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エルフの里6話 用事を済ませるために

街の中へ入ると、そこは街の外から見た壁だけの景色とは一変。

 

「どこの家も白いな……」


「うむ。宗教上の都合かのぅ」


「ん。聞いてはいたけど、凄い」


「なんか、この光景だけで絵になりますね」


首を左右動かし、街の様子を見渡す。

 形や大小は家々によって異なるが、屋根は青に赤や緑、壁は白色固定と独特な雰囲気を感じる。


名前に神国って書いているだけの事はあるんだな


「アクアはここでお別れかな?」


「ん。カミト達はエルフの里へ向かう?」


「ま、そんなところかな。数日は観光してから行くよ」


「そう。じゃあ、ここでお別れ」


「だな。少しの間だったけど、ありがとうな」


「お礼を言うのはこっち。みんな優しくて、楽しかった。ありがとう」


俺とアクアは握手をした。

 シルフィー達は涙目をしながらも、小話をしてお別れとなり、全員で手を振りながら彼女を見送る。


「次は僕が助ける番。困った時は頼って」


「その時はお言葉に甘えるさ」


言い終わるとアクアは、背中越しに手を左右に振りながら、去っていった。


襲われている馬車を見つけてから僅か数日。

 またどこかで会ったら一緒に旅をしたいな


「とりあえず、俺達は一旦休憩でもしようか。

個人的な用事があるから……みんなでどこかの喫茶店で食事でもしといてくれ」


「分かりました!」


「お供するぞ、我が主人よ」


女子陣は店へ、カミトとクロロは別行動という分け方になり、シルフィー達とは違う方向へと向かう。


「して主人、どこへ向かうのじゃ?」


「ん? 目の前に見える城だぞ」


俺達が通り抜けてきた城門とは正反対の、一番奥側に位置する街の象徴だといわんばかりの城。

 そこにカミトの用事があるのだという。


「あぁ……。イグリス王国にも城はあるのじゃが、こちらの方が外装も大きさも勝るのぅ」


「そうだな。リンネからマーキュリー神国に行くなら、届け物を頼むって言われて預かっててね」


「なるほどのぅ。して、その内容は?」


「手紙だな。友好関係を保つとかどうとか……」


カミトが喋っていると、ふと何かを思い出したように言葉を続けてきた


「そういえば、検問の兵士が勇者召喚とかなんとか言ってたよな? あれどういうことだ?」


「いや、我にも分からんのじゃ……、ぬ? あれじゃないかのぅ」


クロロが突然走りだす。カミトもそれについて行くように駆け出し、道沿いの隅っこに張ってあった一枚の紙切れを見てみる。  


「えーっと……『マーキュリー神国にて聖女様が、異世界の勇者を召喚する事に成功』勇者? 勇者って魔王に対抗するための存在をか……」


「ということは、魔王も長年の封印から動き出すのかのぅ」


「ん? それはどういうことだクロロ」


「どうもこうも、魔王がこの世に現れなければ勇者も召喚されない。奴らは比例関係にあるのじゃよ」


「なるほど。って、それは結構やばいんじゃないか? 国をたった一人で壊滅させる化け物が、復活するって事だろ」


「うむ。じゃが、封印を解くには相当の何月が必要じゃ。魔王が眠りから覚めただけで、今すぐにって事じゃないぞぃ。」


そこでクロロはどことなく真剣な顔になり、周囲に聞こえない程度で小さく呟く。


「にしても変じゃ。勇者は本来、魔王が破壊活動を開始して、初めて呼び出される存在。世界破滅の危機に陥った時にしか、女神アトラが直接世界に介入出来ぬはず……」


「どうしたクロロ? 何一人でボソボソと話しているんだ?」


「気にするでない。して、城へと向かうのじゃろ?」


「あ、あぁそうだな」


再び歩き出しても、狼は納得いかない様子。

 この時クロロは、一人予想していた。


ーー()()()()()()()()()()()()()()()




■□■□




「……はい、分かりました。これは上の方々に直接お渡しさせて頂きます。こんな遠い所まで御足労ありがとうございました」


「いいえ、我々も目的に行くまでの寄り道なので、気にしてませんよ。では」


「貴方の旅に幸運あれ。マーキュリー」


「アーメン」みたいな感じで俺に向かって、言葉をかけてくれた。

 宗教上の挨拶なのかな?


俺は一度お辞儀をしてからその場を去った。


「これで主人の用事とやらは済んだかのぅ?」


「うーん、正確にはまだ一つ残っているけど……」


「うむ? 一つでは無かったか。では、そちらへと行くのじゃ」





カミトが歩いて着いた先には、見覚えのある装飾の建物が。


「ギルドなのじゃな。これはもしや……」


「あぁ、イグリス王国ギルドマスターであるガイスから、届けてくれって渡された」


目の前にある木のドアを奥に押して中へと足を踏み入れる。


「内装も同じとは……。さっさと渡す物渡して帰るとするか」


「うむ」


野朗共が飲み散らかしているテーブルの横を通って、ギルドの受付員に手渡しする。

 用事は済んだので、ここを後にしようと足を動したその時。


「パリンッ」


「……我が主人に何をしたこの無礼者ッ!」


「確かに、これは何の真似だ?」


テーブル席からガラス瓶が、カミトに向かって投げられ、体に当当たり破片が地面へと飛び散る。

 投擲さへた方向に視線を向けると、そこには四人の男女がニヤニヤと、こちらを挑発するかのような笑みを浮かべていた。


「勝負と行こうや? クソガキ」

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