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エルフの里9話 遂に里へ

「……確かここら辺で一瞬村みたいなのが、見えました!」


「何の変哲も無いけど……やはりそれだけ魔法の効力が強力ってことだな」


地べたに着陸し、おおよその場所から歩いて探索する。


「もう一度主人の魔法を使用してみるのじゃ」


「そうだな。MPは残り三分の一ってところか……、

もしもの時用の分は置いておきたいが、仕方無いか」


手を真上に振り上げ、魔法陣を出現させる。

 その一秒後に魔力による障壁を展開させた。


少しずつ足を前進させると共に、MPも注ぎ込んで行く。


「あっ! ああありました……!」


「あそこだな。ナイスだフィーナ」


笑顔でカミトが、親指を立てて声を掛けた

 かけられた当の本人は、頬を赤くしながら俯いている。


「目的地は無事発見出来たし、行ってみようか」


「うむ。我も数百年生き抜いて来たのじゃが、エルフの里なら場所へは見たことすら無かったからのぅ。

楽しみじゃわい」


「エルフの里と言っても、それぞれ個別に住処を形成してるので、いくつか分かれているんですよ」


「シルフィーはヒーナ達とは別の里育ちって言ってたもんな。その内案内して欲しいよ」


カミトがなんとなく発した言葉に、シルフィーは若干の苦笑いをしながら……


「は、はい……。機会があればぜひ」


バツの悪そうに顔ごと逸らして答えた。

 体調でも悪くなったのだろうか?




と、これまた急に天気がまるで悲しんでいるかのように曇ってきた。

 これは一雨降りそうだな……早く里へと入ろう


「天気が崩れけている。みんな早く急ごう」


「わっ、わかりました!」


「承知した」




■□■□




水浸しになる前に、危なげなくエルフの里目の前へと到着した。


 どうやってこれから入るかというと……


カミトは広げていた障壁を、パーティー全員が丁度入るくらいに、周囲数メートル限定に展開させた。

 そして、ただ目の前に広がっている草原目掛けて、前進していく。


「パリンッ」


ガラスが割れたような音とともに、視界がぐにゃぐにゃと波のように曲がっていき……。

 先程まで草原だったはずの場所が、一瞬で村のような空間へと変わってしまった。


「どうやら侵入成功のようだな」


「全く、結構強引なやり方じゃったのぅ」


周囲に張られているカミトの魔法が、不可視の魔法と接触し、無理矢理エルフの里への道を開かせたのだ


「そんなこと言われたってーー」


「そこまでだ侵入共!」


「うむ?」


長細い耳をした人物達が、突然どこからともなくカミト達を囲む。

 背中から弓矢を取り出し標的をこちらに向けてくる。

 と、リーダーと思われる若い青年が代表して一歩前に出てきた


「おいお前ら、ここはエルフの里だ。他所の者は入れる訳にはいかない。あと五秒数えよう、その間に立ち去るのなら我々も何もしない」


「は? いや、俺達はここにいる二人のエルフ達に頼まれてだなーー」


「黙れっすッ! あと三秒、二秒、一秒……。どうやら、馬鹿な奴らだ。人の忠告は聞くものっすよッ!」


目の前にいた青年エルフの一言で、周囲から矢が放たれてくる。

 あちらも突然の来訪者が来たため、パニックになっているのか話を聞く耳を持たない。

 

「人の忠告は聞くものか……。お前らエルフは自らの家族仲間を殺す、誇りもプライドも無いただの獣なのか?」


「言い訳無用っす!馬鹿な奴らに目にもの見せてやれッ」


「これは制圧してから説明するしかないのかのぅ……。どうするぞ主人」


雨のように降り注ぐ矢を障壁で防ぎながら、考え込むカミト。

 もしここで周囲のエルフを倒した場合、里全体も俺達を敵と判断して話し合いにならない可能性がある。 

 それよりも、ヒーナとフィーナ達の仲間を傷付けたくはない。


「うーん……。仕方無い、少し黙らせるか。クロロ、耳を貸してくれ」


「……なるほどのぅ、了解じゃ」


「何をするんですか……?」


「安心してくれ、無力にさせるだけだ」


不安そうな顔をするシルフィーをなだめ、クロロに説明した作戦に移る。

 

「な、なんで矢が全て当たらないっすか!?」


「り、リーダー! これはなんだぁッ。手と足が動かせないぞ……。これじゃあ弓を引けねぇ……」


「う、うわぁっ!?」


黒い触手と水色の触手により、手足を拘束され身動きを取れなくなっていくエルフ達。

 これは、マーキュリー神国でのギルド戦と同じ魔法を使った、クロロとカミトのせいだ


「……最初に言っておく。俺達全員は、この里を襲うためとか、攫う目的で来た訳じゃ無い」


「嘘つけっす! 大体ーー」


「俺達は弓矢を放たれても一切反撃をしなかった。それどころか、今既に殺せる状況下にありながらも、こうして話を続けている。少し聞いてほしい」


「……」


エルフ達は次第に鎮まった。

 カミトの言う事に心当たりがあったのだろう。


「里に来た目的はヒーナとフィーナつまり、ここ生まれ育ちのエルフ二人を、故郷に連れ戻しに来たんだ」


「私達は、食料問題を解決するために数ヶ月前、外を出歩いてました。しかし、ある日その所を奴隷商人に発見され、捕らえられました……」





カミトが話しかけた言葉に紡ぐように、あのフィーナ

が人前で堂々と事の流れを説明した。

 

「そうでしたか……。では、私達の早とちりでしたっす。この所、はぐれとなったエルフ達が多くなって来てて、つい頭に血が登ってたっす……」


「気にしないでくれ。一旦ここの代表の方と話がしたい。突然押し寄せて来て、無礼を承知できたのは俺達の方だしな」


「分かったっす! それじゃあ……」


「ふぉっふぉっふぉっ。ヒーナとフィーナよ、よく帰って来た」


いきなり目の前から別の声が聞こえたので、驚いていた。

 何やら杖を着きながらこちらに歩いてくる音が聞こえる。


「え、おじぃちゃん!?」


「お、おおおおじさま……」


顔が見れるやいなや、ヒーナとフィーナ姉妹がそんな事を言い放った。

 

「おじ、さま?」


「申し遅れました。私がこの里を仕切っている村長とでもいいましょうか、『ジルド』と申します」


目の前から現れたのは、今にも倒れそうな白髪のエルフだった。

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