ダンジョン33話 ギルドマスターへ報告
「はぁ……。行くしか無いよなぁ……」
俺は今、フィーナから受け取った伝言を果たそうと、ギルドの前に来ている
「そんなに嫌なのかのぅ?」
「うーん、ギルド長がちょっとめんどくさい人でね……、苦手なタイプなんだ」
「ふむ。しかし主よ、こうして時を過ごしていても仕方が無いじゃろ? 男になるのじゃ!」
「もうなっているけど……」
「す、滑ったのじゃ。これは言葉の綾じゃ!」
「俺を元気付けようとしてくれたんだよな、ありがとなクロロ」
「ううむ」
確かに、クロロの言う通りこのままぼーっと立たずむだけでは、意味がないな。
止めていた足をギルドへ向かって進む。
「今日も相変わらずの賑わいだな」
「なんと……。ここがギルドなる物か」
「クロロは来たこと無かったのか。まぁ見た感じの通り、おっさん達が酒を昼間から飲む場所だ」
「う、うむ? そ、そうなのか……?」
「嘘だ。よし、行くぞ」
「違うのかのぅ!?」
右手側にある階段に向かい、足に力を入れながら二階へと上がる。
細い通路を真っ直ぐ進み、一番奥にある部屋の前へと到着
「ここがギルド長の部屋だ。まぁ、アポ取ってないけど大丈夫だろ、行くぞクロロ」
「う、ううむ……」
トントン、と二回扉を打ち鳴らす。
「はーい」と中から男性の声がしたのを確認して、取っ手を開く
「お、カミト君じゃないか。ここに来たって事は、ダンジョンを無事に攻略出来たのかな?」
驚いた様子も無くこちらに顔を向けてくる、このギルドをまとめているギルドマスター『ガイス』。
「はい、そっとも相変わらずの眼ですね」
「やっぱり分かっちゃうか。では本題に移る前に、君の隣にいる狼さんの事をまず聞きたいね」
「我のことかのぅ?」
「わぉ、言葉を発する事が出来るのか。また凄いモンスターを従わせたね、カミト君」
「まぁ、従わせられなかったら死んでたので、二択に一つを選んだ結果ですよ」
好奇心の視線を、俺とクロロの間で行ったり来たりさせている。
着眼どころから良い所を突いてくるな
「なるほどね。闇属性、確か君は使えたんだったね。
って事は、主従契約か……、じゃあそこの狼君は、カミト君が何者か知っているわけだ?」
「そうじゃが……。お主も我が主人が異世界人だと知ってあるのか、?」
「うん、僕のスキルでね。ここにいる二人以外は、カミト君の正体を知らない感じかな?」
「あ、あぁ……」
やはりこのギルドマスターは上手い。
相手に良く喋らせ情報を得る。商人でもやっていたのかと思えるくらいだな。
このまま長続きすればするだけ、俺達が不利益を被る事になる、そう思って俺は話の線路を戻す
「これくらいでいいですかね? 情報提供は」
「気付いていたんだね。ならそろそろ本題に入ろうか。ダンジョン内での出来事をまず教えて欲しい」
「分かりました」
ギルド長のガイスが腕を組み、真剣な顔付きになる。俺もその雰囲気を確認し、ダンジョンについての事を洗いざらい説明した。
「……、ほう、なるほど。だから、長らくうちのギルドでトップだった二人が、姿を見せなかったわけか」
「大丈夫でしたか? アゼルとガゼルを倒してしまいましたが……」
「問題無い、と言えば嘘になるが、どちらにせよあの二人には、頭を悩まされてたからね。楽に済んだって感じかな」
顎に生えてる白髭に手を当て、ガイスは考える素振りをしてから口を開く。
まぁ、称号が『人殺し』でギルド内ではトップだろ?
そりゃ、ギルドも頭抱えるわな、一番優秀な冒険者を切り捨てるのは勿体無いし
「ギルド側から俺へのペナルティーとかは……」
「ん? そんなの無いよ無いよ。というか、国王の依頼で君達はダンジョン攻略へ行ったわけだ。それを逆にあろうことか、邪魔をしたんだ。もし生きて帰って来てても斬首刑は免れないだろうね」
「そ、そうですか……」
面白そうに笑いながら説明するガイス。
平然とそんな事をニコニコしながら、言う事が出来るあんたが俺は怖いぞ……。
「うん、それで、だ。何か他におかしな事とか、気になった事はあった?」
「それです。国王には言わなかった、気になった事が一つあります」
「ほう、それはあまり知られたく無い、という事かな?」
「意図はバレバレですね……。ガイスさんなら、他人に言わなそうですし、何かと都合が良いんです」
「なるほど。それで、気になったことって何かな?」
「はい……」
俺は、ダンジョン内での古代文明の件について話をした。
説明し終わった後、しばらく目を閉じて考え込むガイス。
「……。君は、調査のしがいがある案件を次から次へと、持って来てくれるね。古代文明、『賢者』か……。こんな話がある」
そう言ったガイスさんは、一人語り始めた
「五千年前に実在した『賢者サンドロス』。彼が使う魔法は古代魔法と言って、今とは少し別の魔法を使えたらしいんだよ。それで、ね」
「その使う古代魔法の中の一つには、『時空空間属性』と言われている魔法の種類があるんだよ。でね、この属性は名前の通り、時空や空間をコントロールする事が出来るらしいんだ」
「現に、賢者サンドロスが瞬間移動、また伝承されている、魔王を『封印』させたのもこの属性が使われていると考えられる」
「一ついいかガイス殿? それと今回の件についての関係性は何かあるのじゃ?」
「あぁ、狼君。話はここから」
「時空というのは、時間のことだろ? そして空間は空間。その二つの要素がもし、未来の事も見る事が、いや時間移動出来るのであれば、今回カミト君がダンジョンへ来る事を、予め予想出来ていたのでは、ということだ」
「待ってください。もし仮に、予想出来たとしましょう。でも、今回のダンジョンに転移の仕掛けを施す必要はありますかね?」
「そこなんだよ、僕もそこが引っかかってね……」
ガイスさんは髭を撫でながら考え出す。
俺にしか起動できない仕掛けを施すメリットが分からない……。
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