ダンジョン8話 犬もどき
「……ということで新たに仲間となったクロロだよ
見た目は少し怖いけど良いじいちゃんだからみんな
よろしく頼むね!」
森から月見へと帰るため、街の中に入ったのだが、
通りすがる通行人が次々とクロロに視線を向けていたのだが、それはどういうことだろう?
「大きい犬さんですね。よろしくお願いします!
私はカミトに助けられたエルフの一人、シルフィーと申します」
「ぬ。我は犬では無いわ!どこからどうみても、
狼じゃろ。なあ、主人よ?」
クロロはシルフィーに軽くツッコミを入れて、俺に相槌を求めてきた。う〜ん、ここは少し悪ノリしてみるか。今のままだと三人とも肩がガクガクとおびえてるしな。雰囲気を良くしよう
「いや俺も最初は犬だと思ったよ
だって狼っぽくないじゃん。今みたいに少し抜けてる部分があったりしてさ」
「う。主人まで、誇り高きシャドーバンサーとしての種族名が泣くぞい!」
そう言い放つと、しっぽがさみしそうに振るのをやめ、耳もしゅんとなり、半泣き泣き状態となった。少しやりすぎたな
「ごめんごめん。話しを戻してクロロ、シルフィーを除く二人の内、背が高い方がフィーナ、低い方かヒナだよ」
「よ、よよよろしくお願いします、
……ク、クロロさん」
「よろしく、ね
クロロおじい、ちゃん」
二人は恐る恐るクロロに挨拶をした。
堅苦しいのは今後、過ごしていく中でどうにか柔らかくなっていって欲しいな
「お、おじいちゃん。なんだか、孫娘みたいな感じじゃのう。」
「クロロは案外世話焼きそうだし、そんなイメージが本当に思い浮かんでくる……」
各自、自己紹介を済ませたところで一旦良い時間だし夕食へと向かおうとしたら、勝手に扉が開いた
「ん!ここにいたのかい。野良犬を首輪無しに放し飼いしているって聞いてやってきたのだけれど……」
息を荒げてやってきたのはここ月見の女将さんのソニアさんだった。それにしても何か用事だろうか?
「急にどうしたんですか?ソニアさん
ここは俺の部屋ですよ?」
「街の住民の数人から通報を受けてね、この宿で勝手に犬を飼っている輩がいるって言うからさ、来たわけだけど」
「通報?どういうことですか?
放し飼いはダメなんですか?」
「ちょっと待たんか!我は犬ではない!
なぜお主らは犬、犬、犬と。馬鹿にしてあるのか!」
俺が話を進めようとソニアさんに質問をした時、その会話を遮って言ってきた
「わお、その犬話せるのかい?ん?それ、モンスターじゃないのかい?!」
「え?えぇ。そうですけど。
至って普通のモンスターです」
「って、大丈夫なのかい?!カミト、怪我はないかい?!危ないから離れな!」
「い、いや待って下さいソニアさん!
このじい、いや狼は俺と主従契約を結んでる人に危害を加えないモンスターです」
何か勘違いをしているソニアさんの誤解を解くため、俺はことの経緯を一から説明した。
それを黙ってあらかた全てを聞いていたソニアさんは、聞き終わってから驚いた顔をして
「カミト、闇属性の魔法使えるのかい!
何万人かに一人しか闇属性は持ってないはずだけど……
いや、冒険者に詮索はなしだ。一応は分かったよ」
そうなのか?闇属性はレアなのか。
少ししくじったな……。次からはもうちょっと考えて発言をしよう
「それはそうと、話を戻して何か今のままだと問題があるんですか?」
「あ、あぁそうだよ。契約しているモンスターや飼っている動物には分かるように首輪などアクセサリーを付けるのが規則でね」
なるほど。だから街を歩いてたらジロジロ見られるわけだ。そりゃ、モンスターを放し飼いにしてるのはみんな怖いよな
「そうだったんですね。では、今からそのアクセサリーを買ってきます。どの店で売っていますか?」
「そのことだけど、ちょうど一つお客さんから貰った物が余っててね。持ってても仕方ないからあげるよ」
といい、ソニアさんはクロロの足元に黒と白のバンドをくくりつけた
「それがアクセサリーなんですか?
なんだかオシャレさせてるみたいですね」
「これはね、特注品で作って貰ったらしいんだけど飼ってた動物が逃げ出したらしくてね、それで要らなくなって私にくれたわけさ」
「クロロはどうだ?邪魔じゃないか?それと痛くないか?」
「うむ。邪魔でも痛くも無いのう。
それよりも、なんだか足が軽くなった気がするぞ」
クロロは自分の足につけてあるバンドを不思議そうに見つめていた。
「先程言った特注品だからかもね
私はこれで失礼するよ。今後は気を付けてね」
「はい!ありがとうございました」
ソニアさんが部屋から出るまで頭を下げた。
それにしても、道具に付与されているスキルは『スキル複製』スキルで取得出来るのかな
俺は試しにしてみたが……
「んー、道具に増やされてるスキルは無理か〜」
案の定ダメだった。まぁ、何かしら俺のスキルは制限がないと強すぎるしこれくらいは我慢しよう
「して主、我は犬とずっと勘違いされたままだったがのう、?」
「気にするな。狼より犬って言われてた方がみんな怯えなくて済むし、良いじゃん」
「我のプライドがな……」
クロロの必死な弁論を聞く耳を持たず、いつもの四人で食堂へと向かった。
その時、クロロも付いてきたので一瞬食堂の中にいる人達の目線を浴びたがソニアさんのバンドのおかげでみなすぐに視線を戻した
俺達四人が席に着く中、クロロは床にしっかりとお座りしている形でご飯を待ち構えていたため
「可愛いワンちゃんだね」
そんな会話が周りの人達からヒソヒソ聞こえてきてたので、本人はしょんぼりとした様子で
「だから我は犬ではないからのう……」
と、元気のなさそうな声で呟いていた
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