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エルフの里5話 マーキュリー神国へ

「うぅーん……」


「うむ。おはようなのじゃ、主人よ」


「ん、? お、ぉう。おはよう……はぁっ」


口に手を当てながら情けない声を漏らすカミト。

 

「って、ここ宿屋じゃ無かったな」


「それほどまでに居心地が良かったのじゃろうな」


昨晩作った土の家が思った以上に寝心地が良かった。

 保温性もあり、暑からず寒がらずって感じ。

魔法って便利だなぁと改めて思い知らされる。


「おはようみんな」


「おはようございます、カミト!」


「ん。」


「お、おおおはよぅ……ございます」


「カミトおにぃちゃんおはよー!」


リビングへと足を運ぶと、既にカミトとクロロ以外の全員が揃っていた。


「朝早くからご苦労様だよ。それじゃ、朝食にしようか」




■□■□




食事はシルフィーとカミトが作った。

 これは、単に二人が火属性を所有している為、料理をする都合上手っ取り早いのである。


「ん。カミトのご飯、美味しかった」


「アクアがそう言ってくれたなら、作った側としても嬉しい限りだよ」


「我も主人の料理はかなり気に入っておるぞ。その系統スキルを所持しているのかのぅ?」


「いや、特に持ってないけど……。まさか料理スキルとか、世界に存在しているのか?」


俺が今まで見てきたスキルは、どれもこれも戦闘をする前提でのサポート系統ばかりだったからなぁ。

 日常生活で使えるスキルがあれば、是非所持したい。特に自動で掃除してくれるスキルとか……。


「それなら、僕知ってる。国お抱えの鍛冶職人とか、料理人とか、稀に所有している人いる」


「そうなのか。よし、帰ったらリンネに紹介してもらおう」


「で、でも……。これ以上カミトの料理が上手になったら私の出番が無くなります……」


目をうつ伏せにしながら呟くエルフのシルフィー。


「交代制にでもすれば済む話だよ。さっ、そろそろ移動をする準備を始めようか」


「少々長話をしすぎたのぅ。了解じゃ」


話を良い所で切り上げて各自の荷物を『影』へと収納する。

 全員が建物の外に出た所で、一つ狼のパートナーに質問を投げかけた


「なぁ、この家ごとクロロが持ち運び出来たりはしないか? だいぶ気に入ってしまってな」


土で出来てると言っても街にある家と遜色無い大きさ。やはり無理かな……。


「なんじゃそんな事なら余裕じゃぞぃ? ま、普通なら『影』なんてリュック一個分しか入らん程度なのじゃが……」


「それはどういうことだ? 今回の旅路で数人分のを運んでいるじゃないか」


「その事なんじゃが……我も知らぬ、細かな条件がここまで収納を可能にさせているのじゃと思う。例えばーー」


「主人である俺のステータスを換算させることによって、入れることの出来る量も増える、とかか」


「……やはり頭が回るのぅ。我も同じ考えじゃ」


純粋な目で俺を褒めてくるクロロ。

 あまりそんな所で時間を割く訳にもいかないので、そろそろ仕事をして貰おうと考えていると……


「分かっておる。ほれ、食い尽くすのじゃ」


シャドーウルフの一言で、構えていた影達が一斉に土の家へ一直線に向かう。

 物の数秒にして昨夜立てた建築物は、見事収納された。


「ん。狼さん凄い」


「そ、それほどでもじゃ!」


「珍しくクロロが照れてる……。意外に可愛い所もあるんだな」





クロロのお陰で家ごと持ち運びできるというパワーワードで、その後の旅路は順調に進んでいった。

 それから一週間後……


「お、デカイ石の壁が見えてきたな」


「あれが恐らくマーキュリー神国ですね。予定の一ヶ月のところを十日もしないうちに着いちゃいました」


「主人のMPとスキルから使用できる荒技じゃの……」


「ん。僕の依頼も指定日にち以内に達成出来る。

カミトとみんなに感謝」


もし、俺達がアクアと合わなかったらそもそも彼女は死んでいたかもしれない。

 そう思うと、何かの縁とも思えてしまう程に偶然だな。


「しかし、何か兵士達の様子がおかしくないか……?

上手く言い表せないけど」


「確かに。僕もそう感じる。顔の筋肉が張っている」


「うむ? よく観察しておるなぁアクア殿は……」


「相手を見るのは戦闘において基本中の基本。僕の師匠が最初に教えてくれた」


当たり前のように言い放つ彼女だが、表情筋まで一眼見ただけで分かるのは、尋常では無い努力をしている証拠となる。

 

アクアは現Sランクだもんな……。

 俺みたいに女神からの授かり物と違って正真正銘の丹念の成果。心の底から尊敬に値する。


「ここで話し合ってても意味はないし、向こうへ進んでみるか」


「ん。そうする」


空中からの移動を城門手前で止め、地上に足を着けた。検問の列に並んでいる人々の視線が集まる


「な、なんだらあの青年は……。魔法陣を五個も展開してたぞ」


「主人はどこでも人気者じゃのぅ」


「流石はカミトです!」


「あはは」と笑いかけ、何とかその場を誤魔化す。

やはり同時に魔法を使用するのは、どこの国でも珍しいんだな。




城壁に設けられている検問に並び、順番を待つ。

 前の馬車が通り抜け、カミト達は一歩前へと進む。


「よし、それぞれ手荷物検査をするからーー」


「あの、すみません。これを……」


「何だ……ってまさかイグリス王国の紋章だと!?」


ギルドカードを兵士達に渡した。


「ん。カミトそんなの持ってるんだ」


「あぁ、ちょっとーー」

 

「なっ……、まさかその隣にいるのは水星の魔女と謳われているアクア様では!?」


「そうだけど」


二度も驚愕の悲鳴をあげる兵士達。

  一旦落ち着くためか一呼吸をし、言葉を発する


「ど偉い方々が揃って……という事は、()()()()記念パーティーに参加するのですか?」


「勇者召喚? って、異世界からの……」


「そうでございます。数日前にこの国の聖女様が召喚なされになった方々でございます」


俺達が一般の冒険者とは違うって知った瞬間、いきなり態度変えたな……。


「ん。僕達は少し縁があって一緒に来ただけ」


「さようでござますか。では、街をご堪能して下さいませ」


「あぁ、ありがとう」


兵士から了解を得て、マーチ状の石造門の下を通り抜けた


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