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第一章 異世界転移4 森からの脱出

「一体なんなんだ……」


謎の恐怖と命が助かったことの安堵感により、俺はしばらくその場を動かなかった。




「……ガサガサガサッ」


太陽はとっくに沈み、辺りは暗く閑散としている。

 特に夜の森は注意が必要だ。

昼間と違い、周囲に気を配りづらい。


「異世界に来て、いきなり盗賊まがいなことをするとはな……」


ゴブリン達の衣服や腰に付けている品を全て取り集めた

 中には金や銀色をした円型の貨幣と思われる物も存在。


「まぁ、今はこのナイフが一番ありがたいな。護身用として、持っているだけ安心する」


鉄の刃で作られている短剣。

 森の夜は思ったよりも視界が悪い。


いざとなった時、武器があるのと無いのでは大違いだ。


「腹が減った。少しだけ探索するか」


迷わないように、と近くの木に印を書き入れる。

 木々に手をつき、慎重に歩みを進めた。


「ん……? あれは、林檎じゃないかな」


カミトの視線の先には、数個の赤い果実がある。

 しかし、どれも木の上に成っており、ここからじゃ届かない。


「……どれ、よいしょっと」


ナイフを口に咥え、木にまたがる。

 人の生存本能とは凄いものだ。

生きるために、これまででは考えられなかった技も出来るようになっている。


「っらぁっ!」


手で少しずつよじ登り、実が付いている枝まで辿り着く。

 首を縦に振り、ナイフで枝ごと切り落とす。


「っよし!」


落ちていく前に、上手くキャッチして実を一つゲット。


「早速頂きます……ゴクリ。うん、林檎だ」


しかも中々にみずみずしく、水分補給にもなる。

 そうして十分も経たない内に、合計十一個の果実を手に入れることに成功した。


「とりあえずはストックしていって、いざとなった時に食べていこう」


この世界にきて、初めて笑みを溢した。

 なんだかんだ言って、意外と楽しいのかもしれないな




■□■□




あの後、俺は約二日間森の中を歩いて、ついに舗装されている道らしい場所に、たどり着くことができた。


「やっとだな……林檎も無くなって、適当な雑草を食べて飢えを凌いできたけど、これ以上は無理だな」


ここまで来る間、最初のゴブリン戦を最後に結局何も起こらず平和に来れた。

 精神的にも、身体的にも限界を迎えそうだ


なんて胸内で一人寂しく喋っていると、どこからか馬の鳴き声が聞こえてくる。

 音のする方向へ振り返ってみると、一台の馬車がこちらへ向かって走ってきている。


「おぉ。これは運が良いな。声を掛けてみよう」


なんて期待を込めて待ち構えていると、向こうの方から目の前で止まった。


「おい、そこの青年。どうしたんだ? 血だらけで。まあとりあえず乗って行けや」


「いいんですか? こんな血だらけで……」


俺は申し訳なさそうにしながら言った。

 すると、馬に跨っている男性は笑顔を浮かべて口を開く。


「困ったときはお互い様だ。ほらほら、乗った乗った」


馬から飛び降り、俺の背中を押しながら馬車に入れてくれた。

 凄い優しいな……どこの骨とも知らない者なのに。


「これから向かうのはイグルス王国だがいいか?」


イグルス王国? と言われてもよく分からないので


「大丈夫ですよ」


軽く返事した。

 まぁ、別に行き先は人里ならどこでも良い


「んじゃあ、少年はなんであんなところ居たんだ? しかも、その血だらけの服装で」


「少し森の中で果実を拾おうとしたら迷ってしまい、転んだりして怪我をしてしまいました」


とりあえず、本当のことは黙っておく。

 まさか転移して来ましたなんて言えるわけがない。


「そうか、それじゃあ早くイグルス王国にいかねぇとな。あ、俺はちなみにケルガだ。あんたは?」


「俺はカミトです」


「そうか。よろしくな、カミトっ!」


筋肉ムキムキな手を差し伸べてきた。

 うわすげぇ。鍛えてあげられてるなこれ


「は、はい。」


手を取り、力を入れる。

 痛っ!? 

握り返されたと思ったら、次の瞬間。

 手が骨折する勢いで握手された……


「俺は鍛冶屋をしてるんだが、あんたは……。見たところ冒険者か?」


「はい、最近なったばかりの駆け出し者ですが……」


「そうか、木の実の採取依頼でもされたか。

まぁ、とりあえずイグルス王国にいくまでは休んでろ。道のりは長い」


その言葉に甘え、少しの間睡眠を取る事にした。

 森の中ではいつ襲われるか分からないプレッシャーのおかげで、眠るに眠れなかった。

 数秒足らず。俺は即寝だった。



それより、なんだってあんな危ない森の中を転移場所に選んだろうな、女神様。

 普通は神殿とかに召喚されるのでは……。

 

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