ダンジョン20話 覚醒?
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名前 ラマート 男 人間 28歳
状態異常:敵意
レベル:26
称号:奴隷商人
HP:200/200
MP:360/360
筋力:20
耐久:35
素早さ:42
魔力:140
幸運:60
スキル
奴隷隷属化
使用可能魔法
火属性
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最後、二人の背中越しにギラギラと舐めまわすような視線を放っている、腹の出た奴隷商人の『ラマート』
シルフィーやヒーナ、フィーナの元奴隷主であり、街中で三人に対して暴言や危害を加えようとしたところをカミトが見かね、逆にボコボコにした相手だ
「動かないで下さいよ?貴方達が一歩でも動作をした場合、お仲間の『シルフィー』に『死ね』という命令を下していますからねぇ」
「クッ! なんでシルフィーがお前の奴隷なんかになってるんだよっ!」
「あぁ、それは身体の方に少々しつけを致しましたので。すぐ従順に心を開いてくれましたよ」
見るとシルフィーの服はあらゆる部分が裂けている。そして、身体には至るところに、紫色となって膨れているアザ、鎖を長時間強く締め付けたせいかビクビク痙攣している手足首、腫れている目元など、見るに堪えない無残な姿だった。
「ふふっ。一応命に別状は無い程度には納めてあるわ。これぞレディーファースト精神よ」
「何がレディーファーストじゃ、このオカマッ!
酷い仕打ちをしといてその態度はなんじゃ!」
「あん?オカマとはなんだゴラこの野良犬が。
やんのか?おぃゴラッ!」
「野良犬では無いっ!我はれっきとしたシャドーウルフじゃ!」
変なプライドを持っている同士で、一触即発の雰囲気が流れる
「この……、女装変態がぁッ!」
「ダメだクロロ! 動いたらシルフィーの身が危ない!」
我慢出来ずに飛びかかろうとしたクロロに向けての忠告をする。
カミトの声を聞き、我に返ったクロロが「うぅ」と唸りを上げながら襲うのを止めた
「やっぱり犬より人間の方が知性はマシってな。
んじゃ、さっさとコイツら殺ろうぜ」
『アゼル』が腕をパキパキと鳴らしながら、殺意を余す事なく周囲に放ってきた、
「そうしましょ。私の乙女としてのプライドが傷ついたわ」
「お待ち下さい、お二人方」
俺達が何も抵抗出来ずにただ立ちすくんで見守っている中、『商人ラマート』が盗賊二人兄弟に話掛ける
「ん?なんだ?おぃ、邪魔するってんじゃぁ無いだろうな?面白く無いぜ?」
「いぇいぇ、そんな気はありません。それよりも直接あなた方二人が手を下すよりも、もっと面白くなる方法がございます」
「何かしら?言ってちょうだぃ、ラマート」
「はい。それは私の奴隷、シルフィーに命令させるのです。『お前の仲間二人を殺せ』と。どうでしょうか?」
汚らしい手でシルフィーの頭を撫でながら、恐ろしい単語を口にしたラマート。
提案された案に兄弟二人は考える仕草を少しし、互いに下卑た笑いをしながら
「いいぜぇ。その方が面白みがあるもんな
俺は乗るぜ、その案」
「うふふ。そこの野良犬を直接潰したいってのもあるけれど、まぁそれも見ものでしょう。いいわぁ」
「取り決めという事で、皆さんありがとうございます。シルフィーよ、『じっくり痛めつけてからお前の仲間の二人を殺せ』」
奴隷商人のラマートは振り返って、シルフィーの様子を見ながら命令した。
「はい」と、まるで生魂が抜けているかのような口調で返事に応え、俺とクロロの方に向かって前進する
「ッッ!シ、シルフィーッ!」
「ぬ。これは……。酷いのぅ」
二人して何に驚いたか。それは身体中のアザではない。先程までは遠くて顔の表情などの細かなところまでは見えなかったが、目の前に立たれると分かった事がある。
それは、シルフィーの眼だ。
夜よりも暗く、そして深く。闇と表現すれば良いのだろうか。その眼にはただ人間の闇を表すかのように黒色が塗りつぶされており、そこには一筋の光すらも映させない。
「シルフィー、シルフィーッ! 目を覚ましてくれ。これじゃあ、ただ命令通りに動く人形と同じじゃないか」
「………」
「無駄ですよ?しっかりと私の命令だけを聞き、それ以外は喋る事愚か行動すら私の命令無しには出来ないのですから」
「やめてくれ、シルフィーッ! 無駄だ。お前の心がただすり減るだけだ!辞めーー」
奴隷商人の命令に従ってシルフィーは拳を作りあげて、顔に向かって思いっきり振り下ろす
「ぐっ」俺は思わず、苦悶の声を上げる。
まだ二十歳にも満たない女の子がなせる力技では無いほどの威力で、既に一回殴られただけで唇から血が垂れる
「辞めんかシルフィー殿!主人に助けられた恩、お主は忘れたのかッ!」
「ッ!」
一瞬戸惑いの表情を顔に見せたが、それもすぐ能面の顔に戻る
それから、なす術なくカミトは十分ほど一方的に殴られ続け、ついに奴隷商人から渡された剣を手に取って、剣先をのどに当てる。その時の表情も人形みたいに感情を何も感じることが出来ない。
息を詰まらせ、背中に冷や汗が滲み出る
「それ以上は引き返せなくなるぞぃ!辞めんか!
お主はまだその道に進むべきではないのじゃ!」
「辞め、て。く、れ、。シル、フィー……」
カミトが細い声で呟いた瞬間、地面が真っ赤に染まる。
「主人ッッ! シルフィー殿ッ、お主でも容赦はせんぞッ!!」
「………」
シルフィーはカミトの亡骸を一瞥し、そして次はお前だと言わんばかりにクロロの方に向きを変える。
クロロは今すぐにでもシルフィーへ飛びつきたかったのだが、そうすると彼女が死ぬと心の底で良心が働いて、ただ見る事しか出来ない
「もう我慢の限界じゃっ。短い時間じゃったが、一緒にこの世界を去ろうぞよ!」
「ッ!」
一瞬にして姿をシルフィーの後ろへと移動し、その首ごとかき切ろうと鋭い歯を見せながら飛びかかる
「ちょっ。もう何してんのよラマートちゃん!あの野良犬が本当に殺しちゃうわよ、彼女」
「構いません。どちらにせよ、この階のボス部屋に眠っている財宝さえ手に入れれば商売上がったらですから」
首元にクロロの歯が食い込み、一気に血が飛び散った……。はずだった。
今この場にいた全員が目の前で起こった信じられない光景に目を疑った。
なぜなら、シルフィーの首元から血が吹き飛んだその血ごと時間が巻き戻るかのようにシルフィーの首元へと戻っていき、何事も無かったかの様に時が進んでいるからだ。
唯一、この場で起きた出来事を全て把握出来ていたのは左目を光らせながら無表情を貫いている、死んだはずのカミトだけだった。
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