。
まるで四人を祝福しているかのようだ。
こうして、一連の厄災からカミト一行はエルフの里の危機を救うことに、成功たのであった
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