ダンジョン24話 最上階層ボス2 勝ち筋
クロロとシルフィーは王座に座り込んでいるボスの死角を取るため回り込む。
一方のボスは何もアクションを起こさずにただ二人の様子を視線だけ動かしながら見ている
「さて、俺もぼーっとしている訳にもいかないし、挨拶代わりに一発お見舞いだ」
正面にいるボスに向けて『氷魔の手』をスキルで範囲拡大させてから放つと同時にクロロ達に障壁を張る
「グキャァァガ」
「流石にこれくらいの魔法じゃ足止めにもならないか」
ボスが右手を振り上げたと思ったら、周りに鋭い岩が突然現れ冷気を放っている手達を全て粉々にした
「中々やりおるのぅ。じゃが、我らの存在は忘れてないじゃろうな?」
「いきましょうッ!クロロ!」
二人はそれぞれ炎を纏った鳥のような形に変化した矢と雷雲色の電球を打ち込む
「グキャッ?」
カミトに気を取られていたために、死角からの攻撃には反応できなく王座に直撃した
「これで少しの手応えがあれば良いのじゃが……」
「流石にあるんじゃないんです……、いえ、どうやらそんなことはないようですね」
シルフィーの言葉通りボスは確かに魔法を受けたにもかかわらずに無傷だった
俺みたいに障壁を発動させて受けたのならば理解が追いつくが、そんな動作は無かった
「どうしたものかのぅ」
「ああ。恐らくは相手の防御が高いんだろうな。
それか、魔法があまり効かないスキルを所有しているかだが」
警戒しながら考える。
魔法がもし効かないのなら直接攻撃を与えるしかないが……
十階層のゴーレムボスとは違ってつけいる隙が無いからなぁ。
「仕方ない。クロロとシルフィーは俺の援護をしてくれ! 障壁を盾に近づいて攻撃してみる」
「危険ですが……、もし有効打がそれしか無いのならば仕方ないですね。了解しました」
「我は主人と共にある。支援するのじゃ」
「二人共ありがとう、俺が合図をかけたらよろしく頼む……。今だっ!」
俺は『能力一時的限界突破』スキルを発動させて、王座への距離を走りながら縮める。
カミトの走る速さは並の冒険者では目に見えないだろう。
「っぶね!」
地面からカミトの道のりを妨げるかのように次々と岩が現れる
「シルフィー殿! 我らが援護するのじゃ!」
「はいッ! カミトの邪魔はさせませんよッ」
王座への道を塞ぐかのように出てきた三階建ビルくらいある岩の壁を二人が破壊する
ん?戦闘で初めて戸惑った表情を見せたな。
もしかしたら直接っていう案は当たりだったのか?
「俺達はここを突破してダンジョンを攻略する!
その邪魔をするお前は俺が倒すッ」
もう手と手が伸ばせば当たるくらいの距離に一瞬で詰めたカミトが、ボスの心臓目掛けて突きをしようと剣を縦に構え、そのまま勢い任せて突っ込む
「いくのじゃ主人ッ!」
「頑張って下さい!」
二人の声援がカミトの心を鼓舞させ、剣を握る力が強くなる
「終わりだッ!」
「バカメ、コレガワナダトモキズカナイトワ」
「えっ?」
カミトの視線が王座の周囲に一瞬気が逸れる。
なぜなら、王座の半径数メートルに血色の短剣が何百本と現れたと思ったら、全ての剣がカミトやボス自体を無慈悲に襲う
「やばッ! MP消費するしかねぇ!」
「グフフッ」
流石にこの数の短剣は防げようが無くて障壁に持っているだけのMPを全て注ぎ込んで防御に徹する
これだけ耐久力を上げておけば問題無いだろうと思っていたら、一つの声が響き渡る
「主人ッ、後ろじゃぁ!」
先程周囲に現れた短剣に一瞬視線が向いた時、ボスはカミトの背後へといつの間にか移動していたのだ。
そして、カミトが構築した『魔力障壁』の中にはボスも入っていた。
この魔法の特性上、注ぎ込むMP消費量が多ければ多いほど頑丈になるとともに、また面積も大きくなるのだ
「オワリハオマエダ。ワレノイケニエトナレ」
「ッ!」
クロロの掛け声により障壁の内側にボスも居たのは分かったが、カミトが後ろを振り向く前にボス自身が手を腹に向けて突き刺して来る
「カミトッッ!」
「主人ぃ!」
「ウグッ」
お腹を背中越しに貫いたボスの手に視線をやると、そこにはなぜか真っ赤な血に染まった剣が刺さっているではないか
「な、何をした……」
「ムシケライカノブンザイニ、オシエルヒツヨウハナイ」
ボスの女性がその剣とかした手を抜き放つ。
と同時、カミトの腹からドクドクと物凄い量の血が流れ出て来る。
「シネ」
「やめてくださいーッ!!」
「主人ッ!」
二人がカミトに向けて必死に叫ぶ。が、カミトは恐怖で身体が震えて足や手を動かすことが出来ない。
「ッ!」
カミトが目を瞑った瞬間、その脇腹から出ている血ごと全て巨大な槍に変わり、そのまま身体ごと串刺しにする。
「お前、の……、スキル、は。
血を、武器に、、変え、る、事が。出来る……」
「イマゴロキズクトワ。オロカナニンゲンダ。
アタマノワルサガ、アシモトヲスクワレタナ」
「カミトッ!」
バタンッ、と力尽きたかのように地面に体ごと引っ張られたカミト。
最初は油断を誘うため意味不明な言葉をわざと叫んでいたが、それも全てただそこらのモンスターと一緒の知性しか持っていないように、見せかけたボスの演技。
そして、絶対的にカミト自身が障壁の力を信じていたために、ただ無防備に突っ込んで負けたのが、この戦闘の敗因だろう
「ニンゲンハゴトキニ、コノワタシガマケルワケガナイ」
クックック、と邪悪な笑いを含む声を発すると共に、次はお前達だ。と言わんばかりの視線を送る
気になった方はブックマーク登録、コメント等お願いします。




