ダンジョン23話 最上階層ボス1 封印されし者
壁に添えられているロウソクの火が振り子のように揺れる。
俺達は今、ボス部屋の目の前に到着した所だ
「やっと着いたみたいだな」
「うむ。この部屋の中にいるモンスターを倒せば、ダンジョン攻略じゃな」
「急に緊張してお腹が……。が、頑張りましょうみなさん!」
「みんな準備出来るようだし、早速相対しますかってね」
勢いよく扉を両側に開くと、三人とも同じ足並みで中に入っていく。
真っ暗闇に包まれていたため、シルフィーが辺りを明るく照らそうと魔法を発動した瞬間、部屋の中心部にボスらしき影が映される。が、その姿を見たその場の全員がその異様な姿からか驚愕の目を向ける
「おいおい、何だよあれは……」
「モンスター、じゃよな……?」
「ボス部屋にいたから、間違いないと思いますけれど……」
「ギロリ」
「ああぁあいつ、私の顔を見ましたッ!」
ボスモンスターと思わしきそいつは一番奥の椅子に座り込んでいた。
どちらかと言えば部屋の雰囲気的に王座かもしれないなあの椅子は。
ボスの姿はその王座ごと手足首を鎖で括りつけられており、自由に立つ方すら出来ない状態。
肝心なのはここから。そのボスは何と俺と同じくらいの女性なのだが、背中から翼が生えていて、まるでサキュバスみたいな見た目をしている。
しかも、あの『ダークキメラ』と同じく不気味な闇色のオーラを全身に纏っているおまけ付き。
辛うじて、瘴気を纏いながらも原型を取り留めている
「まるでこれは彼女を封印するためのダンジョン見たいに思えてくるな」
「主人もそう思うかのぅ。あの鎖では全て強力なスキルが付与されてるであろうし、その矛先が座っている女性に向けられているが決定的な証拠じゃな」
俺はすかさず魔眼彼女のステータスを確認しようとするが……
「不可能? 隠匿系のスキル持ちか?それともあの鎖に……」
そして次は鎖に鑑定スキルを使ってみると、クロロの言っていた封印スキルが付与されていた
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装備名 忘却の鎖 付与スキル 『封印』
古代の人々により作られし道具。
これを括り付けられた者は人々から存在すら忘れられるほどの強力なスキル効果により、使われた者は時が進んでから偶然封印から解放されることも多々ある。『封印』スキルはその使用されている者のスキル及び魔法、身体の動きに制限をかけるとともに、存在すらも制限をかけてしまう。
しかし、本人は封印されている間も意識は一応あるため、一種の拷問にも使われる
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クロロは見た瞬間、スキル効果が分かったのは凄いな。さては俺と同じような魔眼を持ってたり……。なんちゃって。
しかし、こんな道具を何重にも掛けているあの女性は何者なんだよ。はっきり言って異常な程の量を彼女に掛けている。
「……どうする、クロロ?」
「我の個人的な意見としては、封印は解かずにこので助けを待つという選択肢も見据えた方がいい。しかし、まぁ早くここを出たい気持ちもあるからさっさと倒してしまうという手も、もちろんあるのじゃ」
見事にお茶を濁したな。
「シルフィーはどうしたい?」
「私は、封印を解くべきだと思います。こんな所で一人寂しく何年過ごしているのかわかりません。それに、私は助けを求めているように見えるんです、あの女性が」
俺は王座に座っている女性に目をやるが、あまりそんな風には感じ取れない。
「具体的に教えてくれないか?」
「いや、私の直感です。ただ、そのぐーというか、ぎゅーっとした、うーん。とにかく見てるだけで泣きそうなんです! 辛くそうに見えて!」
「な、なるほどな……」
シルフィーの子供みたいな説明の下手さに呆然としながらも、何となくそう言われると感じなくはないと思えてしまう。
「どっちにしろ、ダンジョン攻略するには封印解かないといけないし、まぁ勝てるだろ」
「いや、そこ丸投げでいいのかのぅ?!」
「最悪俺達でも手がつけられなかった場合はラマート生贄にして逃げるから問題無いな」
カミトが悪魔みたいな顔をしながら言い放つ。
どこからか、泣き声みたいなのが聞こえたが気のせいだろ
「よし、二人とも。俺が合図したら魔法を王座に向かってぶっ放すから、封印が解けあとの奇襲に気を付けてくれ」
クロロにシルフィーを一応守るように指示し、ある程度距離を取らせて魔法陣を構築する。
より自分のイメージを再現させるため、時間をかけて行う。このイメージも最初の頃より大分上手く出来る様になった気がする
「やるぞッ!」
カミトの身長くらいある魔法陣から光の大砲を鎖に向かって打ち込む。
「シャラシャラシャラ」鉄の綱が音を立てながら壊れていく。
「ダァァォッ!」
天井に繋がっていた鎖も全てが爆発の衝撃により壊れていく中、一つの不協和音が鳴り響く。
目の前から聞こえてくる。封印されていた女性からだな。
「ッッ! 少しは封印解いてあげたお礼くらい無いもんかね!」
血の色をした鋭い長剣が突然飛んできた。
俺は反射的に身体ごと投げて避ける
「ダァァスゲテェェッッ!」
「シルフィー殿、我らも加勢するぞよ」
「は、はい!」
カミトとボスとの距離を保つため、二人は牽制の意味を込めてそれぞれ魔法を放つ
「ありがとう! クロロ、シルフィー。どうやら相手はやる気満々のようだな」
「ヤァぁガァダァッ!」
「我としては女性を傷つけるのはレディーファースト精神として反するのじゃがな」
王座から突如として空中に現れた五本の真っ赤な槍を、クロロ狙いで撃ってくる
「そんな攻撃我には当たらないのじゃ」
真っ黒な毛の狼姿が消えたと思ったらボスの真後ろに、その影が映る
「その首貰ったのぅ!」
「前をみろクロロッ!」
何故かクロロが避けた槍達が迂曲してから勢いをつけ、狼に向かって飛び放つ。
あれは絶対間に合わないな。
俺はクロロの目の前に『魔力障壁』を展開させて、攻撃を弾く
「大丈夫ですか! クロロ!」
「助かった、主人よ。そしてシルフィーも心配ありがとうのぅ」
俺の隣にクロロが戻って来る。
三人とボスが正面に対峙する形になりながらも、お互いが様子見するように中々行動しない。
「まぁそっちが先に手を出してきたんだ、次は順番からしてこっちだよな」
「うむ。反撃じゃな」
「大人しくやられて下さいね!」
「よし、俺達のターンを始まるぞ」
この言葉を歯切りに戦闘が再開された
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