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ダンジョン29話 報告

「やっとここまで戻ってこれたな。二人とも長旅ご苦労様」


上を見上げると、紅葉空が見える。

俺達は今、街の検問に並んでいるところだ。

全員ダンジョン攻略が終わってなのか、無事に街に着いたのか、いずれにしてもお疲れ気味な様子


「うむ。主人もシルフィー殿も、今回のダンジョン攻略では良く何日間も耐え抜いたのぅ」


「い、いえ! 私は何も出来てませんよ! 敵に捕まって足を引っ張っただけです……」


「まずは全員こうしてまた、この街に戻って来れた。

それだけで良いじゃないか?」


「主人の言う通りじゃよ、シルフィー殿。

死んだら何も残らぬ。今が全てなのじゃ、それだけで十分ぞ」


「そう、ですよね。あのダンジョンで亡くなった方々は何人も居るんですしーー」


何かシルフィーが言いかけた時、「次の方前へ」という門番の声が聞こえたので足を前進させる


「怪しい物を持ち込んでいないか、確認させてもらう。全員手持ち品を下に置け」


「分かりました……。って、あ」


俺はある事を思い出し、つい間抜けな声を発してしまった。持ってて使わなかったら宝の持ち腐れってな。

カミトは自分の洋服のポケットから四角い紙を取り出して見せる


「確か、リンn……。いえ、国王様から直々に紋章を貰ったギルドカードには、検問をパスできるって言うのがあった気がするんですが……」


「ん? なんだ、って、あんた噂に聞いたカミトって奴かい。活躍は聞いてるぜ、それならっと。ほら、通りな」


「あっ、ありがとうございます。では」


説明は王様の『リンネ』から聞いていたが、実際初めて使ってみると、なんか得した気分になれるな


「とりあえず街中にも入れたし、一段落着いたからここで解散としようか。

攻略し終えたら一早く教えろってリンネが言ってたから俺は城に行ってくるけど、二人はどうする?」


「私は、フィーナとヒーナに帰ってきた事を伝えてに行きたいので、宿屋に戻ります」


「うむ……。我はやることも無いしのぅ、主人についてくわい」


まぁ、女の子同士積もる話もあるだろうし、何よりシルフィーは一番疲れてそうだからその方がいいか。


「了解。じゃ、シルフィーは先に休んでてね。クロロは一緒に来てくれて」


「では、またのぅシルフィー殿」


「はい!また!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「すみません、ここの国王様から直々に依頼を請けた者です」


「あぁ、君がか……。話は聞いているよ。来たら即刻連れて来てくれとの事だったので、案内いたしますね」


城前門を警備している兵士に要件を話すと、意外にもすぐに城内へと入ることが出来た。


「クロロ、くれぐれも失礼の無いようにな? 特に、騒ぎ立てるのはダメだぞ」


「我はこう見えても、常識は身につけれおるわぃ。長年生きている老人を舐めるでないぞ?」


「まっ、クロロは切り替えが出来るからその点は、対して気にして無いけどね」


俺たちが喋っていると、前を歩く兵士が足を止める。

どうやら別の案内役の人が来てくれるようだ

待つ事一分、前方から女性の案内人がこちらに向かって来る。

確かあの人は……、


「お待たせいたしました。こうして、ご無事に帰還された事何よりでございます」


「あ、前来た時にも案内して下さった……」


「ふふっ。謁見時のを覚えて下さっていたのですね。こう見えて私、地味なので嬉しいです」


「いや、そんな事ないですよ。 貴女は男性の俺から見ても、かなり魅力的な方だと思いますよ?」


三つの足音が床を鳴らす。

あれ、なんか変な気まずい雰囲気になったな、? 俺なんか言ったかな


「ッッ!! な、。そ、それは私を口説いてるという意味ですか……、? 意外と肉食系なのです、ね」


「主人ってばのぅ……」


「あ、、。ち、違いますよ! 口説くとかじゃなくて……」


相変わらずの乙女心には疎いカミトであった。


時間はそれから十分ほど経った。

目の前には赤と黄色で彩られた扉。


「ここからは、前回のようにカミト様達と国王様の直接面談でございます。既に中にいらっしゃるようなので、どうぞお入り下さいませ」


「ありがとう。クロロ、行くよ」


「お供するのじゃ!」


緩やかに動く扉。

俺とクロロは身体を押し、中へと進める


「ッ! おぉ、無事に戻れたか! よろしぃよろしぃ、妾は心配しておったのだぞ。何せ二週間も帰ってこないからのう」


「ん? あぁまぁ、ひとまずは攻略出来たよ。隣にいるパートナーのお陰もあってね」


「ぬ。主人よ、我は何も……」


二週間……? そんなにダンジョン内で過ごしてたのか。あそこは同じ風景が続くばかりだったから、日にち感覚狂ったのか


国王『リンネ』はカミトの右側にいる、クロロに目を細めて凝視する


「……、驚いた。まさか話すことが出来るモンスターを契約させたのか。面白い。妾はどうにも良い冒険者と出会えたようじゃなぁ?」


「世辞でもそれは素直に受け取っとくよ。

それで、一応今回のダンジョンについての説明をしとこうか……」


それから、ラマート達の悪行について。

古代文明や隠し部屋などの諸々を説明する。

ここでは、ダンジョン内での『賢者』ワードについては伏せておく。このことは、後である人に調べてもらう


「……。なるほど、理解しもうた。では、こちらからそのダンジョンに兵をいくらか送って管理してもらおうか」


「まぁ、盗賊達が恐らく冒険者達を殺していただけで、あのダンジョン自体のモンスターレベルは低いと思うけどね」


「そうなのか? 妾はそなたたちが、強者だから軽々しく見えてるだけだと思うが……」


「そんな事はないのじゃ。少なくとも、パーティーにいる平均レベルの女の子でも勝てるくらいじゃからな」


それから、少し雑談を交えての情報交換を行った。


「あぁ、長い時間拘束させてすまなかった。そして、じゃ。そなたが言っておった『報酬』についてはこちらで既に用意できておる。後日そちらの宿屋にでも送ろう。日も暮れてるしのう」


「気遣いありがとう。確かに、今ここにシルフィーも居ないしそうさせてもらうよ」


「主人よ、我への報酬はまた支払ってもらうぞぃ?」


「……。じゃあな、リンネッ!」


「あ、逃げるんじゃないぞ主人ぃ! では、失礼したッ!」


カミトは逃げるように部屋を出ていき、クロロもそれに続くように出て行く。


「……。妾もこんな職でもしてなければ、今頃あんな風に仲間と過ごせたのじゃな……。()()()()()()()()()()()


一人残されたリンネの(すす)り泣く声が、孤独な空間に響くだけだった


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