ダンジョン14話 欲望の果実
「え、?」
俺とクロロの二人で今ちょうど三十階層目に降った所だが、降りた瞬間周りの景色を見て頭に驚愕の色が浮かんだ。
先程までいた二十九階層まではザ・洞窟みたいな感じだったのだが、今観ている風景はとてつもなく広大な緑の自然だった。
まず、なぜか空にはサッカーボールを赤く染めた球体が浮いている。見る限りの木々が所々に生い茂っていて、その向こうには動物やらモンスターが池で休憩を挟んでいる。地面には整備されたかの様に整っている芝生、そしてこの階層に入ってからは空気が特段うまい。普段は意識なんてしないがとにかく美味しいという感情が芽生える
「これは……。もう常識などここでは通じないようじゃのう」
「そうだな。しかし、息苦しいエリアからの天然エリアだから気分転換にはなるかもな」
「そうじゃな。っと、この木に成っている赤い宝玉のような物はなんじゃ!甘い匂いもする。主人よ、とってくれるかのう?我は一口食べてみたい」
言われて指摘された木を見ると、確かに喉がゴクリ、と鳴る。食料を節約して来たから十分にお腹を満足させられていない。これは絶好の機会だと思って足早に近づいて取ろうとすると……
「グゥゥゥゥッッッッ!!」
「うわぁぁ!?
こいつ、木に化けたモンスターか!俗に言う『タレント』とか言われるやつだな」
「我はせっかく得られた食料だと思ったのじゃが……。食べ物の恨みは重いぞ?タレントよ」
「グゥゥ?!ガガガッッッ」
あまりに強い殺気にタレント自体の木がバサバサと揺れて逃げていく。
カミトでも少しおののくほどの殺気なため、タレントが逃げないわけがない。
「待つのじゃ。どこまで逃げても無駄じゃ
アォォォォッッッッ!!」
「珍しく野生本能を発揮したなおい!」
まだお馴染み影の中にクロロが揺れながら入っていったと思ったら、必死に逃げ惑うタレントの上空に現れ、ツノから濃密な漆黒の雷の塊を出現させ投げつける
「グゴォオォォッッゥゥ」
「どうじゃ。はぁはぁはぁ。シャドーウルフの誇りを舐めるでないぞ!」
「そこでも誇りを掲げるのかい!
……ん、それでタレントについてる木の実は食べられるのか?」
真っ赤に染まった太陽のような果実を木から一個口で切り離して、匂いを確かめるクロロ。
「元のタレントが死んでも恐らくは問題ないじゃろう。まぁ栄養の源が亡くなったからそう長く鮮度は保たぬと思うぞ。ほれ、主人も一個」
木から更に一つ刈り取って顎を回して俺にパスしてくるクロロ。手が無い分器用に他の部位を使うもんだな。試しにと、一口かぶりついて見る
「!美味いな。これは本当に甘さが噛めば一瞬で果肉と共に口の中で弾けて旨みが増すな」
「そうじゃろそうじゃろ!食べ切れない分は我の『影』の中に収納しておこうかのう。」
「その『影』とか言うの凄い便利だよな
今度俺にも教えてくれ」
木から果実を全て離したらクロロの影がその果実達を喰らい尽くすかのように地面に写っている影の中に溶けていく。
今使っているクロロの『影』とか呼んでいる魔法はかなり便利で物を運ぶ時とかに、手で持たなくてもその中に入れちゃえば出し入れ出来るらしく、ご飯などの運搬は全てクロロがしてくれた
「うむむ……。これは企業秘密じゃ。
我も一つや二つの秘密があった方が可愛らしいしのう」
「おじいちゃんなのに可愛いらしいとかにこだわってるところは若者と同じだな」
「ただ外面の歳だけ老いっただけじゃ
内面はまだまだピチピチの二十歳じゃよ」
「クロロが外面まで二十歳だとしたら……。
うげ、気持ち悪いな」
「失礼な!二十歳でも何歳でも我は誇り高きシャドーウルフ!気持ち悪いなどとの妄言を吐くのでは無い!」
「結局そこに辿り着くのね……」
緑の生い茂った地面を踏みつけて階段を探していく中、やはりシルフィーのことが気になった。
十一階層で失踪したあと、今まで姿すら見れない。
大丈夫なのかと心配はするものの、亡くなってはいないはずと思い込み、自分にエールを送る
「なんじゃ、?後ろがやけに騒がしくないかのう?」
「なっ!!」
背中を振り向くとなんとおびただしい数のタレントが俺達に殺気を放ちながら競走をしているかのごとく距離を詰めて来ている。
実のところ、二人が一匹のタレントを殺したのがきっかけとなって味方のタレント達が怒り狂いだし追いかけ回しているのだ
「ウグクッッッッ!!グゴォォォーーッッッッ!」
カミトが『ステータス鑑定』してみると、平均して四十レベのタレント達だとわかった。
だが、数十体では済まされない数の量のためまともにやり合ってでは意味もない
「仕方ない。『魔力障壁!」
動かしていた足の歩みを止めてタレント達の方へと向き合う形で振り向くと同時に魔法を発動する
「グギャッッ!」
一旦俺とクロロには近づけないように障壁を広範囲に張り詰めて、タレント達を弾き飛ばす。
そしてからの全てタレントに直撃するまでの広さにまでMPを費やしてから一気に頭上に障壁を下へ下へと膨らませていく。こうすることにより、圧縮に耐えられなくなったタレント達が次々とその身体の木々をへし折り始める
「果実を甘くしてやらんとな!ほれっ!」
分身体となって分かれた三十匹の闇をも纏う狼達は、一斉に電撃を発生させて、タレント達を焼きこげにする。
「ずいぶんと、エグい事をするな……」
「うむ?果実が電撃に当てられてより熟して美味しくなるではないか。して我よりも主人の方がよっぽど自然破壊をおこしてるのう」
「いやいや、最初からタレントを食い物と思って攻撃しかけてる方が残酷だろ.… 」
目の前には甘酢っぱく香ばしい匂いをはなって横倒れになっている木もどきのタレント達。
「とりあえず、直射日光があたってるこの環境だとすぐ腐るじゃろうから我が保管するぞぃ」
「まあ……、食べ物を無駄にするのは良くないからな、任せる」
タレント達に申し訳なくは思ったが、当分の間お腹をぎゅーぎゅー鳴らす必要はなくなるため、しぶしぶカミトも納得した
その日から毎日果実を食べ続けた結果、のちにしばらくの間は果実を口にする。または視界に映るだけで吐き気が押し寄せる体質に二人はなってしまうのはまた別のお話。
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