ダンジョン11話 異変
「二人とも大丈夫か?」
今見える範囲のモンスターは全て倒した。
シルフィーが戦闘中少々集中力の乱れがあったので、一応声を掛けて見る
「シルフィー、ダンジョンに入ってから様子が普段と違ってあまり良くないよな。無理に戦闘をしなくていいよ?俺とクロロであらかた今のレベルなら倒せそうだし」
「だ、大丈夫です!私も仲間の一員なんですから、戦闘に入れて下さい!」
「うむ。主人は考えすぎなのではないのかのう?
我には普段通りに見えたぞい?」
そんなクロロの発言を聞いて俺はしぶしぶ自分に理由をつけて納得させた。
俺は気にしすぎ、か?でも、本人が大丈夫と言っているんだしとりあえずは様子見に留めておこうかな
「それにしても先程のモンスターは手応え無かったのう。シルフィー殿も問題無く倒されてたし、Bランク辺りが妥当なのかのう……?」
「私も戦った限りでは決して倒せない相手ではないと思いましたね。ただ、冒険者達があのレベルのモンスターにやられますかね、?」
「それは俺も感じたところだ。もしかしたらこのダンジョンにはあのモンスターよりも強いモンスターが居るかもしれないから、とりあえずは警戒だけして進んでいこう」
クロロとシルフィーは顔を見合わせて了解したとばかりに頭を縦に振った
それから約十分もしないうちに三人は今いる階層の一番奥へと進行して下の階層へと降りる階段を見つけた。
「下……ですか。今思ったんですけどここって地中ですよね?ダンジョンってそんなところにも出来るんですね」
「ああ。本で見た限りではどこにでも現れるとは書いてたけど、まさか地中にまでとは……。一説には確か、昔の人々が財や宝物を隠すために作られたって記されていたけど、どうなんだろうね?」
「我は一部はその可能性があると考えておるが、大体は自然発生だと思うぞ。と、そもそも発生条件すらわからぬから証明はできぬかのう」
そんな考察を交えながら階段を降っていき、地下二階層着いた。
一階層とは変わらずの土の壁と闇の中を3人で周りを見渡しながら進んでいく。
「ん?あぁ。クロロ、そこ危ないぞ」
カミトが意味深な呟きを聞いたクロロは首を傾げていた。そしてその数秒後にモンスターが暗闇の中からクロロに向かって何の突拍子も無く襲って来たので不意を突かれた顔をしていた
「注意を怠るのは良くないぞ
シルフィーもこれに見習って神経を集中させるんだ」
そんなセリフを言いながら地面を這うモンスターにあらかじめ仕掛けていた『電気罠を発動させて、痺れさした
「こ、これが主人が前に説明してくれた『未来予知』スキルかのう、?」
「相変わらずクロロは察しがいいな。
そうだよ、俺が対処していなかったらクロロは今頃大怪我を負っていたところだな。つまり命の恩人ってやつだね」
「カミトのスキルは凄いです、!私は寸前に言われた言葉の意味を理解する間も無く、現れたモンスターを目の前で瞬殺してしまうんですから……」
俺の所有してるスキルの内容が分からないシルフィーは、ただ呆然と地に平伏してるモンスターとオレを交互に見合わせていた
「まぁそんなことで突然の攻撃には俺が対応するから各自、自分の身を守ることを優先して欲しい」
「うむ。しかし年寄りにも少しばかりは運動が必要じゃからな!」
クロロが言い放つと真後ろに迫っていたコウモリ型モンスターの更に真後ろに一瞬で回り込み、ツノでそのまま身体ごと突き刺した
「そのツノ、お飾りで付いてるんだとずっと思ってたんだがそんな攻撃手段にも使われるのか……」
「失礼な!これは、シャドーウルフの誇り……」
「その話私もう飽きました!そんな誇り誇りって、何でそんなに話そうとするんですか?!」
「それはのう、シャドーウルフの偉大なる……」
「シルフィー、その質問はクロロには無駄だよ。
変なプライドをシャドーウルフっていうのは持ってるんだよ。モンスターってのはどれもこんなものなのかな……」
呆れながらも俺は頭を少し悩ませた。
このような危険なダンジョンに相応しく無いような、くだらない話をしながらひたすらに階段を見つけては降りを繰り返して、区切りの良い十階層に辿り着いた。
「十階層目は……、変わらないか。
なんか同じ光景がこう続くとつまらなくなってきたな」
「そうですね。ただ心配なのが何階層までこのダンジョンが続いてるか……」
「うむ。確かに終わりが見えないのは苦しいしのう。
っと、これは……ボス部屋かのう?」
曲がり角を右曲すると、そこにはまるで五階建てのマンションぐらいある扉が目の前に現れた。
「ボス部屋?じゃあもう終わりなのか?
それとも中ボス的な存在が入ってるのか?」
「そうじゃな。たまに十の段の階層には最上階層のボスとは別に点在している場合があるのじゃ。」
「ってことは、まだ出られないんですね……
でもボスがどのくらいの強さか把握できますし、前向きに行きましょう」
士気を上げる為にシルフィーが、晴れ晴れとした表情で言い放った。
これから先は長いし、気持ちを高めていかないとな
俺はこんな状況下の中健気に気を遣ってくれたシルフィーに感極まって、つい頭に手を置き、撫で撫でしてしまった。
「え?!カ、カミト?!きゅ、急にどうしたんですか……!ううぅぅ〜」
シルフィーの顔はまるでリンゴみたいな真っ赤に染まり、気持ちが落ち着かないのか顔を手で隠してしまった
「あ、あぁすまない。!なんか、シルフィーの事が可愛いなと思って……」
「主人はまだ若いのう。こんなところで告白とはのう。ふぉふぉふぉ」
「い、いやいやこれは違うんだ!不可抗力というか吊り橋効果というかなんというか……」
クロロに茶化されて自分の発言が失言だと思ったカミトは、平静さを失い必死にシルフィーに言い訳をしていた。
「二人ともそこまでにするのじゃ。
今は目の前にあるボス部屋に入るのが先じゃ」
「そ、そうだな……、すまないクロロ、シルフィー。
改めて気を引き締めて行こう!」
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