エルフの里17話 戦闘開始6 不穏な
カミト視点
「ぐはっ」
渾身の一撃を喰らい、意識が途切れた。
地に倒れたカミトへと近付く足音が聞こえてくる
「人間にしては強かったけど…。イマイチだったわね」
「ゴオオーン」
「ゴロウも同じ? そうよね....まだ何かを隠している感じがするのよ」
ルネラは納得しない様子で一人呟く。 しかし、その人物は既にこと切れている。
「考えすぎかしら...? まあいいわ。先にこの子を処理しといて損は無いはずだから」
「ゴオゴォーッッン」
「そうね、そろそろあの二人も終わるだろうし、帰るとしようかしら」
その場を立ち去ろうとカミトに背中を向き直すルネラ。
首だけ後ろに動かし、一瞥した。
「さようなら」と小声で発すると足を進め始める。
「シュッ」
鋭くとぎすまされた一風。
一筋の風がルネラのほおをなでるかのように通り抜ける。
いつの間にか、彼女の唇には紅い液が滴たれていた。
「確かに死んだはずなんだけどね。カミト君、貴方は一体何者なのかしら?」
ルネラは愉快そうに笑みを浮かべながら、振り返った。
「それがカミト君の本質的な姿なの? それとも、別の人格だったりして」
彼女の目の前には、その場で立ち尽くしているカミトの姿が見える。
一つ、先程までの彼と違う点を挙げるとするのなら、左目が光を放っているということ。
「おしゃべりは嫌い? 私は好――」
「ゴォォーッッ!!」
「ゴロウ!? 辞めなさいッ、今のカミト君は何かおかしいわっ!」
瞬間。主人であるルネラの声に見向きもせず、ゴロウは攻撃を仕掛けようとする。
まるで本能が危険を察知したかのような様子。
そのままカミトへ向けて、岩のようなゴツゴツした物を口から数発撃ち込む。
その内の一個でも身体に直撃すれば、エンドロール突入間違い無い
「コオォツッーン!!」
カットは危機的状況の中、何も発っしないまま右腕を前に出す。
その時、同時に数個の投擲物が身体に向かって落ちてきた。
辺りに舞う土埃が視界を奪う。
「何も、しない? どういうことかしら……」
「ゴォッ?」
「手ごたえが無いいや、そんなことはまさか――」
「……メキメキ」
「えっ?」
視界が回復したルネラは、正面に映っている光景に息をつまらせた。
岩の一部が空中で静止している。いや、正確には、カミトの目の前にまで迫ってきていた岩全てが、止められている。
「……」
「なる、ほど。どうやらこっちの姿が本気なようね……」
「グゴォォォ」
場は静かさで支配されていた。
ルネラはそのプレッシャーからか、冷や汗が溢れ出てくる。
「メキッ」
「……」
「私も本気で相手をしなければならないわね……」
カミトが手を振り下ろすと、逆再生するかのように岩達がゴロウの方へ飛び放たれる。
「ゴォォッッッん!」
「そうはさせないわッ」
咄嗟にルネラは足に力を入れ、地を飛ぶ。
彼女はモンスターの前へと着地し、下の土を一蹴した。
瞬間。くねった茎が地面から生え、赤いつぼみや棘のある植物が現れる。
まるで薔薇の花のようだ。
「私がスキルを使ったのは、これまでで三人しかいないのよ。カミト君は四人目、本気で対処をしないといけない相手だと判断したわっ」
「ゴォォッッッッン」
薔薇は一瞬で、巨大化して高さ数メートルのバリケードとなった。
向かってきた投石物は全て植物の壁により、粉々に割れて破片が散り散りになる。
「行けっ、花達よッッ!」
「……」
次々とカミトの周囲からは薔薇が生え始め、すぐに牢獄が出来てしまう。
それでも、彼は特段漁る様子もなく未だ一言も話さない。
「……そう、何もしないのなら私から行かせて貰うわよッ!」
「ゴォォッッッッンン!!」
「……」
ルネラの言葉と反応するように、花達は自由自在に動き、カミトの身体を拘束する。
棘が皮膚を破り、次々と血が流れていく。
「勝負あったわね。ゴロウーー」
「パチンッ」
指を鳴らす音が辺りに響き渡る。
その瞬間。植物達は茎が全て八つ裂きに切り刻まれ、地面に落ちていく。
「パチンッ」
「な、何をする気なの……。っな!?」
二度目の鳴らし音により、カミト自身の身体に負わされていた傷が、まるで無かったかの様に癒えた。
「な、ななななんなのよ……」
「……」
ゆっくりと剣を手に持つカミト。
ただ構えただけなのに、そこから放たれるプレッシャーが尋常では無い。
常人ならば、泡を拭きながら倒れてしまう程かもしれない。
「剣を手に戦え、ということ、ね……」
「……」
「いっ、良いわ。受けて立ちましょうッ。カミト君、貴方の本気を見せて頂戴なッ」
走り出すルネラ。それに連呼してカミトも足を動かし始めた。
「パキンッ」
「なっ、中々の腕前だわっ」
二人の剣先が合わさり火花が飛び散る。
そのまま数で押し切ろうと、剣を踊らせるかのようにひたすら振り翳した。
何十、何百と猛攻を仕掛けるも、その全てが防がれてしまう。
「ほ、ほんとにカミト君は人間なの……?」
「……」
ここでカミト自ら攻撃に転じ、空中でルネラを飛び越えながら剣を軽く振り下ろす。
「なっ!?」
「バキバギ」
ルネラその攻撃を防ごうと剣を横に突き出す。
が、不快な音を出しているので、視線を刃に向けるとヒビが入り始めていた。
「ば、化け物よ、貴方……」
「バケモ……、ナイ。チ、ニ……モタ……ス。モノ」
「何言ってるのかしらっ?」
彼女の背後へ着地したカミト。
そのまま振り返ると同時に剣を一閃。
がしかし、振り向くと薔薇の壁があり追撃に失敗する
「面白くなってきたわね。こんなに強い人間はそうそう居ないもの。楽しむべだわ」
「……」
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